たた&にせ猫さんの備忘録

―演劇、映画、展覧会、本などなど、思うままに―

『コペンハーゲン』 シアタートラム

2016年06月30日 | 日記
   『コペンハーゲン』シアタートラム  2016.6.28
     2016年6月4日(土)~7月3日(日)

   作:マイケル・フレイン 翻訳:小田島恒志 上演台本・演出:小川絵梨子
   出演:段田安則 宮沢りえ 浅野和之

  1941年秋、ナチス占領下のデンマーク・コペンハーゲン。ドイツ人物理学者ハイゼンベルク(段田さん)は、かつて師とも慕っていたユダヤ系物理学者ボーア(浅野さん)とその妻マルグレーテ(宮沢さん)を訪問。占領下の緊迫した状況、どちらもナチスから監視されているにもかかわらず、ハイゼンベルグはなぜボーアを訪ねたの?そこで何が話されたのか。
  のちの核開発競争を左右したという、史実にも残る謎の一日に大胆に迫る!

  1941年秋にはアメリカで原子爆弾の開発・製造、マンハッタン計画が開始している。それに先立つ二人の会見。この劇中では、二人は散歩に行って10分で戻り、そして決裂、ハイゼンベルクは帰って行った。
  爆弾を作るためのウラン精製には大変な量が必要だが、プルトニウムになるとそうではなく、それができるかどうかの計算をしたか、なぜしなかったのか。不可能という先入観があっただけなのか?それとも分かっていてしなかったのか?

  第一次世界大戦後の焦土のドイツからコペンハーゲンのボーアの下で共同研究をし、物理学者として名を成し、若くして大学教授となり、第二次世界大戦中、核爆弾の可能性をナチスから問われる立場。もう一度祖国が焦土となるのを看過するのか、開発に与するのか。学問がこのような形で求められる場面で、どう決断するのか。(ハイゼンベルクは原爆開発を意図的に遅延させたという説もあるらしい。)

  たくさんの物理学者の名前や理論など出てくるが、不確実性とか言われてもさっぱりわからない。けれど、数字で世界を解明しようとするとても美しい学問なんだろう。物事の本質を知りたい、物理学的に解明したいという思いが、政治、そして戦争と結びついていく時、迫られる決断。
  占領下にあるユダヤ系のボーア、それぞれの立場と学究としての互いへの思い。
(ボーアは1922年に、ハイゼンベルクは1932年にノーベル物理学賞を受賞。)

  とても緊張感のある芝居。脚本が本当に素晴らしく、力のある役者さんたちのセリフ劇を堪能。

  好きな役者さんの三人芝居。宮沢さんはくっきりと芝居をされる。段田さんはセリフの通りががどこまでもよく、柔軟。浅野さんは声の通りは今一つよくないけれど、独特の雰囲気とふるまいの柔らかさがあり、我が家で人気の三人。

  2時間強の劇で、途中15分の休憩あり。

 
  
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『世界遺産 ポンペイの壁画展』森アーツセンターギャラリーと『天災から日本史を読み直す』磯田道史著

2016年06月29日 | 日記
  『世界遺産 ポンペイの壁画展』森アーツセンターギャラリー  2016.6.26
     2016.4.29(金・祝)―7.3(日)

  大学時代の友人が所用で来京。いつもはとんぼ返りの忙しい人だが、今回は久しぶりに会うことができ、一緒に美術展に出かけることに。

  ポンペイ遺跡から取り出された、室内生活空間を彩っていたフレスコ画。噴火による火砕流や降灰で都市が埋め尽くされ、時間が封印され、熱と灰の化学変化で色彩が色鮮やかに保たれている。赤は褪色しやすい色だけれどベンガラ色が美しい。
  壁画はどうやって取り出したのやら、運んだのやらと思うけれど、今は技術開発されていて、薄く剥離し、かつ軽い素材の上に定着可能なのだとか。展示されている壁画を横から見ると、本当に壁画部分は薄い。

  完全な状態で発掘されたものばかりでなく、部分をパスルのように再構成しているのもあり、研究者の努力と執念、研究成果を感じる。

  壁画は室内を広く見せる工夫のためか、建物の描写には遠近法が駆使され、個々の人物描写はギリシア彫刻のように立体的であるにもかかわらず、絵や人物間のサイズや配置が不思議なところもあり、なかなかおもしろい。
  赤だけでなく、青もとてもきれいに残っており、地中海の風景、空や海の色が室内まで満たしていたとしたら、とても素敵だったろうと。

