高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

地球永住計画 賢者にきく

2019-11-07 15:58:19 | イベント
糞を食べる糞虫、死体を食べるシデムシなどは鼻つまみ者なのだろうか

11月7日、武蔵美大の三鷹ルームで標記のテーマの話がありました。「シデムシ」や「ギフチョウ」などの細密画の絵本で有名な舘野鴻さんと私と関野先生が鼎談をすることになりました。


最初に挨拶 左 高槻、右 舘野さん


関野先生

舘野さんんは絵本を見て「只者でない」ことはすぐにわかりました。まさか会うことになるとは思っていなかったので、楽しみではありましたが、気後れするような気持ちもありました。
 初めに舘野さんから1時間ほどのスライド紹介がありましたが、これが衝撃的とも言えるほど内容の濃いものでした。ユーモアのある人で、スライドには効果音があったり、ちょっとふざけた動画などもあって意外感がありました。舘野さんは話すことも好きらしくやや早口気味にたくさんの話を聞けました。


舘野さんのシデムシの話


 一番印象的だったのは「シデムシ」の生活史の写真紹介でした。絵本も詳細なリアルな表現ですが、写真はネズミの死体などが文字通り生々しく出てきました。その中で、シデムシの夫婦がネズミの下に潜って「使える」と判断すると作業を初め、くるくると死体を回転させるうちに肉団子のようになり、その中で幼虫を育てることが紹介されました。そして最後にネズミの死体を食い尽くした後、大きくなった幼虫が一斉に死体を離れるシーンが紹介されました。
「一斉にネズミの死体を離れていくんですが、科学的ではない表現になりますが、まるでネズミの死体から命がシデムシの幼虫になって出ていくという気がしました」
という舘野さんの感覚にドキッとしました。
 そのほかにも、描くために飼育装置の中に草を植えたが、その草も生えているのを見るとすごいと思うなど、ポロリともれる言葉に、生き物の観察者としての鋭さや凄みが垣間見れました。
 「絵は偽物だ」「本当に知らなければ描けない」などという言葉に、物事を中途半端にしない舘野さんの姿勢が感じられました。それだけ徹底した調べをすることを紹介した後で、意外なことに
「でも、私たちが調べたり、描いたりすることは昆虫には何の意味もない」
と語られたことも印象的でした。

 私は玉川上水でのコブマルエンマコガネの話をしました。


オオセンチコガネの話から始める


 玉川上水にタヌキがいること、タヌキがいれば糞虫がいるかもしれないと思って調べて糞虫がいたことを確認した時の驚き、調べてみたら玉川上水全域にいたこと、それどころか玉川上水以外の緑地にもいたことなどを紹介しました。そして、知りもしないで「糞に寄ってくる虫なんて汚らわしい」といった偏見は良くないこと、アイヌの人たちはそういう偏見を戒めたことの素晴らしさなどを話しました。
 私自身も絵を描くのは嫌いではないので、準備していたスライドにエンマコガネのスケッチがあったのですが、流石に舘野さんのいるところで紹介するのは気が引けますといったら会場が湧きました。


描いたエンマコガネの発表


 生態学者は糞虫の分解者としての役割を説明して、だから素晴らしいんだと理屈を垂れますが、生き物観察者としては、糞虫にしても他の生き物にしても、淡々と目の前の生を進めていることに敬意のような気持ちを感じるのだということで締めくくりました。全くの偶然ですが、私の最後のスライドで言おうとしたことが、舘野さんが最後に語られたことと符合していて、ちょっと驚きました。


最後のスライド



 それから鼎談になりました。



 鼎談でいくつかのことを話しましたが、思い出すままに書いてみます。ただ舘野さんの言葉は私が理解したことであり、話し手が意図されたこととは違うかもしれません。

高槻「若い頃アングラ芝居とかしていたそうですが、それとシデムシなどを描くくようになったというのは舘野さんの中でどうつながるのですか」
舘野「まともなこと、まっとうなことの裏側にもっとホンモノがあるはずだと思っていた。そのことがシデムシを描くことで開眼できた」
関連して関野先生が
「パンダをどう思いますか」と聞くと
舘野「素晴らしいんじゃないですか。クマなのにササを食べるようになったとか、白黒の体色など」
高槻「人気がありますが、それは動物園でタイヤで遊ぶ生きたぬいぐるみのような動物に対してであって、野生動物としてのパンダを見ている人がいないという意味で、フェアでないと思うんです。良いイメージならまだしも、糞虫やシデムシは知りもしないで忌み嫌われる、そういうのはフェアでない。要するに知らないで勝手に決めつけることにアンチで、パンダが嫌いというわけではありません」


舘野さんが描いたオオセンチコガネ


高槻「オオセンチコガネの絵を見て衝撃を受けました。シデムシの時には細密ではあるが、光は描かれていませんでした。ところがオオセンチの方はまさに光の照り返しなども含めて質感が素晴らしく描かれています。この違いはなんですか」
舘野「オオセンチは虹のようにきらびやかですからね。私としては目の前にあるものをそのまま描くだけです」
高槻「いや、見えたままといっても、どう見えるかが問題であって、私たちは白いテーブルは白いと見ている。


このテーブルは白い


 でも実際にはコップがあれば影ができて白ではなくなる。にも関わらず、日本の画家はあの北斎でさえ、影は描いていない。それは見えたままではないが、日本の画家には見えていなかった。だから、表現できる技術ということもあるし、光がどう見えるかという目ということもある」
舘野「そうですね。見えるということも対象の魅力や「知る」ということがないと「見えない」ということがある」
 記憶は不確かですが、舘野さんは恩師である熊田千佳慕のことを話しましたが、それはこの時だったかもしれません。熊田画伯は「対象に対する愛がなければ描けない」と言っていたそうです。

高槻「私は最近、あることでファーブルについて書かれたものを読む機会がありました。それによればファーブルは論文を書こうとすれば書けた。現に同時代のダーウィンはファーブルを生物学者として尊敬していたが、ファーブルは昆虫を熟知していたからこそ、進化論の単純な原理によってこの複雑な行動が生まれることは信じることができなかった。そして表現法としては論文ではなく、自分の人生と重ねるような形で昆虫記を書いた。
 私は大学の研究者という生業から論文という形で表現するが、いつも「これでは足りない」という気持ちが残ります。今日の舘野さんのお話を伺うと、やはり同じように表現法の素晴らしさを感じて、論文って限界があるなと改めて思います」
舘野「そうですよね。ファーブルは実に昆虫のことをよく知っている」
高槻「よくファーブルは観察の人といい、それはただよく見るという意味で記述的とされますが、実はファーブルは積極的に実験を行なっている。それも動物のことを知り尽くしているからどういう実験をすればそれがわかるかが実に巧みだ」
舘野「そうそう」

