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変な所が光る信号機

2010-06-04 18:07:32 | 秋田のいろいろ
秋田市外旭川地区の県道41号線を西から東へ進む時、気になっていたモノがあった。信号機なのだが、ヘンな所が光るのだ。
それは比較的最近開通した、田んぼの中を突っ切る区間の2つの交差点に1台ずつだけ設置されている。まずは、
中央卸売市場近く
左奥の正面の車両用信号機がそれだが、
正面からは一見、ごく普通の縦型信号機
横から見ると、
左側がその信号機
この交差点は、すべてLED(発光ダイオード)式の信号機だが、初期の厚いボディ。しかし、この1台だけ新しい薄型ボディで、メーカーも異なるようだが、問題はそこではない。
フード(庇)それぞれにケーブルが配線されているのがお分かりだろうか。
下から見るとよく分かる
配線はフードの先端近くにつながっており、そこが信号機本体と連動して同じ色で光っているのだ!!
フードのカーブに沿って1列にLEDが並んでいるようだ
外側に向かって黒いゴムのようなものが付いていて、正面から見た時は庇が光っているのは分かりにくい。(夜間などは分からないけれど)

今度は1つ東側、外旭川中学校そばの交差点。
右手前の信号機
この交差点もすべて厚いLED式だが、やはりこの1台だけは別メーカーの薄型でフードが光る。
正面から
最初の交差点のものとは違い、フードが光っているのが正面からよく分かる。そしてフード自体が一般的な円弧状でなく、角張っている。
家の屋根のように直線的なフード
こちらは配線が目立たず、LEDが2列ついていて、外側にも向いている。そのため「ハ」の字形に光るのが正面からも分かる。
棒状のLED
コンサートの観客が振るような、ペンライト形のLEDだ。
信号機本体の銘板によれば、2007年12月製造とのことだが、西側のものより大がかりな改造なので、西側の信号機の改良版だろうか。

近接した交差点に1台ずつだけ設置され、他では見たことがないので、何らかの試験をしていると思われる。「フードが光る信号機」とは奇抜だが、秋田県警は何を望んでこんなことをしてるんだろう?
西を向いているから、西日が直射した場合の視認性確保が目的なのか? とか考えていたが決め手がなく、「謎の信号機」だった。
ところが、それが解決した。


「信号電材」という信号機メーカーが福岡にある。
日本には老舗大手信号機メーカーが3社あり、同社はもともとそれら大手の下請け的な企業だったが、自社ブランドの製品も製造し、それにきめ細かな改良を重ね、メーカーとしての地位を確立したようだ。最近は秋田県警とも大手3社にひけを取らないほど取引があるようだ。上記の謎の信号機も同社製。

その信号電材の公式サイトに「社長日記」という、同社社長のブログが開設されており、2008年1月26日「東北行き…」という記事で、この外旭川の信号が取り上げられており、疑問が解決した。
引用させてもらうと
秋田県警さんから依頼を受けている物がある。。

吹雪いた時の雪が信号灯器のレンズに着雪して
どれが点いているのか解らなくなって事故に遭ってしまうとの事

雪が舞って下から吹き上げてくるので
フードがあっても信号灯のレンズに着雪してしまうらしい…

  ※注・「レンズ」とは信号機の3色に光る、円形部分のこと

特殊な信号灯の依頼を受けて1年前ぐらいから試験設置したりしている。
この間、その改良バージョンを設置したら良い反応だった。。

  ※記事中に東側、中学校そばの交差点の信号機の写真が掲載されていた。

なるほど。当ブログでも冬に紹介したが、風が強くて吹雪く秋田では、フードがあっても信号機表面(レンズ)に雪が付着し、見えにくくなる場合がある。電球式と異なり、発熱が少ないLED式ではそれが顕著。
こんな感じ
雪が「積もらない(積雪しない)」ためには本体を縦型にすることで効果があるが、雪が「付着しない(着雪しない)」ためには、フードの長短などしか対策がない(秋田県警では一度短くしたフードを再度長くしている)と思っていたが、こんな斬新で積極的な対策が、しかも保守的そうな秋田県で考えられていたとは!

秋田市中心部に近く、田んぼの中で地吹雪が発生しやすいこの地点が実験箇所に選ばれたのだろう。おそらく、西側の交差点のものが試作第1弾、東側のものが改良バージョンということなのだろう。
昨冬、全国紙の投書欄に「LED化されたら雪が融けなくて見づらくて危険だ」という秋田県在住の人(僕じゃないですよ)からの投書が載ったけど、こんな積極的な対策をやってるんなら、秋田県警も教えてくれればいいのに…

でも、もう3冬が過ぎたようだが、結果はまだ出ないのだろうか。
仮に実用化するとしても、特注のフード(改良型の場合)や余分なLEDとその配線で費用がかかり増しになるだろう。そんな費用があったら、各所の老朽化した信号機を交換する方が先だとも思う。それから警察庁の認可みたいなのはいらないのかな?
そして上の写真のような矢印信号への着雪は、この方法では解決できないという課題が残る。

とはいえ、繰り返しになるが、単なる“日除け”であるフードを光らせてしまうとは、なんとも奇抜なアイデアだ。
付いた雪を落とそうとか融かそうとせずにそのままにし、違うところを光らせればいいじゃないという考えなのだと思うが、「コロンブスの卵」的な発想じゃないだろうか。今後の展開に期待。

※別メーカーでは、フードを含めた凹凸がない、“板状”の信号機が製品化されており、一部の県で導入され始めたそうだ。石川県警では、積雪対策として試験導入したそう(5月30日付読売新聞)だが、秋田に設置したらべったり着雪して真っ白になるかな。
【2013年12月11日追記】その後、2013年時点では、フードが光るタイプの信号機は増えておらず、着雪対策の決定打とはならなかったようだ。代わりに、このような対策が取られていて、多くの県で本格的に採用されつつある。(←2013年以前の対策についてもリンクがあります)

【2023年10月23日追記・さらにその後】
冒頭のタイプは、2023年4月時点でもそのまま使われている模様。
次に紹介したペンライト風タイプは、当初の場所から取り外され(Googleマップストリートビューによれば2012年10月から2015年8月の間に)、千秋トンネル東側の交差点へ移設された。2023年時点でも稼働中。
本格採用には至らなかったことになるが、こういう試験的なものは短命に終わることが多い中、長持ちはしている。

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3 コメント

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Unknown (hgvh)
2023-10-23 10:00:35
面白い
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ありがとうございます (taic02)
2023-10-23 17:59:22
その後を追記していませんでした。
結局、本格採用には至らず、最初のタイプは撤去。
後のペンライトタイプのものは他に移設されて、2023年時点でも稼働していますが、それが唯一で終わりそうです。
返信する
訂正 (taic02)
2023-10-23 20:26:44
最初のタイプは撤去ではなく、2023年4月時点でも、当初の場所で引き続き使われているようです。
いずれにせよ、新たな増設はありません。
返信する

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