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美大認可されず

2012-11-02 19:42:07 | 秋田のいろいろ
ポスターを紹介していた、秋田市新屋にある秋田公立美術工芸短期大学(美短)が来年度から4年制化されて「秋田公立美術大学」になるという話。
大学を運営する秋田市が、大学設置(4年制化)を文部科学省に申請中とのことで、滞りなく審査が進んで、そろそろ認可されるかと思っていたら、とんでもない展開になった。

今日、タナカマキコ文部科学大臣が、他の2大学(札幌保健医療大、岡崎女子大)とともに「大学の設置(4年制化)を認めない」とした。
流れとしては、昨日、大学学長などからなる「大学設置・学校法人審議会」が大学設置を「可」とする答申を行い、それを受けて、文科相が今ままでなら認可していたのが、今回はそれを覆してダメとなった。
少なくとも過去30年間ではなかったことであり、これによって、来春の美大開学は不可能となった。

これを受けて、折しも4日に開催予定だった、オープンキャンパスやシンポジウムは中止となった。
また、秋田市では他の2大学とともに、来週、文科省へ抗議というか再考をお願いしに行くそうだ。【3日追記】報道によれば大臣と直接面会して「撤回」を求めるとのこと。


朝日新聞によれば、文科省の浅田和伸・高等教育企画課長が「個別の問題ではなく、大臣の政策的な判断」としているように、美短に問題があって認可されなかったのではない。
他の報道でも、マキコ大臣は、大学そのもののあり方や大学認可制度を根本的に見直したいらしく、当面は新規開学を一切認めない方針とのこと。

また、NHKでは「再来年・平成26年度に大学の開設を予定している学校法人などから申請を受け付ける来年3月までに、審議会の在り方について見直すことにしています。」としている。
つまり、再来年度向けの申請は受け付けると取れる。じゃあ、今年度の3大学だけが認可されないということになる。(来年度以降は申請しても審議が厳しくなって認められない可能性もあるが)
それでは、認められなかった今回の3大学だけが、とんだとばっちりを食らったことになる。
自分の大臣就任前から申請されていたものに対し、周知や猶予期間、あるいは再考して再申請させるなどでもなく、特に不備があったわけでもないのに、無条件で認めないというのは、ひどい。申請した時期が悪かったというのか?

たしかに、制度がどうこうというのは、見直しが必要かもしれない。でも、今の大学の制度で受験し、大学に入ろうとしている人はどうなるのか? つまり、3つの大学を希望する来春の受験生。大学入試センター試験の出願も終わり、今は受験勉強も追い込みの時期だろう。
秋田の場合、経済的事情などにより「浪人はできない」「国公立でないといけない」「秋田にある大学でないといけない」という理由で美大を希望する受験生も少なくないはず。今回の件は、そうした人たちにとって、入試間際の今となっての青天の霹靂であり、今後に影響を与える恐れがある。
マキコ大臣はそんな人たちの将来を何とも思っていないのか。予定は未定であって、認可前の大学なんかを志望する人が悪いということか?


各大学などへの影響もある。
こうなってしまっては、3大学では、来春入学者は引き続き短大としての学生募集を行うかと思う。
既に4大としての周知を行なっているわけで、今から短大に変更して募集しても果たして受験生・入学者が集まるだろうか。学生が減って、各短大の来年度以降の経営にも影響を与えてしまうかもしれない。

4年制化を担当する秋田市の大学設置準備室は大慌てだろう。
一方、以前も書いたように、美短そのものは、現在の短大運営に集中しているようで、直接的に4年制化には関っていなさそうなので、どうなのかは分からないが。(精神的動揺は広がっていると思う)
それなのに、msn産経ニュースによれば共同通信では、美短の事務局長の「今初めて聞いた。びっくりした」というコメントを掲載している。直接の当事者ではないのだから、当然のコメントでしょ。聞くのなら大学設置準備室の上部である企画財政部長じゃないの?
そして大学設置準備室の人(おそらく管理職ではなく一般職員)は「今は情報を整理中。コメントできない」としているが、それもまあそうだ。あまり意味のないインタビューではないでしょうか。

地盤である新屋にある美短の4年制化を公約に掲げて当選した、ホヅミ市長は、来春で任期が終わる(再出馬するかどうかは未表明)けれど、そっちへの影響もあるかもしれない。