 どういう文脈だったか思い出せませんが、舘野さんが昆虫の顔の描写についての質問に対して言いました
舘野「顔だけじゃなくて姿全体を表現する」
高槻「あのオオセンチの絵で、触覚が開いているのを描いたでしょう。あれは糞の匂いに反応した時に開くんですよね。興奮しているんです」
舘野「そうなんですよ。でもそれがわかってくれる人は先生だけです」(笑)
 それからこうも言いました。
舘野「論文も大事で、私たちもそういう研究があるから先に進めるんです」
高槻「いや、研究者はこれまでどういう研究があるかを調べて、こういうことなら新しい論文になるといったイヤらしい動機で研究をし、論文を書くことが多い。本当にその生き物のことを知りたいという純粋な好奇心からではない。そういう純粋な意味での知らないことを知ることに日本の生物学者がどれだけ貢献したかはかなり怪しい」(笑)

 表現ということでは舘野さんはこうも言いました。
舘野「絵を描いているときはいいんだけど、描いてしまうと作品が自分から遠ざかるような気持ちになる」
その発言は鼎談ではなく講演の時だったので、私からは発言しませんでしたが、この気持ちは研究者が論文に対して持つのと全く同じなので、この符合にも驚きました。論文に何を書いたかは本人が一番知っているから、読み直すということはほとんどありません。

 パッと思い出すのはそんなところです。不確かな記憶で書いたので、前後関係は違っていると思います。今後、思い出すことがあれば追記します。
舘野さんに会い、お話を伺って、「流石にあれだけの絵を描ける人は違う」と感じ入ったことです。とても充実した時間でした。
 写真は豊口さん撮影です。ありがとうございました。

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丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例 −

2019-10-15 14:17:22 | イベント
丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例 −

保全生態学研究, 24: 209-220.(日本生態学会、2019年8月27日受理)こちら

高槻成紀・梶谷敏夫


ここには要点だけ示します。

要 約:丹沢山地は1970年代からシカが増加し、その後シカの強い採食圧によって植生が強い影響を受けて貧弱化し、表土流失も見られる。このような状況にあるシカの食性を2018年の2月から12月まで、東丹沢(塔が岳とその南)と西丹沢(檜洞丸(ひのきぼらまる)とその南の中川)、西部の切通峠においてそれぞれ高地と中腹(ただし西では高地のみ)において糞を採集し、ポイント枠法で分析し、次のような結果を得た。1)全体に双子葉植物の葉が少なく、繊維、稈が多かった。2)季節的には繊維が冬を中心に多いが、場所によっては夏にも多かった。3)標高比較では高地でイネ科が多かった。4)場所比較では東丹沢ではササが多い傾向があった。5)シカが落葉を食べている状況証拠はあるが、糞中には微量しか検出されず、その理由は不明である。これらの結果はほかのシカ生息地と比較して、シカの食物中に葉が少なく、繊維が多く、当地のシカが劣悪な食糧事情にあることを示唆する。このことから、丹沢山地の森林生態系のより良い管理のためには、シカ集団の栄養状態、妊娠率、また植生、とくにササの推移などをモニタリングすることが重要であることを指摘した。

キーワード:過密度、貧栄養、糞分析、有蹄類


シカの糞採取地点5カ所


主要植物の占有率の季節変化。

場所ごとに4季節あるので複雑だが、要点は以下の通り。
1)ササは東部に限定的
2)イネ科は高い場所に多い
3)繊維が夏でも非常に多く、このような報告はこれまでにない。
4)稈(イネ科の茎)も多く、しかも夏にも多い。


他のシカとの比較。A:緑葉、B:繊維

この結果を他の場所と比較した
1)岩手県五葉山は植物の葉が極めて多く、その他の場所は多いと60%、少ないと30%程度であることが多い。その中で金華山の春は20%未満になり、丹沢は夏に30%以下の少なかった。
2)五葉山や乙女高原では繊維は微量だが、金華山は秋以外は多かった。丹沢は夏には60%以上になった。

これらのことから、丹沢のシカの食性は夏でも緑陽の利用が少なく、繊維が多かった。これはシカが木本植物の枝などを食べていることを示唆する。丹沢山地では長年のシカの影響で植物が乏しくなっており、そのことがシカの食物事情を劣悪にしていることがわかった。


A:丹沢山地上部の柵。中ではササが伸びているが、外では小型化している。B:丹沢山地上部のブナ林の様子。下生えに大型草本や低木がなく、芝生のように低くなっている。

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モンゴルでの天気予報教室の記録

2019-09-04 22:19:15 | イベント

モゴドでの「天気予報教室」の記録
- 2019年9月2, 3日、モンゴルブルガン県 –

 私はモンゴルで動植物の調査をしてきたが、ここ数年は明治大学の森永由紀先生の馬乳酒プロジェクトのメンバーとして、群落調査や家畜の食べ物を調べてきた。その知見を地元に還元したいという気持ちがあったが、今回森永先生が小さいながらも博物館を作ることにし、モゴドのカルチャーセンターの一角に展示をすることになった(こちら)。この機会に森永先生は子供達に天気予報の重要さを教えたいということで、小学校で天気予報教室を開催することになった。これは森永先生のアイデアだが、たまたまこの学校はエコスクール指定校で、これまでも植林事業体験などもしているので、学校としてもぴったりの企画だったようだ。私は記録者として参加した。以下はその記録である。

2019.9.2
 9月が新学期ということで、校舎の入り口は飾りがしてあった。


飾り付けをした校舎

 先生のいる部屋に通されてアイラグを勧められた。いかにもモンゴル風だ。それから実験をする部屋に行くと、子供たちが三々五々集まってくる。皆頬が赤く元気一杯だ。
 森永先生がモンゴル語で自己紹介をした。


挨拶をするモリナガ・バクシュ(森永先生、右)と通訳のバトユンさん

それを聞いて、子供たちの表情が明るくなった。「いい先生らしい」と感じたようだ。その後「ここからは英語にしますね、OK?」という言葉に子供が「オーケー!」と答え、すでに授業に「入って」いた。


教室の子供たち

 「今日は天気の勉強をします」
 「天気予報を確認した?」には多くの子が「はい」と答えていた。外国の先生だから物怖じするとか、声を出して返事をするのは恥ずかしいという感じは全くない。

「天気にはどういうのがある?」には多分「晴れ、とか曇り」とか答えていたようだ。それから気圧の話に入り「空気は見える?」の問いには「見えない」と答えた。「見えないけどあるんですよ。手のひら10cm2に100kgもの重さがかかっているけど、そうは感じません」
というところまで話してから、「実験をしましょう」と、「やりたい人」と言ったらたくさんの子供が「やりたい、やりたい」と手を挙げた。女の子は肘から腕をあげるようだった。


手をあげる子供たち

一人の背の高い男の子が選ばれて、照れ臭そうに前に出てきて、水の入ったペットボトルを両手に持ってから「どちらが重い?」「同じ」「では片方を水に入れてみましょう。」とバケツに入った水にボトルをつける。「どちらが重い?」「こっち」と空中の方をいう。


選ばれて実験をする少年

「はい、ということは水の中にいると重いとは感じないけども、確かに重さはあるんですね。空気は見えないけど、あって、重さがあるんです」
と、森永先生らしい、透明な声で歯切れの良い話しかたに、子供たちは頷き、興味を持っていた。
「では、自分でもやってみましょう」と各机にバケツを置いて、それぞれが体験をすることになった。楽しみながら学ぶということがとても良い形で進められていた。


