たた&にせ猫さんの備忘録

―演劇、映画、展覧会、本などなど、思うままに―

『キル兄にゃとU子さん』  相鉄本多劇場

2011年09月25日 | 日記
    『キル兄にゃとU子さん』  相鉄本多劇場   2011.9.24
        作・構成/演出  大信ペリカン
        出演:鳥居裕美 浅野希梨 佐藤隆太
           満塁鳥王一座

  ―震災地の3劇団が横浜で公演   PAW’2011『東北・復興WEEK』―
     横浜ふね劇場をつくる会/PAW Yokohama(設立30週記念) 

  にせ猫さんが道を歩いていたら、知人が追いかけてきて、「良いところで会いました。チケットが売れていないので見に行ってよ。」と言われたらしい。復興支援と言われれば、行かないわけにはいきますまいと、土曜の夜、横浜まで出かけました。
  相鉄本多劇場は初めてで、70人位入る小さな空間。ベンチ状の座席に座布団が置いてある。空席が目立つのかと思っていたら、ほぼ満席で、上映時間は1時間ほどのこともあり、皆さん集中して観劇しておられた。

  地方の劇団のこのような演劇を見るのが初めてだったので(横浜在劇団の公演を見たことはあるけれど)、どのような展開になるのか、退屈しないか心配だったけれど、地元の方にしかできない内容だった

  震災後みた、蜷川さんの『たいこどんどん』や野田さんの『太平洋序曲』でも、震災に触れた演出があり、タイムリーだけど、何かいい感じがしなかった。
  でも、この演劇はたとえ生硬で、ストレートでも良いのでないかしら。U子さんという人を探している、舞台に敷き詰められた新聞紙という設定で、最後の訃報記事の読み上げが想像できたとしても。

  『智恵子抄』の言葉の美しさ―思わずうつくしま福島というキャッチフレーズを思い出してしまった―、『月の光』の透明感、素晴らしいものは詩や音楽という抽象なのに具体的なイメージを喚起する―。

  ある方のブログを読んでいて、福島の方がどれくらい原発事故で傷ついておられるのか―自分の美しい郷土がカタカナで『フクシマ』と世界へ発信され、いまわしい場所の代名詞になってしまったことに。
  津波によるあまりにも身近な死、流された自宅の土地の上にあったという亡骸。

  当事者である方の演劇。当事者でないと伝えられないものがある。表現が一本調子で…という感じもあるけれど、生々しく、せつない上演だったと思う。

  9月25日(日)14時の回との2回の公演。その後、全国を回ったりするのかしら。
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『キネマの天地』 紀伊國屋サザンシアター

2011年09月25日 | 日記
   『キネマの天地』 紀伊國屋サザンシアター  2011.9.23
       作:井上ひさし
       演出:栗山民也
       出演:麻実れい 三田和代 秋山菜津子 大和田美帆
          浅野和之 古河耕史 木場勝己

  今年は井上ひさしさんと三谷幸喜さんの脚本をできるだけ見たいと連休初日に新宿に出かけました。電話で問い合わせると、「当日券でいつもだいたい入れています。」ということで直接行ったのですが、さすが祝日ということで10枚弱。ここでもチケット運の良さを発揮して、無事見ることができました。

  本が良くて演出が良くて役者が良いと、本当に安心して楽しめる、笑っていられる、そしていろいろ作家が投げかけたテーマについても思いを巡らせることができる、そんな公演。

  次回超大作『諏訪峠』出演依頼かと築地の東京劇場に集められた銀幕のスター女優4人。そこで開始されたのは、昨年上演時に、監督の妻が急死した『豚草物語』再演の通しけいこ。実は、監督の妻の死に疑義があり、真犯人追及劇として脚本が作られていて、次々と女優の真実が暴かれていきます。とはいえこれだけで井上脚本が終わるはずもなく、どんでん返し、さらにどんでん返しと息もつかせず、本当に練り込まれています。

