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秋田県が電気バス開発へ

2011-01-25 21:07:33 | 秋田のいろいろ
【参加するメーカーと運行ルートについて26日に新たな情報があったので、追記しました。】
今朝の各報道によれば、24日の秋田県知事の記者会見において、秋田県が電気で動くバスの開発を行い、秋田市内で実証実験することを検討していることが明らかになった。
まずは2011年度当初予算案に調査などの経費約2600万円を盛り込み、秋田県産業技術総合研究センターと関心のある県内外の企業が参加して開発するらしい。普通自動車と異なり、大量の電力と大容量バッテリーを必要とするなど、バスならではの技術を開発するようだ。
県内産業の技術向上、そして秋田県の産業として確立して雇用創出につなげるとともに、市街地の活性化や秋田を環境先進地としてPRする狙いもあるみたいだ。

魁によれば「11年度は約20人乗りの中型バスを購入し(それを改造するための設計を行う)」とある。バスの大型・中型・小型というのは、立場によって解釈が異なるのだが、20人乗りならバス会社の区分では「小型バス」の範疇に入る車両だろう。「日野ポンチョ」あたりか?
 (再掲)鳥取市の循環バスの「ポンチョ」(ディーゼル車。立席を含めて30人程度乗れるタイプ)
できあがった電気バスは、実際に秋田市中心部を運行する計画。それは魁によれば「試験運行は12年度以降」だそうだが、ABSでは「2年後の2013年度の完成を目指す」となっている。
試験を2012年の1年で終えて、2013年度にはできあがりってことなのだろうか。

試験運行する場所は、魁と朝日新聞秋田版では「秋田市の中心市街地で実施」、読売新聞秋田版では「秋田市の再開発エリアを巡回する」となっている。
msn産経ニュースや産経新聞が出典のyahooの記事では「秋田市の中央市街地に」となっている。「中“央”市街地」とは初めて聞いたが、誤植でしょうね。


この電気バスについて、ちょっと書いてみます。
●電気バス? 電動バス?
まずは、今回の報道におけるこの電気で動くバスの呼び名。
報道機関によって「電気バス」派と「電動バス」派(「電動式バス」もある)に二分されている。会見録を見ればどちらが“正解”か分かるはずだが、まだ公開されていない。
でも、一般的に現在、電気で動く普通自動車のことは「電気自動車」の呼び名でほぼ統一されていて、「電動自動車」とは言わないだろう。それにのっとれば、「電気バス」の方がふさわしい気がする。
それに、圧縮した天然ガス(CNG)で動くバスは「CNGバス」、木炭で動くバスは「木炭バス」と言うんだから、電気で動くバスはやっぱり「電気バス」でしょ。
電気自動車を「EV(Electric Vehicle=電動輸送機器)」と呼ぶこともあるので、「EVバス」という呼び方もされている。
※当記事では原則として「電気バス」とします。

【26日追記】県のサイトに会見録がアップされた。
それによれば、知事は「電動バス」と言っていた。それを受けたのか、会見録に県秘書課が補足する際も「電動バス」を使っている。
一方で、知事は(電気で動く車両の総称として)「電気自動車」とも言っている。

●先を越されない?
各記事にある知事のコメントを見ると、電気バスというもの自体が、現在ではまったく存在せず、秋田でゼロから開発しようとしているようにも受け取れなくもない。
しかし、全国的には複数の組織で開発が行われ、既に試験運行もされている。ネットで「EVバス 運行」等で検索したこところ、次のような例があった。
・北陸電力による富山市の循環バス
前に少し触れたが、昨年2月の1か月間、日野ポンチョをEV化した循環バスが運行された。

・豊田通商による青森県七戸町のコミュニティバス
新幹線開業に合わせて、昨年12月から運行。「日野リエッセ(25人乗り)」を改造したもので、まずは今年3月まで運行し、寒冷時のデータ収集中。