嬉しそうに実験をする少女


アドバイスする森永先生

 私がおかしかったのは、この年頃の子供にある「男女の関係」だった。女子が実験をするのを男子がからかう。女子は本当に嫌だと言い返し、終わってからその男子の背中を力任せに叩いた。座って隣の女の子に話していたが「本当、あいつ大嫌い」と言っているに違いない。

 話は天気に戻った。「空気に重さがあることがわかりました。私たちは日本の東京から来ました。モゴドは東京より高いです。ではどっちがたくさんの空気に押されていますか?東京だと思う人?」多くの子が手を挙げた。「モゴドだと思う人?」こちらに手を挙げた子もいた。
 黒板にイラストを描いて気圧を矢印で描いた。黒板が日本のもののように表面にざらつきがないので、白墨のノリが悪かった。絵が好きなことが意外なところで役に立った。

「みなさん、ヒマラヤを知っている?」「知ってる!」「ではモゴドとどっちが空気が多いですか?」「モゴド」「そうですね。私たちは東京から来たので、空気が少ないから少し頭が痛いことがあります」


気圧を説明する板書

 と高さの違いと気圧を説明した後、一カ所で気圧が変化する話に移った。
「気圧が高いと天気が良くて、低いと悪いのです。気圧の高いところと低いところがあったら、空気はどう動きますか?」これには意見が分かれた。時間もなかったので、高い方から低い方に風が吹くということを「教える」形になった。


気圧の違いと空気の動きを説明する板書

 ボトルにストローをつけ、色のついた水で目盛りを読む教材を配り、それを記録して明日比較をする説明になったが、ノートを出して書いた子は半分以下の女子だったように思う。実験を楽しんだが、記録をとるのは面倒というか、そういう習慣があまりないのであろう。
 「明日は風を調べます」とプロペラのついた風速計の教材を出すと、特に男の子は興味津々で拍手をする子もいた。


「明日はこの風力計で勉強します」

 こうして第一日目、子供たちはとても満足感を持って授業が終わった。

9月3日
 森永先生たちは気象台に行き、私は部屋でヒツジなどの頭骨を煮る。運転手のアユシュさんが迎えに来たのが12時過ぎで、すでに授業は始まっていたが、参加する。昨夜、アドバイスとして、1日目のおさらいと今日の目標を明示したほうがいい、それと感想文を書いてもらうと、子供たちが授業をどう感じたかがわかって、今後の参考になると言っておいたが、それを反映して、板書がしてあった。



 1日目のまとめとしては1)空気には重さがある、2)高気圧なら晴天、低気圧なら悪天候ということであった。
 今日の目標としては1)天気予報の重要さ、2)どうして予報をするか、3)実際に測候をしてみよう、であった。


説明する森永先生(左)と通訳のバトユン

 天気予報の重要性については、モンゴルで2000年の正月に天気予報では嵐が来ると報じていたが、青空だったので「大丈夫」と考えて宴会に行ったが、雪が降り始め2日間続いたために、家畜が多数死んだという話と、日本のサンゴ採りがやはり青空だけら大丈夫と考えて嵐にあった人がたくさんいたが、ある漁師は気圧計を持っていてそれを信じて出かけなかったので助かったという話だった。それに続けて人はこうであってほしいということを信じる習性があるという話もあった。


授業を聞く子供たち

 子供たちは正月の宴会の話まではよく聞いていたが、サンゴの話と人の習性あたりになると明らかに退屈して集中力を欠いていた。私はその話を聞きながら、天気予報の重要性と主観的判断の危険性ということを伝えるのであれば、モンゴルの宴会の話だけでよかったと思った。
 それから話は予想の仕方に移ったが、最初にあったのは雲の話であった。雲は空の高いところにある。それは低気圧では空気が上昇するためである。一方、標高が高くなれば気温が低くなる。寒くなるとペットボトルの外側に水滴がつくことは子供たちは知っていると返事をしていた。その水が雲で、高いところでは凍るから雪となって落ち、落ちる途中で溶けて水になる、これが雨であるという説明であった(と私は聞いた)。この辺りはかなり難しくて、子供たちは昨日のように「そうだそうだ」とか「うん、知ってる」というような話に入り込む感じはないように感じた。
 それから世界中で測定されており、同じ測定がされているから、地球上の天気予報が広範囲に可能であるということで、測定の重要性が説明された。これも多分、話を拡大しすぎていて、測定項目がなぜ予報に役立つかを説明して、「ではそれを実際に測定してみましょう」でよかったのではないかと思った。

 それから外に出て、測定をすることになった。



 外に出て私が感じたのは、空が広い、校庭から遠くの丘が広く見える環境の違いだ。モンゴルの子供にはこれが当たり前の景色であり、取り立てて恵まれているとも思わないだろうが - 少なくともモゴドの学校が特別ではないわけだから – 日本の学校といかに違うかを感じた。


校庭の測器に集まる

 子供たちは班に分かれて、各班が教材の測器を与えられた。何と言っても風速計が人気で、どの班でも最初に手に取ったのはこれだった。


風測器を使ってみる

 風が弱いために、なるべく高いところに持ち上げる子、塀に登る子、走りまわる子と様々だった。風速計は少し鈍感なようで、一度回り始めれば順調のようだったが、最初の「回り」がないようだった。この辺り教材としてひと工夫欲しいと思った。


風速計を高く上げる子


走り出す子


柵に乗って風速計を回そうとする子供たち

 そのほかの測器も説明されたが、聞いていることそうでない子が半分くらいという感じだった。


説明するバトユンさん

気象観測器の使い方を説明する。


 最後に感想文を書いてもらおうと紙を配った。おもしろいことに、友達の背中を台にして書いていた。


数珠つなぎになって感想文を書く

<感想>
 全体としてこの教室はどう評価されるだろうか。森永先生側の、心情を含めた実施背景は、これまでの調査を地元に還元したいということの一つの表現形といえる。それはアイラグ博物館も同根である。それと、次の世代に環境のことを考えてもらいたいという気持ちもあり、実際には得意の気象学を取り上げて天気予報の大切さを伝え、気象の基礎を理解させるということがあった。