先週、新屋に行った時に、美短の4年制化に向けた増改築工事がどうなっているか覗いてみた。
大駐車場の一部などに新たな鉄骨造(かな?)の建物が造られており、骨組みができていた。現在の短大校舎を設計したのと同じ会社が設計を行ったようで、どんなデザインになるのかと思いながら、写真は撮らなかったが、工事はどうなるのだろう。
正面側は特に工事は行われない
前も書いたけれど、秋田市の美短4年制の話は、市長当選後どんどん進んでしまった印象がある。4年制化ありきで進んだような。
それから、(美短に限らないこととして)大学設置の手続きはよく知らないが、開学1年前に申請をして、入試が始まる直前に認可されるというのも、余裕がない。それこそ「認可を受けることありき」で学生募集がされているのはヘン。それがマキコ大臣が疑問視する馴れ合いのようなものなのかもしれないが、開学のもっと前(1年以上前)に申請・認可するようにしていれば、こんな事態にはならなかったはずだ。【5日補足】大学設置の申請は、開学の1年前にしかできない決まりになっていた。したがって、どうしても審査と校舎建設や学生募集の宣伝が並行で行われてしまうことになる。(記事末尾のリンク先の記事も参照)
この表示板も間もなく見納めかと思ったのだが…

それにしても、「近いうち」に衆議院の解散が行われることになっていたはず。
そうすれば、衆議院議員であるマキコさんはどうなるのか分からないのに、大学の改革なんでできるもんなんでしょうかね… もっと優先してやるべきことがあるのではないでしょうかね…
ほんとに政治家って自分勝手な人たち。


とにかく、受験生への影響ができるだけ軽微に済むよう、何とかしてほしい。
個人的には、若い時に多少回り道をしてもどうってことないと今なら言える。でも、当人やその家族にとっては今は大きなショックだろうし、思い悩んでしまっているかもしれないのだから。

【3日追記】報道からの補足。
・従来は申請段階において、随時文科省からのフォローを受けながら認可にこぎつけていた。今回の3大学もそうだったようだが、それなのに覆されるとは、ほんとうに理不尽。
・大臣の判断を受けて、「文科省の職員は「青天のへきれき」と驚き「3大学は巡り合わせが悪かったとしか説明しようがない」と、ため息をつく(魁2面)」だそうだが、それは受験生や国民のセリフだよ。
・美大では3年次への編入も実施される予定だったそうだ。現・美短2年で編入を希望していた学生もいるそうで、そうした人は就職や他大学への編入などを検討しないといけなくなった。(河北新報によれば編入は定員10名。今年1月時点では現2年次のうち32名が編入を希望)
・文科省高等教育局長の板東久美子氏は、秋田県副知事をしていたことがあった(1998~2000年。女性ということもあってか結構知名度・人気があった)。ホヅミ市長が板東局長に電話して「田中大臣の意向」との説明を受けたとのこと。


この記事で、もうちょっと簡潔に考えをまとめてみました。

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2 コメント

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ニュース見ました (りお)
2012-11-03 11:52:00
インターネット上では「田中氏が正しい。田舎の低ランク大学をこれ以上増やしてどうする」という意見が多いようですね。
確かに大学の質を考えるなら仕方がないとも思えますが、それなら私立で学費を納めさえすれば卒業できると言われているような学校の見直しをしてくれればいいのに…と思います。
少なくとも、美短は秋田県内の大学・短大の中でも特に地域貢献が大きく、地元を大事にしている学校だと思っていましたし、好感度も高く、4年制化を応援していたので残念です。
「あなたの所は○○が良くないので、改めて出直してきてください」と言われるなら諦めもつくでしょうけど、「大学化そのものに反対!」というのは、なんとも大人気のないことだなぁと思ってしまいますね。
お役所って、切るべきを切らず、切らなくても良い所ばかり槍玉に挙げますよね。本当、他にも問題はあるでしょうに…。
呆れてニュースを見ておりました。
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3大学だけ (taic02)
2012-11-03 14:08:00
大臣は「“今の”(4年制)大学のあり方」に疑問を呈しているのに、なんで「“これから”4年制大学になる」3大学だけがもろに影響を被らないとならないのかが納得できません。
既に開学している大学は「既得権」でスルーされるのでしょうか。
文科省(文科相)による、みせしめ・いじめのように感じてしまいます。

東北地方で美術系を学べる大学は、山形の私大と、定員が限られた各県の教育学部くらいですから、秋田に美大ができても大学の乱立とはいえないと思います。そういう地域や専門分野のバランスを考慮をしてくれないのが残念です。

国の役所って、頼りになるようで肝心の所で裏切るというか… 文科省の職員も大臣に振り回されているんでしょうけど。それにしても、政治家にはほとほと呆れました。
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