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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

明田富士山

2013-06-19 23:32:06 | 秋田の地理
秋田駅から南へ500メートルほどの所に「明田(みょうでん)地下道」というアンダーパスがある。かつては「明田踏切」があった。
そこから少し離れた南東側一帯が「東通明田」という町名。かつては「楢山字明田」だったそうだ。「明田」は小字に過ぎないはずだが、秋田市民には浸透している地名。

東通明田の南端は太平川が流れていて、対岸には一つ森公園の山や金照寺山がそびえる。
秋田駅から太平川までは、ずっと平らで高低差のない土地が続くのだけど、一つ森公園に続くかのような丘が1つだけ存在する。
それが「明田富士山」。標高35メートルで日本山岳会により「日本一低い富士山」として認定されている。秋田駅から直線で1キロの所に、富士山があるのです!
※「明田富士山」の名称は地図には記載されていない。
※ちなみに、秋田県南秋田郡大潟村には標高0メートルの「大潟富士」があるけれど、それは人工の築山。

地図サイトには明田富士山の所に「楢山明田近隣公園」と記載されているが、秋田市建設部公園課の都市公園のリストには載っていない。公園の指定を解除されたのだろうか?(「楢山明田“街区”公園」は東通館ノ越にある別モノ)
てっぺんの眺めがなかなかいいと話には聞いていたが、登ったことはなかった。近くを通ったので、“初登頂”に挑んだ。

明田富士山周辺は、道が狭い。特に西~南側は車がわりと通るので注意。
“登山口”は1つだけ。秋田駅から行くと裏側に当たる、太平川沿いの車が入れない道にあった。(才八橋から上流側に進んだ所)
隣は民家。立派な門をくぐって登る
お寺みたいなの(法華堂)の横を通り、お稲荷さん(明田稲荷大明神)の鳥居をくぐり、木々に囲まれた狭い階段で上へ進む。
階段はけっこう急だったり足元が悪い箇所がある
「山登り」とまではいかないけれど、千秋公園(標高約40メートル)を上るよりは大変。

途中に平坦な場所が2箇所あって、ベンチが置かれたり、秋田市の公園にあるのと同じ注意書きがあったりする。
で、あっけなく、
登頂成功!
てっぺんはそれなりに広い縦長の土地。奥に「富士山大権現」が祀られている。
奥から振り返る
地面には凹凸があるので、走り回ったりはしないほうがよさそう。
「日本一低い富士山」の標柱
外側には木があるが、そのすき間から北~西側の風景、すなわち秋田市街地を見渡すことができる。
この辺りに他に高い山や建物はないので、新鮮な眺めだ。
西側。左奥が大森山。新屋の美大や仁井田の南高校も見える

北西側。秋田市中心部
クレーンは建設中の中通総合病院、山王の気象台や県庁第二庁舎、海沿いの風力発電の風車が見える。(写真には写っていないが、ポートタワーセリオンや男鹿半島の山の一部も見えた)

北側。東通の家並みと秋田駅や駅前のビル、その向こうに平和公園(千秋公園はビル群に隠れて見えない)
ここからだと、秋田市の都会的な部分を見ることができる。山のふもとは低い住宅で、奥に高いビルがあってその対比がおもしろい。
格子状に無機質に住宅が連なるだけのアルヴェ14階のケチな展望コーナーより、ずっと見応えがある。

明田富士山の西側のふもとには、線路が走っている。すぐ近くを奥羽本線・秋田新幹線・秋田車両センターへの回送線、少し離れた所には羽越本線。
家並みの間に途切れ途切れだけど、けっこう列車の姿を見ることができた。羽越本線のほうも、太平川の橋を渡るところが見えるようだ。望遠レンズを使えば、街並みを縫って走る列車を撮影できる

山のふもと太平川の才八橋と楢山大元町地下道の上を通るE6系

ちなみに、以前下から撮影した、ここを通るE3系。
再掲
これがE6系だと、
鼻先だけで道幅ギリギリ

秋田駅に入線

帰りもあっという間に下山できた。
登山口に明田町内会による説明板があった
鎌倉時代辺りに「富士太郎」という豪族の館(城)があり、当時から富士権現を祀っていたので、富士山の名が付いたらしい。富士大権現は「木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)」だから、富士山本宮浅間大社と同じ、本格派だ。7月1日がお祭りだそうで、もうすぐ。