 記録係として参加した私の感想を言えば、たいへん素晴らしかったと思った。成功の大きい要素としては子供たちが素直で、伸びやかな子供らしさがあり、そのことがそのまま知的好奇心につながるこの企画にフィットしたと感じた。授業を聴きながらふと机に置いてあった生物学の教科書を見たが、「これはたまらん」という感じの難しいことを羅列したようなものだった。これでは学習好きでも勉強嫌いになる。その点、この企画では、日常に体験する気象という親しみのある現象を、原理を説明し、教材を使って体験的に考えながら学ぶ工夫がされていた。それには森永先生の話の作りの巧みさや、教材を持参した教育的情熱が最大の必須条件であった。それなしには成功はなかったが、しかし、それがあっても覇気のない子を対象にすればうまくいかないことがあるから、やはりその双方がうまく化学反応を起こしたのだと思った。
 反省点としては、やはり少し話が難しかったこと、子供たちがのびのびしていただけ、ざわついて説明が聞けない場面があったことであろうか。この要因としては人数がやや多かったということはあるだろう。ただ、普段はもっとざわつくのかもしれないので、この教室が特に騒がしかったかどうかの判断は控えたい。
 私としては、この出来事 – モゴドの子供にとっては日本という国から先生が面白そうな教材を持ってきて天気の話をしてくれた – は子供たちに強い印象を残したと思う。企画の趣旨である天気予報を認識するということにはもちろん役に立ったであろう。ただ、それだけではなく、説明を聞いて、実際に日本は低い場所だということを知り、「ああ、そういう違う国に暮らしている人が今、ここに来てくれているんだ」という思いや、日頃考えない日本を想像する刺激にもなったであろう。
 子供たちは授業の後、満足げな表情を見せていたが、何かをプレゼントされたときの満足とは違う、知的な興味を持ったことの満足は子供たちの心に何かを残したと思う。「科学者っていいな」と思った子もいるだろうし、「女性で科学をしているんだ、私もなりたいな」と夢を持った女の子もいるかもしれない。
 それと同じほど大切だと思ったことは、善意のおこないということである。今、世界は政治家が経済の原理で競い合い、いがみ合っている。それに比べれば、このささやかな試みは、無意味なほど小さなことであるかもしれない。だが、本当にそうだろうか。巨大な組織としての国は確かに大規模なことをする。だが、その底流にあるのは、自分の利益を得ようということであり、相手を信じないということである。それは虚しく、醜い。それは生身の人ではなく、組織を実態と思う虚構ゆえのことだと思う。人にとって真に大切なことは、相手を信じ、その目を見て交流することであるはずで、そうであれば、上記の政治家のすることは虚しく、このような活動こそが讃えられるべきものであろう。モゴドの子供たちも、毎日のニュースで大人とは強い者が大きい声を出して得をしようとするものなのだろうと思うようになっているだろう。この教室に参加した子供たちは気象学を学ぶと同時に、全体の雰囲気から、そういう大人たちの中に善意で自分たちに接してくれる大人もいると感じたはずだ。私は日本の先生の話を聴いて瞳を輝かせながら頷く子供達を見て、そのことを確信した。


瞳を輝かせながら授業に聞き入る子供たち

 子供の心に種を蒔く、そのことはどれほどの形で実を結ぶかはわからない。しかしその一粒でも芽を出し、実を結ぶとすれば、何ものにも代えがたい大きな意味を持つと思う。そう考える私はあまりにロマンチックであるのかもしれないが、私にとってこの活動はそういう清涼感のあるものであった。

  この活動は、一般財団法人WNI気象文化創造センターの研究助成によって行われている。私は動植物の生態学を研究しているので、気象のことは普通の知識しかないが、日本からモンゴルに行けばその違いを認識しないではいられない。モンゴルの乾燥気候は植生を特徴づけ、そのことがモンゴル牧民の生活を形作ってきた。日本の農民が台風などに敏感であるとは違う意味で、モンゴルの牧民は気象に敏感であり、実際それは家畜の命につながり、人の生活につながる。「気象文化」という言葉は知らなかったが、日本とモンゴルを往復すると、気象は間違いなく文化に影響を与えることを実感する。森永先生とバトユンさんの授業を見ながら、この活動はそのことがよい形で教育に活かさていると感じた。

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丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例 −

2019-08-27 16:03:19 | イベント

2019.8.27
丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例 −
保全生態学研究、24: 209-220

 
丹沢山地は1970年代からシカが増加し、その後シカの強い採食圧によって植生が強い影響を受けて貧弱化し、表土流失も見られる。このような状況にあるシカの食性を2018年の2月から12月まで、東丹沢(塔が岳とその南)と西丹沢(檜洞丸(ひのきぼらまる)とその南の中川)、西部の切通峠においてそれぞれ高地と中腹(ただし西では高地のみ)において糞を採集し、ポイント枠法で分析し、次のような結果を得た。1)全体に双子葉植物の葉が少なく、繊維、稈が多かった。2)季節的には繊維が冬を中心に多いが、場所によっては夏にも多かった。3)標高比較では高地でイネ科が多かった。4)場所比較では東丹沢ではササが多い傾向があった。5)シカが落葉を食べている状況証拠はあるが、糞中には微量しか検出されず、その理由は不明である。これらの結果はほかのシカ生息地と比較して、シカの食物中に葉が少なく、繊維が多く、当地のシカが劣悪な食糧事情にあることを示唆する。このことから、丹沢山地の森林生態系のより良い管理のためには、シカ集団の栄養状態、妊娠率、また植生、とくにササの推移などをモニタリングすることが重要であることを指摘した。こちら

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子供の感想

2019-03-29 11:23:42 | イベント
1年 男子
すこしくふうしてがんばってつくった。カメがつくれてよかった。

1年 女子
ねんどでどうぶつをつくって、とてもたのしかった。シカをつくるときツノをつけるのがむずかしかったです。けれど、とってもたのしかったです。かんせいしたらおみせします。いろをぬるのがたのしみです。またこんどこれるといいです。

1年 女子
アザラシはむずかしかったけどたのしかったです。またきてねんどでどうぶつをつくりたいです。おねえちゃんはラッコとペンギンをねんどでつくりました。ラッコがかわいかったです。たくさんおしえてくれて、ありがとうございました。

1年 男子
ぼくは、あざぶだい学でカメをつくりました。2こつくりました。ねんどでつくりました。せんせいのせつめいのしかたがわかりやすくて、2たいつくれてうれしかったです。

1年 女子 
わたしは、ラッコとアザラシをつくりました。むずかしかったけれどうまくできてうれしかったです。おうちでも、あまったねんどで、ちがうどうぶつをつくりたいです。また、やりたいです。ラッコに小さい耳があるのをはじめてしりました。

1年 女子
じぶんの大すきなどうぶつをつくれたときすごくできた!っておもったし、先生におしえてもらってすごくうれしかったし、みんなでつくったらすごくたのしかったです。またみんなといっしょに大すきな生きものをつくりたいです。きょうやったこと、わすれません。
おうちでもつくりたいです。

1年 男子
ねんどをやって、いろいろなかたちがつくれてよかったです。

1年 女子
アザラシをつくりました。
じょうずにできるかしんぱいだったけど、先生がやさしかったからじょうずにできました。
アザラシのどうたいがむずかしかったです。
くびとうしろのほうがむずかしかったです。

1年 女子
わたしは、いるかをつくりました。手がむずかしくて、なかなかできませんでした。でもじょうずにできました。
わたしがつくった いるか のなまえはシワハイルカです。

1年 女子
きょうはアザラシをつくりました。ヒレのところが1ばんむずかしかったです。でもほかのどうぶつもつくってたのしかったです。いえでつくってみたいとおもいました。はじめてでもたのしかったです。

1年 女子
わたしは3月27日(水)にねん土でトイプードルをつくりました。とてもかわいくできて、うれしかったです。たのしかったので、らい年もぜひねん土でどうぶつをつくりたいとおもい、らい年もぜひいけたらここにきたいです!

