寮管理人の呟き

祖国は地獄だった

NHKのドキュメンタリー『北朝鮮帰国船』を3度見た。二人の在日朝鮮人のインタビューを通して、帰国事業の軌跡を辿った作品である。

9歳で北朝鮮に渡ったキムさんは、人間以下の生活を強いられて脱北し、韓国に入り、再び日本に戻った。

元朝鮮大学副学長のパクさんは送り出した教え子の置かれている過酷な現状を見て罪の意識に長年苛まれた。北朝鮮の体制に疑問・矛盾をおぼえながらも、関係者の弾圧を恐れて心ならずもチュチェ思想を賛美した行為を恥じるばかりと語った。

ドキュメンタリーを要約すると以下のようになる。

・指導者を神格化することの愚かさと危険性
・社会主義建設の夢に燃えて帰国した在日朝鮮人は監視下に置かれ不自由な生活を送った
・帰国船が北朝鮮の工作活動に使われていることを知りながら、日米両政府は何ら手を打たなかった

貧困に喘ぎ、日本に見切りをつけて両親と新天地を目指して裏切られたキムさん、その顔に深く刻まれた皺は苦難の歳月を物語っていた。彼らは日本で暮らす祖母が送ってくれるお金や荷物で命をつないでいた。体制を表立って批判するのは犬死を意味した。

日朝両国に棄てられた民の存在を冷静に捉えた番組であった。

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