  最近、絵画に登場する動物に関心があり、気に留めてみていると楽しいものが多い。むくっぽいライオンの絵がおかしい。クジャクが当時のごちそうだったという解説が…。

  この美術展で一番印象的だったのは、ヴェスヴィオ山噴火のシュミレーション映像。何回かに分けて噴火し、山が半分の高さになっている。地図を見るとポンペイはヴェスヴィオ山から結構離れている。最初の火砕流で消滅した都市があり、噴火のたびに降灰が広がり、ポンペイは何回目かの噴火で埋もれたとの映像。今なら他の都市に被害が出た時点で、予報とか避難勧告が出ただろうけれど、当時としては思いもつかなかったのだろう。
  東北、熊本の地震、桜島や阿蘇山の活発化等本当に地震、火山の噴火がとても身近で、この映像がとても印象的だった。


  富士山噴火予測も週刊誌でよく騒がれている。週刊誌の見出しを見るだけで、怖くなるが、『天災から日本史を読み直す 先人から学ぶ防災』磯田道史著 中公新書を読んで、自分の中で少し落ち着いた部分があった。この本を手に取ったのは少し前、第63回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。
  筆者は古文書―地震や津波、火山噴火などの体験を日記等で記録したものを丁寧に収集して本にまとめておられる。

  富士山噴火に関しては、最後の大々的噴火は1707年、旧暦10月4日に宝永地震が起きて激震と大津波が太平洋岸を襲い、その直後、11月23日に富士山が噴火。
  愛知県田原市で書かれた「金五郎日記歳代覚書」によると、「富士山と愛鷹山の間に、須走というところに火穴が開き、それより火炎が吹き上げた。富士山より3倍の高さに見えた」「この火炎に土砂が混じり、西風が毎日吹き、これより、東国に砂が降り…。江戸も砂の厚さ4、5寸(12~15センチ)積もった(今日の研究では3~5センチ)。…」「11月23日より降り出し、12月9日まで降り続いた。この間は昼間にも、提灯にて、所用をたした。」と。

  富士山が噴火すれば、半月間は火山灰の闇を覚悟せねばならないと筆者の磯田氏は書いている。富士山噴火の前兆も記録が残っており、前兆への注意が必要と呼び掛けてもおられる。

  半月の降灰、唐傘を差し提灯をともし、ガラス質の火山灰で目を痛める。本当の体験談。過去の記録を参考に、前兆の把握に努め、被害が最小限になるようにと思いながら、やはり美しい富士山は噴火してほしくないと願う。

  この本は地震や津波の体験談がたくさん書かれていて、災害避難において、おんぶ紐の必要や5歳児が親が抱えるには重く、とはいえ一人で避難できない年齢であることから被災しやすい、日ごろから家族で避難訓練や検討が必要など、具体的なアドヴァイスもされている。
  被災された人の助け合い、子を失った人の思いなど、胸を打つ記載も多い。本屋の回し者ではないが、災害時の緊急対応の参考のためにも、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思う本。
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『メルシ―!おもてなし ~志の輔らくごMIX~』 パルコ劇場

2016年06月21日 | 日記
   『メルシ―!おもてなし ~志の輔らくごMIX~』 パルコ劇場  2016.6.17
        2016年6月14日(土)~26日(日)
  
   原作:立川志の輔 「踊るファックス」「ディアファミリー」「ガラガラ」「メルシ―ひな祭り」 脚本・演出:G2
   出演:中井貴一 勝村政信 音尾琢真 YOU 阿南健治 明星真由美 サヘル・ローズ他

   ―立川志の輔による新作落語を基に、それぞれの噺からのエピソードを紡ぎ、笑いに次ぐ笑いのノンストップコメディ!―

  2時間強の一幕。キャッチコピー通り、本当によく笑いました。
  ブログを書いていても、場面を思い出すと、笑ってしまうほど。特に個人的にですがおかしかったのが、ガラガラの場面の阿南健治さん。このような笑いは好き嫌いがあるかもしれないけれど、本当におかしかった。

  お話は国際空港に近いとある地方都市の商店街。商店街の会長を務める薬局店主中井さんのところに、外務省の音尾さんから、「商店街にある工房をフランス特使の奥様とお嬢様が見学したいといわれている。商店街も見たいといわれている。」と電話。とある事件を契機にもり下がっていた商店街をこれを機に盛り上げようと中井さん、商店街仲間の魚屋の勝村さんとアイデアを出し合い準備。さて当日トラブル発生…。
  落語らしい人情話で、大いに笑って後味の良いお話。

  中井貴一さんは前作の『趣味の部屋』が楽しくって、今回も期待大。真面目そうなのにとてもおかしい。
  そして勝村さん。どうしてこんなにも自由自在に人を笑わせるのか。アドリブもたっぷり。時事ネタも。あまりにおかしいので、笑ってはいけない場面で、ほかの人が笑いをこらえるために後ろを向いていたり、前の方の席のサヘルさんは本当に笑ってしまったり。
  YOUさんもなんかかわいくて上手で、テレビで見る印象よりずっと良かったです。