1年 女子
きょうはウサギをつくりました。とくに耳をつくったりつけたりするのがむずかしかったです。からだをつくるのにくろうしました。からだの大きさををかんがえながらつくりました。ねんどがあまったらまたつくりたいです。がんばってつくりたいです。がんばってつくったのでとてもじょうずにつくれました。とてもうれしかったです。



2年 男子
マッコウクジラをつくったけど、大きくてねんどだからすごくむずかしくて、先生はとてもうまくてびっくりしました。すごいとおもいました。楽しかったです。

2年 男子
とびうおをつくったらうまいんだかへただかわかんなくなりました。
2~3日たったらはやくとびうおのはねをもってかえりたいです。

2年 女子
わたしは、むずかしいとおもったのがラッコでした。ラッコのあしはどうなっているのかな。と思いました。でもできました。そして、そのあとシャチを作りました。シャチもむずかしい部分がありました。それは、しっぽとくちです。しっぽは、せんせいがおしてつまむといいよ、といってくれました。くちはじぶんでつくりました。じょうぎで、くちのまんなかをきりました。

2年 女子 
わたしは、ヒョウアザラシとアデリーペンギンを作りました。さいしょはむずかしいかとおもっていましたが、おもったよりむずかしくありませんでした。ほかのも作りました。ほかのものを作ってもとっても楽しかったとおもいました。アザラシは、手と足がむずかしかったです。ペンギンは、足と手とくねるところがむずかしかったです。そのなかでいちばんむずかしかったのは、アザラシの手でした。

2年 女子
作るのがむずかしかったけど、楽しかったです。
さいしょのふくろうは、かんたんでした。でもペンギンをつくったので、まっすぐでもないし、ななめすぎないようにくふうをしました。ペンギンには、しゅるいがあって、わたしはキングペンギンというペンギンをつくりました。エンペラーペンギンというペンギンもいて、それににているので気をつけてつくりました。じょうずにできました。でもペンギンには足に水まくのようなのがついていたので、むずかしかったです。口ばしも、あまりながすぎないようにしたりがんばりました。

2年 男子
ワシが、木のえだに立っているところを作って、木のえだに立たせるのがたいへんだった。ワシをつくれてうれしかった。

2年 男子
ねんどづくりは、とってもおもしろくてたのしかったです。自分がつくりたいどうぶつをつくれたので、たのしかったです。またやりたいなと思いました。

2年 女子
楽しくできてうれしかった。もっと作りたかった。絵のぐをぬってみたかった。

2年 女子
今日、きてよかったとおもった。たのしかったからまたきたいとおもいました。

2年 男子
いろいろなどうぶつをつくれてよかったです。またつくりたいです。

2年 男子
たのしかった。ぼくははくぶつかんで、ねんどでジンベイザメをつくれてとてもたのしかったです。3年になってもやりたいです。こころにのこりました。またきたいです。

2年 男子
ペンギンをつくるのがむずかしかったけれど、たのしくうまく出来てうれしかったです。アザラシもうまくできてうれしかったです。

2年 女子
わたしはペンギンを作りました。頭と体をべつべつに作ったら、頭がはずれてしまいました。家にかえってかわいたらえのぐで色をぬりたいと思います。もしまた、ねんどのさくひんや、ほかのようじがあった時は、またきたいです。

2年 女子
今日、ねんどのきょうしつでペンギンを作りました。おもったよりむずかしくてたいへんだし、とてもつかれました。
今日はできなかったけど、学校やいえでつくるときはそれをさんこうにしてこまかく先生みたいにつくれるようにがんばってみます。
たのしかったです。

2年 女子
今日のきょうしつはとてもたのしかったです。きょうしつでいるかをつくりました。おもってたいじょうにせいこうしました。とてもうれしいし、たのしかったです。またきょうしつにきたいです。おしえてくれてほんとうにありがとうございました。のこりは家で作ります


2年 男子
今日のねん土でどうぶつを作る教室で、れんしゅうでふくろうとタヌキをれんしゅうして、ぼくは、ねん土で何か作るのは楽しいなと思いました。そして、自分が作りたいラッコをじっさいに作りました。
それで気がつきました。足のぶぶんはほそいんだなと気がつきました。

2年 男子
さいしょいるかを作ろうとしたけど、むずかしそうだったからラッコにしました。

2年 男子
ぼくは、ウサギを作りました。
耳や足のぶぶんのバランスがとてもむずかしかったです。ぼくはこういうなにかを作るというイベントが大好きです。むずかしかったけれど、かわいて色をぬって完成するときが楽しみです。また麻布大学でいろいろなイベントをやって下さい。楽しみにしています。ありがとうございました。

2年 女子
さいしょウミガメにしたけれど、わたしがウミガメより好きなリクガメを作りました。楽しかったです。できればまた行きたいです。

3年 女子
わたしは、ペンギンを作りました。一番むずかしかったもののところは、ペンギンの口ばしで、いろいろと何度もなおしましたがくずれちゃいました。でもとても楽しかったです。

3年 男子
さいしょイッカクをつくろうとしたらだめだった。ミユビハリモグラにしました。ミユビハリモグラをギリギリでつくりました。

3年 女子
ペンギンは、作るのがかんたんだと思ったけれど、作ってみたらとてもむずかしかったです。家に帰っても、ペンギンを作って、のこったねんどでほかのものをいっぱい作りたいです。来年も、このイベントをやりたいです。かわいたらきれいな色でぬってかわいくしたいです。

3年 男子
犬のちわわを作りました。
さいしょはかんたんだとおもっていたけどけっこうむずかしかったです。
またこの工作を作りたいです。
おもしろかったけどむずかしかったです。

3年 男子
はくぶつかんでねんどで犬を作りました。しゅるいはチワワにしました。足と体がうまくいきませんでした。むずかしかったです。

3年 男子
動物を作る で、ハリスホークにしました。むずかしかったこところは足だけど、あと固まって立てればいいです。あと、動物が好きでつくることなどができてうれしかったです。ハリスホークをつくれてたのしかったし、うれしかったです。

3年 男子
ぼくは、ねんどで動物なんてつくれるのと思って、やってみたらいろんな動物がつくれるんだなあと思いました。ぼくはオサガメを作りました。むずかしかったです。

3年 女子
わたしはペンギンをつくりました。てや足をつけるのがむずかしかったです。家にかえってつづきをやろうとおもいます。

3年 女子
作るのはむずかしかったけれど、とても楽しかった。また今度も行きたいと思いました。あと、ねんどで動物がうまく作れてうれしかったです。

3年 女子
ペンギンを作って、ペンギンの足がむずかしかった。楽しかった。ペンギンは、たいへんでした。 

3年 女子
かわいい動物が作れて、楽しかった。のこったねんどで他の動物も作ってみたいと思った。かんさつして、作るのが楽しかった。色づけがいろんな色でぬれて楽しかった。またやりたくなった。

3年 男子
今回はじめてとかげをつくってみたけどむずかしかった。つぎはかめをつくってみたいです。

3年 男子
もぐらを作りました。いろいろな人たちが手つだってくれてとてもじょうずにできました。すごく楽しかったので、また行きたいです。
ありがとうございました。



4年 女子
最初は、イルカがかんたんだと思ったけど、つくってみたら少しむずかしかった。どう体のところが丸みがある形で、丸すぎてもだめだし、たいらだとだめだったから、大変だった。ひれの部分は、かんたんだった。
でも楽しかったです。

