たた&にせ猫さんの備忘録

―演劇、映画、展覧会、本などなど、思うままに―

『十二人の怒れる男』 Bunkamuraシアターコクーン

2020年09月24日 | 日記
     『十二人の怒れる男』 Bunkamuraシアターコクーン 2020.9.17
        2020.9/11FRI―10/14SUN

       作:レジナルド・ローズ 翻訳:徐賀世子  演出:リンゼイ・ボスナー 衣装・美術:ピーター・マッキントッシュ
       出演:ベンガル 堀文明 山崎一 石丸幹二 少路勇介 梶原善 永山絢斗 堤真一 青山達三 吉見一豊 三上市朗 溝畑淳平

  昨年12月『風博士』以来の観劇。腰痛で長く座っていることが辛く、観劇が減り、もう一度、いろんなことを楽しみたいと腰の手術に踏み切ったのに、コロナで公演自体が無くなるという。
  少しずつコロナ対策をとりながら再開されてきているが、席数も半減、チケットが取れない。久しぶりに所用で渋谷に出かけたので、一応Bunkamuraのチケットセンターに寄ってみる。チケットセンターは薄暗く、やってないのかなと思いながら入ってみると、営業中で、何かチケットがありますかと聞いたら、本公演のチケットが日を違えて2枚残っていた。堤さん主演で行きたかった公演。一人1枚までで、早速購入。チケットが購入できただけですごくうれしかった。

  当日は入場にあたり、「チケットは自分で切ってください。」というように、気を使っておられたが、体温測定はやっていたのか気付かなかった。にせ猫さんによると通るだけで分かる機械を使っているのではと。
  席は市松で、比較的前の方の席だったこともあって、とても見やすかった。真ん中に舞台が設えてあり、バックステージにも客席が設置されており、前後の席で、席数を補う工夫がされている感じ。

  舞台は約2時間の一幕もので、役者さんたちは出ずっぱり。

  父親殺しの罪で裁判にかけられた少年、法廷に提出された証拠や証言は被告である少年に圧倒的に不利で、陪審員の大半は少年の有罪を確信。12人の陪審員は有罪か無罪かの重大な判決をしなければならず、しかも全員一致の評決でないと判決は下らない。

  映画で見たことがあり(確か白黒映画で見たような)、話の流れ、最後の眼鏡の件も知っているので、ストーリィを追うというより、俳優さんの演技に集中。

  堤さんは陪審員8番で、有罪に最初に異議を唱える役。
  有罪か無罪かは分からないけれど、少年の命のかかった評決をおざなりにしないで、時間をかけて議論しよう提案。
  重大な評決だけれど、それよりも早く切り上げて各人自分の時間に戻りたい、法廷では圧倒的に有罪の流れがあった。有罪と評決することは容易いかもしれないが、それだからこそ、話し合おうと。
  ここがこの演劇の一番の主張。
  情報化社会で、スピーディな情報が好まれ、マスコミにあおられて一方に傾きやすい昨今、この演劇はとても今日的な課題に満ちている。
  他者に対する偏見、偏見をベースにした他者認知、自分の問題と他者の問題の境界が曖昧な意見構成等々。

  12人の陪審員の背景、職業などが一人一人自己紹介されるわけではないが(会話の流れの中で幾らか示されることもあるが)、それでいてひとりひとりの在り様がくっきりわかる人物造形。さすがに上手な役者さんたちばかり、演出も素晴らしい。

  緊迫した舞台だが、時に笑いもあり、久しぶりに舞台を見たという高揚感もあり、楽しかった。長い自粛生活だが、とても気分転換になった。

  公演のチラシをあれこれもらって、あれも行きたい、これも行ってみたいと思うのも楽しい。ネット予約とかいろいろ頑張らないとチケットが取りづらいし、手に入らない確率も高いが、やはり演劇はいいなあと。
コメント
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