登山口の反対側(秋田駅側)の道路沿いに「富士山登口案内図」があった。
周辺に神社や墓地がいろいろある
「楢山尋常小学校跡地」とある。明治16年に「楢山」と「築地」の学校が統合し、現在に続く「築山(ちくざん)小学校」ができたそうだが、その楢山側の学校がここにあったのだろうか。
明田郵便局も近くにあるし、昔はここが明田の中心地だったのかもしれない。

秋田市中心部において新鮮な体験ができた明田富士山登山だったけれど、秋田市の公園でおなじみの擬木の標柱が見当たらなかったし、階段もさほど手入れされていない感じ。やはり都市公園ではないのだろうか。とすれば、地元の皆さんが管理しているのかもしれないが、大変なご苦労だろう。


駐車場はたぶんない。山の中には照明はなく、ひと気もない(日曜日だったけど登山中に誰とも会わなかった)し、上記の通り足元の悪いところもあるのは注意。
登山口までのアクセス
・秋田駅東口から約1.5キロ。明田郵便局を目標にして、山のふもとを反対側へ回りこむ(右=西回りでも左=東回りでも距離は大して違わないが、川に突き当たったら左折して川沿いに進む西回りのほうが分かりやすいかも)
・秋田駅西口から築地経由桜ガ丘線または築地経由ノースアジア大学線 「才八橋」下車、徒歩200メートル(橋を渡って右折し川沿いに進む)
・秋田駅東口から桜ガ丘線またはノースアジア大学線/西口から明田経由桜ガ丘線 いずれも「明田郵便局前」下車、徒歩500メートル

【23日追記】タイミング良く、6月22日に本家富士山がユネスコの世界文化遺産に認定された。
それを伝える23日付秋田魁新報社会面には「県内「日本一低い富士山」知名度アップに期待 関係者らから喜びの声」という記事も掲載された。
「静岡県富士市の富士商工会議所が1988年に「日本一低い富士山」と認定している。」そうで、「秋田市民有志でつくる明田富士山愛護会」という組織があるとのことなので、その会員が維持管理しているのだろうか。
記事では大潟富士にもついても少し触れている。「95年に造成された」とのこと。

【7月2日追記】7月2日更新秋田経済新聞「秋田の標高35メートルの「富士山」で祭事-地域の安全願う(http://akita.keizai.biz/headline/1775/)」によれば、
「7月1日、地域の安全などを願う「富士大権現・稲荷大明神祭典」が開かれた。」「かつて東通明田地区の住民が開いていた寄り合い「一日講」を引き継ぎ、現在、周辺地域住民らでつくる明田富士山愛護会が1987(昭和62)年から開く祭典。」
「「愛知県内に標高31メートルの『富士』もある」(静岡県庁の担当者)」

※桜が咲いた様子は、この記事中ほどに少々

【2015年7月1日】2年に1度、本家富士山の山開きに合わせた7月1日に、頂上で安全祈願の神事が行われるそうだ。2015年に開催。

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4 コメント

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隠れた名所 (FMEN)
2013-06-19 23:43:28
隠れた名所ですね。
「富士山登頂成功!」なる話ネタになりそうです。
街から近い山といえば仙台の東北大学のあたり、福島の信夫山とかですが秋田にもあり、いい感じの景色です。
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ちょうどいい (taic02)
2013-06-20 00:26:15
単なる丘と言えばそれまでですが、地域の歴史にもつながる場所です。
昔はもっと大きかった(広かった)らしいですが、江戸~明治に削られたそうです。

高さ、見える街並みなど秋田市中心部にちょうどいいスケールの場所だと思います。
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Unknown (Unknown)
2013-06-20 18:03:56
冬季の天気予報で、”雪崩注意報が大潟村を除く全県にでています”、と放送される度、干拓地で平な所で雪崩が起こるわけがなく無意味なコメントと思っていましたが、築山程度の山はあったんですね。因みに富士太郎という豪族はいつ頃の方だったんですかね。千秋公園は三浦氏という豪族の屋形があり、佐竹氏転封の際に、川尻に移り川尻氏として総社神社の神官を代々勤めたというのは読んだことがあります。
返信する
大潟富士 (taic02)
2013-06-20 20:39:29
大潟富士の地面からの高さは「3.776メートル(本家富士山の1000分の1)」足らずですが、大潟村では貴重な山というわけでしょう。
自然の山ではないので、地形図には掲載されていませんが。

明田富士山は説明によれば鎌倉時代までさかのぼれそうですが、どうなんでしょうか。
江戸時代より前の秋田はあまり知る機会がないですが、ちゃんと人が暮らしていて、今に残してくれたものがあるのだと考えさせられます。
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