4年 女子
ウミガメを作りました。顔と手足がむずかしかったです。カメにしっぽがあると初めて知りました。大学生がウミガメをうまく作れるコツを教えてくれたり、手伝ってくれたので、うまくウミガメを作ることができました。

4年 女子
わたしはトイ・プードルを作りました。トイ・プードルの顔をくっつけるのが、なかなかくっつかずむずかしかったです。

4年 男子
まあ、ふつうだった。ねずみだと思うものをつくった。
ねずみはむずかしかった。
次に、ほかのものをつくりたい。(えび)
図工はふつうだけど、これをやってほんの少しだけすきになったと思う。ねんどがきもちよかった。家でもっと作る。

4年 女子
はじめて知ったねんどで、かわいたらすごくかたくなるので、かわくのがすごく楽しみです。わたしはペンギンを作りました。絵を見て楽しくいっしょうけんめい作ることができました。すごく楽しかったです。また来たいと思いました。ありがとうございました。

4年 女子
私は、今回の粘土の作品づくりで、パンダを作りました。簡単に見えるけれど、実は難しいという体験をしました。足や手など、難しくてできない部分がありました。針金を使っていたりする人や、色えんぴつで形を作っている人もいました。意外と、粘土で動物をつくるのは、形づくりから大変なことが分かりました。粘土が乾燥するとどうなるのか気になります。

4年 男子
かえるを作りました。むずかしかった。
次はねんどでボールを作りたいです。
ありがとうございます!



5年 男子
きょうは大学でねんどをやりました。ねんどで たまご と たぬき とウミガメをつくりました。とってもたのしかったです。

5年 男子
ぼくはシカをつくり、動物のことをよく知る事もできて、ねんどでも動物を作ることができ、すごくうれしい。

5年 男子
つくるのが、とてもむずかしかった、先生の作品が、とてもすごい。

5年 女子 
近くにいる人と話しあえたりしてとても分かりやすい説明で楽しかった。学生さんもニコニコして話しやすかった。資料もあって、作りたい動物がすぐに分かった。また来たいと思う。

5年 男子 
ぼくはジンベイザメのひれがむずかしかったです。ねんどでどうぶつをつくるのはむずかしいとしりました。今日はありがとうございました。

5年 男子
石粉粘土というものを今回、はじめて使ったので「どんなものかな?」と思っていましたが、実際に使ってみると、いつも使っている油粘土と同じようなさわりごこちで、ちょっときもち悪かったです。でも使う時に、学生さんが助けてくれたので、とちゅうまででしたが上手につくることができました。今回学んだことを、学校の図工などの学習などに生かしていけたらいいと思いました。今回は本当にありがとうございました。
おもしろかったです。

5年 男子
自分は、こんなにまじめに紙ねんどで動物をつくったことがなくて、やってみると、ひびなどを直すなどのことがむずかしかったです。けど海ガメを作る時はすごく楽しかったです。また、家でも、なにかを作ってみたいと思いました。
5年 女子
ウミガメを作りました。こうらとどう体を分けて作るのがむずかしかったです。
最初に作ったフクロウは簡単だったけど、次に作ったタヌキは首から上を作ったので、頭の形や耳、鼻の大きさを調整するのがむずかしかった。またできたらむずかしい動物にもちょう戦してみたいです。

5年 女子
自分の作りたい生き物の作り方や、足が長い動物はむずかしいなど、ていねいに教えてもらったので、とちゅうまでしかできませんでしたが、良い作品ができそうです。また、水さい色えんぴつを使うと色がぬりやすいことや、なるべく色をうすくぬったり、少しびっくりしたのが、色えんぴつでも色が塗れるというところです。今回学んだことは今後の図工などで生かせると思います。

6年 男子
シカを作ったとき、つのの向き、形などをしっかりと注意し、作った。また、皆で笑い合ったりしながらつくったのがとても面白かった。さらに、おしえてもらったこともあり、おもしろかった。

6年 男子
たのしかった。
よくわかった。
三つ作った。

6年 女子
今回の教室では、ウミガメを作りました!!
タヌキやフクロウを作る時、ひびがはいってしまったり、形が上手にできなくて少し難しかったです。
でも好きな動物を作る時は、自分的には工夫が出来たかと思います。自分で、作る時、最初やったタヌキや、フクロウのこつが役立ったなと思いました。
とても楽しかったし、またやりたいなと思います。

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粘土で動物を作ろう

2019-03-27 21:20:27 | イベント
麻布大学いのちの博物館では展示の他にもイベントを行なっています。今回は「粘土で動物を作ろう」というイベントを行いました。

*写真は公開の了解を得ています。

2019年3月26日と27日に春休み子ども教室として「粘土で動物をつくろう」を実施しました。これまでの教室と違い、学年限定をしなかったので、申し込みが多く、教室一杯まで拡大しましたが、一部の希望者にはお断りをすることになりました。どちらの日も35名が参加し、部屋がいっぱいになりました。
 当日のようすは次の通りでした。まず、粘土の説明をしました。この粘土は「紙粘土」に似ていますが、「石粉粘土」と言います。違いは、乾くと石膏のように硬くなることです。だから、色鉛筆や絵の具で色をつけるのに向いています。
 教室ではこの粘土でフクロウの人形作りをしました。これはごくシンプルなもので、まずピンポン球ほどの球を作ります。両手に粘土を挟んでコネコネして、球を作ってもらいました。 




粘土をこねる

 それからその球を少し長い楕円形にし、上の一部を親指で押して凹みを作る、これで終わりです。まるでダルマです。これで粘土の感触に慣れてもらいました。


ダルマのようなフクロウの「型」と色をつけたフクロウ人形

 その次に、事前に作っておいてこの「ダルマ型」に色鉛筆でフクロウの色付けをしてもらいました。まず顔の部分にハート型の輪郭を描き、目とくちばしを描いてから、お腹の部分に斑紋をつけます。その後、頭から肩、背後を茶色で塗って出来上がりです。ここまでで、彩色を体験させました。




フクロウの型に色を塗る

 次に少し複雑なタヌキに挑戦してもらいました。といっても胴体、四肢、尾などはなく、頭とその下だけのものです。頭はフクロウの頭と同じような球形なのですが、違うのは鼻の部分が飛び出していることと、耳があることです。これらは球形の一部をつまむようにして盛り上げます。耳はその部分をつまむようにして飛び出させます。そうすると当然くぼみができますので、あとでそこを整えます。そのあたりを実際にやってみることで体得してもらいました。


タヌキの形を作る

 一休みしてから、それぞれの作りたい動物を聞きました。主だったものは事前に準備していましたが、当日言う子もいました。中にはイッカクとかカツオノエボシとか、なかなかユニークな選択をした子もいます。急遽ネット検索をして適当な写真やイラストを選んで印字しましたが、カツオノエボシは粘土で作るにはふさわしくないので、ほかの動物に変えてもらいました。
 
こうして自分の目指す動物をよく見て、それから粘土で形を作ってもらいました。手足の長いものは立たないから難しいと言っていたのですが、どうしてもイヌやシカを作りたいという子がいたので、割り箸を背骨にし、それにアルミ針金を巻きつけて四肢にしてそれに粘土をつけるように指導しました。