  皆さん、緩急付けた演技、熱演で、本当に楽しかったです。楽しかったしか思いつかないというのはすごいです。

  梅雨空に気分が下がっている方は、当日券も少しはあるみたいですから、ぜひ挑戦してください。ちなみに6.17は10枚ほどあったようです。2時開演の回では、12時30分になると、劇場までエレベーターが上がり、12時30分時点で予定枚数を超えたときは抽選とホームページにありました。
 
  本当によく笑いました。
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『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』新国立劇場 小劇場

2016年06月16日 | 日記
   『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』新国立劇場 小劇場 2016.6.11
      2016年6月10日(金)~26日(日)

   音楽:アンドリュー・ロイド=ウェバー 歌詞:ドン・ブラック 演出・翻訳・訳詞:市川洋二郎 

  ―アンドリュー・ロイド=ウェバーの楽曲をミュージカル界の歌姫・濱田めぐみが全編歌で綴る、珠玉のソロ・ミュージカル!―

  濱田さんファンのにせ猫さんが早々にチケットを入手。なぜかいつも座席があまり良くないのですが、今回はかなり前の席。

  ステージ横にも席があり、ファンの方はうれしいでしょうね。ステージシートの一番前端席にライトが落ちると濱田さんが座られ、そこからステージに登場されます。

  お話は小さなスーツケースに夢を詰めて、ロンドンから女の子が一人でNYにやってくる。デザイナーの成功と恋をかなえること。頼って出てきた彼氏に早速裏切られ、次いで自分を見染めた映画プロデューサーとともにハリウッドに移り住み、彼氏好みの女の子になろうとする。お飾りに過ぎないと知って、ひとりNYに戻り、今度は年下の彼氏。運命の人と思うが、その彼にも去られ、妻子ある彼が。家庭を持とうとするが、彼の家族を苦しめていることに気付き、恋を手放し、前を向いて、自立を目指す女性に。

  濱田さんは夢見がちな少女が恋に傷つく過程を、感情豊かに演じられるのだけれど、お話がとてもありきたりで、ドラマチックな濱田節に余りあっていない。
  それこそ、最後は自立を目指す話になるのだが、スケッチブック片手なだけで、恋以外の生活も見えないし、親との関係も幼い感じ。
  現代の話ではなく、パリの田舎から成功を夢見て、いろんな恋愛遍歴をするといった、それこそシャネル、ピアフとかイメージできる話だったら、もっと濱田節もすっと腑に落ちたのではと思って、それがとても残念。

  最後の歌をすごく素直に歌われていて、やっぱり濱田さんはいいなあと思うのだけれど、それだけに、演出とか人物造形に工夫があったらと思わずにいられない。

  70分休憩なし。最後は全員のスタンディングオベーション。濱田さんは何度も登場され、うれしそうで、かわいいです。
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『宝塚歌劇 星組公演 MUSICAL“こうもり”、ショー・スペクタキュラ―‟THE ENTERTAINER!“』 

2016年06月08日 | 日記
   『宝塚歌劇 星組公演 MUSICAL“こうもり”、ショー・スペクタキュラ―‟THE ENTERTAINER!“』 東京宝塚劇場 2016.6.7
          2016年5月13日(金)~6月19日(日)   
 
  こうもり:原作 ヨハン・シュトラウス二世 脚本・演出 谷正純
  THE ENTERTAINER!:作・演出 野口幸作

  知人から思いがけずチケットを譲っていただけることになり、観劇に。オペレッタのこうもりを宝塚風にアレンジしたミュージカル版こうもりとショーの二本立て。ミュージカルこうもりは、ずいぶん話がアレンジされていて、ストーリの面白み、スパイスはオペレッタよりかなり減じているけれど、それなりにコミックで華やかな仕上がり。

  こうもりよりTHE ENTERTAINER!が圧倒的に素晴らしかった。これぞ宝塚という感じ。華やかな衣装、羽根扇、黒燕尾、トップハット、群舞、ロケット、そして大階段、息もつかせぬスピードで、宝塚満載。なぜかいつも宝塚でロケットを見ると、笑顔と一生懸命さが伝わってきて、泣きそうになってしまう。

  トップの北翔海莉さんを初めて拝見したけれど、男役さんとするとそれほど背が高い方ではないが、声の響きがとても良い方で、ピアノも弾かれて、オールラウンダーなんでしょうね。チケットを譲ってくださった方は専科の北条海斗さんのファンとのこと、スタイルよく素敵な方でした。

  久しぶりに宝塚を堪能。やっぱり宝塚はすごい。
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