  4人のスター女優さん役はそれぞれ個性的に女優を演じます。
  麻実れいさんは本当に大幹部のスター女優にぴったり。最後に帽子を手にするところ素敵です。三田和代さん、こんなに笑わせていただけるとは思いませんでした。大和田さん、先輩を相手に頑張っています。
  刑事役の木場さん、監督役の浅野さん、本当によくお見受けします。浅野さんは『ベッジ・パードン』で11役やったばかりなのに。

  舞台と映画の違い、演技論―自然な演技とそのままは違うということ等、俳優論―スターであることの喜びと厳しさ、そして、役のない役者の渇望など、演劇にかかわる人の本音がちりばめられています。
  笑いながらも、幾多の人生に出合うのが演劇なんだよと、井上さんの思いが込められているような。

  映画会社が自前で映画を作り、監督も美術さんも俳優も上下関係は厳しいけれど、その中で育てられた時代。ちょっと前まで、映画会社に職人さんがたくさんいらした。そんな人に、新人さんも育ててもらったんだろう。テレビ局が映画を作る時代になり、ヒエラルキーの中で身動きとれないのも大変かもしれないけれど、いまは、違った意味で、厳しい時代かもしれないなど、ふと考えてしまいました。

   最近見た井上ひさし脚本
    2008年 人間合格   演出 鵜山仁)
        道元の冒険     蜷川幸雄
    2011年 日本人のへそ    栗山民也
        たいこどんどん   蜷川幸雄
        キネマの天地    栗山民也

  少しの観劇経験からだけど、井上ひさしさんと栗山さんは相性がいい感じ。
  
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『朱花(はねづ)の月』 ユーロスペース

2011年09月18日 | 日記
 『朱花(はねづ)の月』 ユーロスペース 2011.9.16
    監督:河瀬直美
    出演:大島葉子 明川哲也 こみずとうた 他
 
  金曜日の夕方の回というせいでしょうか、観客は10人でした。

  映像は感覚的で美しいけれど、チラシに書いてあるテーマ、それを映像化しようとしたのなら、およそ成功していない。広がったテーマが拡散し、監督は万葉の地・飛鳥というくくり(時間軸)でまとめたつもりなのかもしれないけれど、自分だけの自明性に拠りかかっているような…それを芸術的というのかしら。
 
  『遠い昔、大和三山を男女に見立てた歌があった。一人の女を二人の男が奪い合う、幾多の万葉歌に詠われているように……』なのだけれど、二人の男は奪い合ったりはしない。女が一人で、二人の男の間で揺れているけれど、男たちは女を奪いあってはいない。天智天皇の万葉歌らしい大きさが何か神経質な扱いを受けているような。

  『古代の記憶が宿る、万葉の地・飛鳥 ここには“待つ”ことの中でその命を全うした人々がいた』。女は待つこともしないし、自分を愛しているかもしれないけれど、子供も含めて他者の命を大事にもしない。それがなに故なのか、人物造形がされていない。

  地元の人の会話、人が来ると何か食べていくと聞く、野菜の食べ方の説明とか、いかにも田舎らしい生活感が捉えられている。地元の人が出演しているのか、幾分間延びしているけれど自然。逆に俳優さんが出てくると、不自然な感じがしてしまい、好きな役者の樹木樹林さんがひどくへたな役者に見えてしまった。どう聞いても奈良の言葉に聞こえない。

  役者さんがぼそぼそ喋るので、映画なのにせりふが聴きづらいが、音楽が変に入らないので、映像美が生かされている。映像、特に最初の月がとても美しい。この映画はこれに尽きるのでないかしら。

 
  香具山(かぐやま)は 畝傍(うねび)ををしと 耳梨(みみなし)と 相争ひき
  神代より かくにあるらし 古(いにしえ)も 然(しか)にあれこそ うつせみも 妻を 争ふらしき

  反歌 香具山と 耳成山と あひし時 立ちて見に来し 印南国原(いなみくにはら)
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『ロミオ&ジュリエット』 赤坂ACTシアター