 ある子は事前に「ハリスホークを作りたい」と伝えてきました。日本にはいないタカの仲間ですが、動物園で見て大好きになったのだそうです。鳥を粘土で作るのは概して難しく、特に足が細いので立てるのが難しいのです。
それで足の部分に針金を入れて作ってみました。


ハリスホークの粘土模型

当日も針金で作った足を渡しました。その子は立派な胴体を作っていたから、良い作品になると思いました。

 ジンベエザメも事前に相談がありました。こちらは比較的作りやすいものです。要するに胴体が大きく、それに手足やヒレが出ただけの動物は粘土細工で作りやすいのです。サメでもアザラシでもイルカでも似たようなものです。ジンベエザメの場合は、白い斑紋が特徴なので、薄い絵の具の上に白絵の具で点をつけました。


ジンベエザメの粘土模型


ハリスホーク作りを指導する


シカに挑戦する二人


自分の好きな動物を作る

 この作業を含め、ミュゼットの学生が各日2人が手伝ってくれました。子供の相談に乗って指導をしてくれました。


学生の指導

 作業の途中に雑談をしました。例えば作りたい動物を板書しましたが、しばらくして
「みんなが言ってくれた動物は大体は哺乳類だけど、そうじゃないのが少しいるよ。ウミガメは?」
いろいろなことを言っていましたが
「爬虫類」
という正解が出ました。
「カエルは?」
これも爬虫類というのではないかと思っていましたが
「両生類」
と正解を言ったので驚きました。
ボードに書いた動物の名前農地赤枠をしたのが哺乳類以外の動物です。


板書

 それから、私が事前に作っていた動物の模型で、まだ色を塗っていないものを回してみてもらいました。興味深く眺めたようです。


粘土模型を眺める

 こうしてしばらく作品作りをしてもらいました。時間内で大体できた子もいましたが、まだまだの子もいました。その間ずっと集中しており、終わりの時間を伝えたら「もっとやりたいな」と言う子もいて、ちょっと驚きました。

 最後に記念撮影をし、修了証を読んで手渡しました。初日は各人に渡しましたが、2日目は時間短縮のため一人にだけ渡し、あとの子は入り口で受け取ってもらいました。未完成の作品をお家で彩色した完成作品を見るのが楽しみです。


修了証を渡す

 粘土細工は低学年にもできるし、可能性が広がるので、良い教材だと思いました。

子供の感想を読むと、楽しかったようです。


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モモンガ

2018-12-20 22:26:29 | イベント
モモンガ 2018.12.20
 外部観察 こちら
 基本情報 こちら
 手足 こちら
 剥皮 こちら 見ても平気だと思う人、どうぞ
 飛膜 こちら
 胃 こちら
 全身骨格 こちら
 台に載せる こちら
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ムササビ

2018-11-17 22:29:59 | イベント
ムササビ 2018.11.17 こちら
 外観観察 こちら
 基本情報 こちら
 脱がしたムササビ こちら 見ても平気だと思う人、どうぞ
 飛膜 こちら
 「小指」は骨ではなかった こちら
 針状軟骨はバテン? こちら
 滑空 -- 針状軟骨の使われ方 滑空 -- 針状軟骨の使われ方
 胃内容物 こちら
 頭骨 こちら
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引用文献

2018-04-01 22:22:43 | イベント
■引用文献
足立高行・植原彰・桑原佳子・高槻成紀. 2016. 山梨県乙女高原のテンの食性の季節変化. 哺乳類科学, 56: 17-25.
荒井秋晴・足立高・桑原佳子・吉田希代子. 2003. 久住高原におけるテンMartes melampusの食性. 哺乳類科学, 43: 19-28.
濱尾章二・宮下友美・萩原信介・森貴久. 2010. 都市緑地における越冬鳥による種子散布及び口角幅と果実の大きさの関係. 日本鳥学会誌, 59: 139-147.
原田直國・上田義治.2005.農業環境技術研究所生態系保存実験圃場における果実食鳥による種子散布の記録.インベントリー,4: 15-19.
平田令子・畑邦彦・曽根晃一. 2009. 果実食性鳥類の糞の分析と針葉樹人工林への種子散布. 日本鳥学会誌, 58: 187-191.
星野義延. 1990. ケヤキの果実散布における風散布体としての結果枝. 日本生態学会誌, 40: 35-41.
唐沢孝一. 1978. 都市における果実食鳥の食性と種子散布に関する研究. 鳥, 27: 1-20.
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小南陽亮・青木啓一郎. 2015. 校庭において秋冬季の果実木を訪れる鳥類を観察する方法と観察による学習内容. 教科開発学論集, 3: 101-112.
Kominami, Y., Sato, T., Takeshita, K., Manabe, T., Endo, A., & Noma, N. 2003. Classification of bird-dispersed plants by fruiting phenology, fruit size, and growth form in a primary lucidophyllous forest: an analysis, with implications for the conservation of fruit-bird interactions. Ornithological Science, 2: 3-23. 
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中静 透. 1994. 森林群集はどこまで解明されたか–樹木個体群の解析から. 森林科学, 10: 14-19.
Naoe, S., Masaki, T., and Sakai, S. 2018. Effects of temporal variation in community-level fruit abundance on seed dispersal by birds across woody species. American Journal of Botany, 105:1792-1801.
桜谷保之.2001.近畿大学奈良キャンパスにおける野鳥類の食性.近畿大学農学部紀要, 34: 151-164.
佐藤重穂・酒井敦.2001.ヤマハゼRhus sylvestris果実の鳥類による被食過程.森林応用研究, 10: 63-67.
田中悠希・佐野淳之. 2013. 森林の構造と鳥類による種子散布の不均一性. 広葉樹研究, 15: 1-10.
多田多恵子. 2017. 実とタネキャラクター図鑑.誠文堂新光社, 東京
高槻成紀. 2017. テンが利用する果実の特徴 – 総説. 哺乳類科学, 57: 337-347.
高槻成紀. 2018. タヌキが利用する果実の特徴 – 総説. 哺乳類科学, 58: 1-10.
辻 大和・中川尚史.2017.日本のサル.東京大学出版会, 東京
上田恵介・福居信幸.1992.果実食者としてのカラス類Corvus spp.:ウルシ属Rhus spp.に対する選好性.日本鳥類学会誌, 40: 67-74.
吉永知恵美・亀山章. 2001. 都市におけるトウネズミモチ(Ligustrum lucdum Ait.)の分布拡大の実態. 日本緑化工学会誌, 27: 44-49.

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2017年の論文

2017-12-31 18:50:24 | イベント
2017.12.25 
草食獣と食肉目の糞組成の多様性 – 集団多様性と個別多様性の比較
高槻成紀・高橋和弘・髙田隼人・遠藤嘉甫・安本 唯・菅谷圭太・箕輪篤志・宮岡利佐子

「哺乳類科学」, 57: 287-321.

