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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例 −

2019-08-27 16:03:19 | イベント

2019.8.27
丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例 −
保全生態学研究、24: 209-220

 
丹沢山地は1970年代からシカが増加し、その後シカの強い採食圧によって植生が強い影響を受けて貧弱化し、表土流失も見られる。このような状況にあるシカの食性を2018年の2月から12月まで、東丹沢(塔が岳とその南)と西丹沢(檜洞丸(ひのきぼらまる)とその南の中川)、西部の切通峠においてそれぞれ高地と中腹(ただし西では高地のみ)において糞を採集し、ポイント枠法で分析し、次のような結果を得た。1)全体に双子葉植物の葉が少なく、繊維、稈が多かった。2)季節的には繊維が冬を中心に多いが、場所によっては夏にも多かった。3)標高比較では高地でイネ科が多かった。4)場所比較では東丹沢ではササが多い傾向があった。5)シカが落葉を食べている状況証拠はあるが、糞中には微量しか検出されず、その理由は不明である。これらの結果はほかのシカ生息地と比較して、シカの食物中に葉が少なく、繊維が多く、当地のシカが劣悪な食糧事情にあることを示唆する。このことから、丹沢山地の森林生態系のより良い管理のためには、シカ集団の栄養状態、妊娠率、また植生、とくにササの推移などをモニタリングすることが重要であることを指摘した。こちら

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アズマモグラ 完成

2019-08-02 11:16:17 | 標本
作り始めて1週間で完成しました。ネコにくわえられた時に背骨と肋骨が破損したようで、その点はやむを得ませんが、まずまずの仕上がりです。


アズマモグラ

これを見ると前足がいかによく発達しているかがわかります。それに比べると後足は貧弱です。それに頭が意外と細長いこともわかります。


右前足(手のひら側)


頭部


左前肢


上腕骨


写真中央に見える上がU字型にくびれた骨が上腕骨で、極めて特殊化しています。ここに力強い筋肉がつきます。



尺骨


肘から先の骨が尺骨で、これも普通の哺乳類にはない複雑さです。


前から


改めて前から眺めると前肢が大きく、モグラはまさに「掘る動物」だということが納得されます。

コメント (1)
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