2011年09月10日 | 日記
    『ミュージカル ロミオ&ジュリエット』 赤坂ACTシアター    2011.9.9
         2011年9月7日(水)―10月2日(日)

        原作:ウィリアム・シェイクスピア
        作:ジェラール・フレスギュルヴィック
        潤色・演出:小池修一郎
        出演:城田優 昆夏美 浦井健治 上原理生 安崎求 他

  有休を取った金曜日。朝10時から、土曜分の『髑髏城の7人』の当日券チケットを求めて電話と格闘したけれど結局、立ち見席しか取れそうになく、ひとまずあきらめることに。また挑戦しよう。

  せっかくの休日、演劇か映画でもと、シアターガイドを見ると赤坂ACTシアターでミュージカルをやっている。当日券について劇場に問い合わせると先着順とのこと。とはいえ、早々に出かける気もせず、1時間5分前に到着。先客は10人弱ほどで、大丈夫そうと並んでいたら、当日急にこれない人がいるからと、チケットを譲ってくださる方が。とても前の方の良い席で、感謝。赤坂ACTシアターは以前も『薔薇とサムライ』でチケットを譲っていただいたことがあり、チケット運のある劇場なのかしら。

  ストーリはほぼ原作通り。衣裳はカジュアルな衣装(モンタギューとキャピレットで衣裳の柄分け、ドラゴン柄と豹柄)と親世代のコスチュームプレイ風の衣装。携帯電話、メールや写メが小道具として使われ、現代風のアレンジ。
  音楽はロック調で、ダンスもなかなかスピード感にあふれ、エネルギッシュ。舞台の切り替えも早く、その中に、それぞれ出演者の聞かせどころがあるという構成。ちょっと長いかなと思われる場面もあったけれど、本当によくできた演出。

  城田優さんは初めて拝見したけれど、長身、色白で、本当に端正な容貌。ダンスは得意でないのかもしれないけれど、基本通り。歌声も聴きやすい。1幕が終わって、後ろの席のお三方がそろって「かっこいいわぁー」と言いながら、立ちあがられていました。
  ちなみに、観客の女性比率は99%かと思う程、女性で埋め尽くされていました。少年隊のPLAYZONEを青山劇場で見た時以来の、女性比率。
  昆夏美さんは新人ということですが、聞きやすいのびやかな声。声に表情があって素敵なのだけれど、とても小柄。清楚で華奢な感じは役柄にあっているけれど、城田さんが長身のせいか、多分30センチ以上の差がありそうで、ラブシーンに違和感が。本当に残念。
  死のダンサーの中島周さんはいかにもダンサーというなで肩の体形。素敵な身のこなし。ただ、城田さんの背が高いので、もう少し背が高かったら、二人が交錯する場面がもっと説得力があったかと思ったり。身長って本当にどうすることもできないので難しいですね。
  随分前にオペラの『トーランドット』、佐藤しのぶさんがリュウ役で出ると言うので見に行った時、主役のカラフ役の男性が小柄な方で、違和感があって、それだけ覚えているというか。

  浦井健治さんは何度か拝見していますが、今回はアイドル風。ソロナンバーがすてきです。上原さん、良知さん、演技、歌が上手なうえに、美形揃い。バックダンサーの女性、男性ともに美形の方が多いような。
  歌では安崎求さんが素晴らしかった。最後の場面など素晴らしく声が出ていて、よかったです。

  あまり期待しないで行ったのですが、美男観賞会みたいなミュージカルに、ひのあつたさん、涼風真世さん、未来優希さんほか、芸達者な方ぞろいで、それぞれのソロも素晴らしく、舞台が引き締まっていたと思います。

  カーテンコールの後に、城田さんの挨拶があり、ふと後ろを振り向くと、多くの観客が舞台に向かって手を振っておられる。稲垣吾郎さんの舞台でも観客が一斉に舞台に向けて手を振っているのを見て驚いたけれど、城田さんはミュージカル界の新しいスターなんでしょうね。帰る間際に購入しようとしたら、パンフレットは売り切れでした。ファンの方は早い時間に購入されるとよいかもしれません。
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