 私は麻布大学にいるあいだに学生を指導していろいろな動物の食性を調べました。個々の卒論のいくつかはすでに論文になっていますし、これから論文にするものもあります。今回、それらを含め、個別の食性ではなく、多様度に注目してデータを整理しなおしました。多様度を、サンプルごとの多様度と、同じ季節の集団の多様度にわけて計算してみました。予測したのは、反芻獣の場合、食べ物が反芻胃で撹拌されているので、糞ごとの多様度と集団の多様度であまり違いがないだろうということです。そして、単胃でさまざまなものを食べる食肉目の場合、これとは対照的に、糞ごとに違いがあり、ひとつの糞の多様度は小さくても、集団としては多様になるだろうということです。実際にどうなっているかを調べたら、びっくりするほど予想があてはまりました。


サンプルごとの多様度(黒棒)と集団の多様度(灰色)の比較。草食獣は違いが小さいが、食肉目では違いが大きく、とくにテンではその傾向が著しい。

多くの学生との連名の論文になったのでうれしく思っています。下のグラフの1本の棒を引くために、山に行って糞を探し、持ち帰って水洗し、顕微鏡を覗いて分析し、データをまとめたと思うと、一枚のグラフにどれだけの時間とエネルギーが注がれたかという感慨があります。

2017.12.25
テンが利用する果実の特徴 – 総説
高槻成紀

「哺乳類科学」57: 337-347.

 テンが利用する果実の特徴を理解するために,テンの食性に関する15編の論文を通覧したところ,テンの糞から97種と11属の種子が検出されていることが確認された.これら種子を含む「果実」のうち,針葉樹3種の種子を含む89種は広義の多肉果であった.ただしケンポナシの果実は核果で多肉質ではないが,果柄が肥厚し甘くなるので,実質的に多肉果状である.そのほかの8種は乾果で,袋果が1種(コブシ),蒴果が7種であった.蒴果7種のうちマユミとツルウメモドキは種子が多肉化する.それ以外の蒴果にはウルシ科の3種とカラスザンショウ,ヤブツバキがあった.ウルシ科3種は脂質に富み,栄養価が高い.ヤブツバキは種子が脂質に富む.果実サイズは小型(直径 10mm未満)が70種(72.2%)であり,色は目立つものが76種(78.4%)で小さく目立つ鳥類散布果実がテンによく食べられていることがわかった.「大きく目立つ」果実は8種あり,このうち出現頻度が高かったのはアケビ属であった.鳥類散布に典型的な「小さく目立つ」果実と対照的な「大きく目立たない」な果実は3種あり,マタタビとケンポナシの2種は出現頻度も高かった.生育型は低木が41種,高木が31種,「つる」が15種,その他の草本が9種だった.これらが植生に占める面積を考えれば,「つる」は偏って多いと考えられた.生育地は林縁が20種,開放環境が36種,森林を含む「その他」が41種であった.こうしたことを総合すると,テンが利用する果実は鳥類散布の多肉果とともに,サルナシ,ケンポナシなど大きく目立たず,匂いで哺乳類を誘引するタイプのものも多いことが特徴的であることがわかった.

2017.10.10
A comparison of food habits between the Japanese marten and the raccoon dog in western Tokyo with reference to fruit use
東京西部のテンとタヌキの食性比較−果実利用に注目して

Seiki Takatsuki, Risako Miyaoka and Keita Sugaya
高槻成紀・菅谷圭太・宮岡利佐子
Zoological Science, 35: 68-74 こちら

 2014/15年に東京西部の多摩森林か学園で同所的なテンとタヌキの食性を糞分析により調べた。テンは一年中、果実に依存的で季節変化は不明瞭だった。タヌキはテンほどは果実に依存的でなく、春には哺乳類、夏と冬には昆虫をよく利用し、種子は一年中糞から出現した。テンはサルナシやキブシなど種子の小さな果実をよく食べたが、タヌキはギンナンやカキノキなど大きな種子をもつ果実も食べた。テンは林縁に生育する植物の果実をよく食べたが、タヌキは林内に生育する植物の果実をよく食べた。

 この論文のミソは同じ場所に住むテンとタヌキを比較したことにあります。テンとタヌキの食べ物は同じか?たぶん違うだろうが、どう違うのだろう?それはなぜ?という問いに答えを得ました。もうひとつのポイントは、これまで動物研究者のこの種の研究では果実の名前のリストがあるだけでしたが、今回、その果実をつける植物がどういう場所に生えているかということに着目して整理すると、非常にはっきりとテンは林縁植物をタヌキは林床植物をよく食べるということがわかりました。また残飯などの人工物を食べるのはタヌキだけだということもわかりました。





2017.10.02
>Comparison of the food habits of the sika deer (Cervus nippon), Japanese serow (Capricornis crispus), and wild boar (Sus scrofa), sympatric herbivorous mammals from Mt. Asama, central Japan
浅間山のシカ、カモシカ、イノシシの食性比較
Yoshitomo Endo, Hayato Takada, and Seiki Takatsuki

Mammal Study, 42: 131-140 (2017)
遠藤嘉甫、髙田隼人、高槻成紀

糞分析法により浅間山のシカ、カモシカ、イノシシの食性を比較した。3種のうち、イノシシははっきり違い、地下部や支持組織が多かった。シカはササが特徴的でカモシカはシカに近かったが、イネ科が少なく双子葉植物の葉が多かった。おそらく消化生理の違いによると思われるが、糞中の植物片のサイズ分布はシカとカモシカでは微細なものが多かったが、イノシシでは大きめであった。これは日本の同所的草食獣の食性を比較した最初の論文である。

2017.4.25
「Mammal Study」が産声をあげた頃
高槻成紀

「哺乳類科学」57: 135-138

日本哺乳類学会はMammal Studyという英文誌を刊行していますが、これは20年前にスタートしました。この雑誌は今や国際誌となり、質も向上し、たくさんの論文が世界中から寄せられ、きびしい査読を受けるようになりましたが、かつてはそうではありませんでした。最初のときに私が編集委員長をしたのですが、今年20周年を迎えるので、現在の編集委員長が当時の思い出などを書いてほしいということで依頼がありました。思い出しながら当時のようすを書くとともに、古い文献などもひもといて、学会の先人の志なども紹介しました。
 その一例です。
「哺乳類科学」の創刊号をひもとくと,九州大学の平岩馨邦先生が若手研究者に次のようなことばを贈っておられる(平岩 1961)。曰く「”Keep the fire burning”私たちのともした。いと小さい火を若いみなさんで、もりたてて大きく燃やして頂きたいものである」.
 最後につぎのようにまとめました。
 内田先生が「老いも若きも一致協力して邁進しようではありませんか」と呼びかけられたことが、こうした時代の流れとともに学会の実質的な体力を蓄えることにつながったと思う。ネズミの研究が主体であった我が国の哺乳類学は中型、大型の哺乳類も対象とするようになり、生態学や形態学、遺伝学などもカバーするようになってバランスもよくなってきたし、野生動物管理などの面も力をつけてきた(高槻 2008)。こうして学会という木が育つための土壌に栄養が蓄積し、水も光も得て力強く育ってきた。これにはよきリーダー、コミュニケーション手段の進歩、制度の改革なども大いに力になったが、しかし私は「このおもしろい哺乳類学を進める学会をよいものにしたい」という会員の情熱がそれを実現したのだと思う。まさに半世紀以上前に平岩先生が点(とも)された「いと小さい火」が大きな炎に育ったとみてよいだろう。
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