・三菱重工業と京都市による「EVバス実証実験」、「次世代EV京都プロジェクト」
来月、市民などを対象に京都市内でモニター乗車会を行う予定。使用される車両は、65人乗り大型ノンステップバスで、三菱ふそうトラック・バス(旧三菱自動車)製の路線バス車両をベースにしているようだ。2012年度に「走行実験,電池交換実験の 実施等 EVバスの実用化を目指す」としている。

・いすゞ自動車・神奈川県・慶応大学によるEVバス試作車
今月19日、試作車(まだ製造途中)が初めて報道公開された。5年後をめどに市場投入するつもりのようだ。既存のバスの改造ではなく、車内をフルフラットにするなど、新機軸も盛り込んでいる。大型バスサイズくらいか。
神奈川では、産学官の開発する側だけでなく、バス会社も含めた「かながわ次世代電気バス開発・普及検討会」を立ち上げ、取り組んでいる。

・早稲田大学・昭和飛行機工業による非接触給電タイプ
日野ポンチョを改造したもので、昨年、埼玉県本庄市と熊谷市で試験運行された。ケーブルをつながずに充電が可能。
※その後、長野市で営業運行を行った。この記事後半参照。
以上のように、実際に走る段階になっており、量産化も遠くないように見える。


普通自動車のハイブリッドシステムでも、トヨタやホンダなど方式がいくつもあるのだし、より良いシステムを研究開発する意義はあるだろう。
でも、この事業を否定するつもりはないのだけど、先進事例があることを知ってしまうと心配になる。環境がもてはやされる時代であっても、バスの市場規模はそれほど大きくないはずだし。
“勝算”があればいいのだが、これから取り組み始めるのでは遅れてしまわないだろうか。今から秋田県がおカネを出して開発するほどの価値があるのだろうか。

●どのメーカーと?
魁によれば、この秋田県の計画に「都内バスメーカー(中略)などが参加の意向を示している」そうだ。
日本にあるバスメーカーは4社。マイクロバスを含めれば計6社(のはず)。
「都内バスメーカー」を「東京都内に本社がある企業」と解釈すれば、限定される。いすゞ自動車は東京に本社があるが、上記のとおり神奈川で完成間近だから、秋田と二股かけることはなさそう。
そうすれば、おのずとそのメーカーが分かってしまうね。

【26日追記】と思わせぶりなこと書いてしまいましたが見事ハズレのようで、26日朝にアップされた河北新報のサイトによれば「協力企業はいすゞ自動車が有力。」とのこと。
ということは、神奈川県の事業と並行してやるってこと? 車種は「ポンチョ」ではなく、「ジャーニー」あたり?


以下は、試験運行についての疑問。
まだ車両ができてないのだから、不確定要素ばかりだと思うが、実車ができて秋田市中心市街地を走るとなれば、いろいろ気になる点があるので、そこをクリアしてほしい。
●タウンビークルとかいうのは?
秋田市中心市街地を走る乗り物といえば、中通一丁目の再開発完成後に運行が計画されている「仲小路タウンビークル」を思い出した。※以前の記事
たしか「バッテリー駆動の電気式バス」を使うことになっていた。
車両といい、運行範囲といい、県の計画とよく似ている。

だが、タウンビークルは秋田市主導の事業。
秋田市ではだいぶ前からタウンビークルの話を出しているので、てっきり電気バスが既に実用段階にあることを前提にしているのだと思っていたが、秋田県の話ではこれから開発するという。市ではまだ存在しない車両を仲小路に走らせようとしているのか?

そして、タウンビークルは駐車場の収益を運行経費に充て、無料運行することになっている。
県が開発するバスの試験運行がどのくらいの期間で、運賃や運行経費をどうするのか次第だが、両者で調整しないと、利用者を混乱させ、どちらの事業もうまくいかない事態になりそう。
タウンビークルの車両として、県が開発したバスを使うのなら話はいくぶん単純になりそうだが、本来そういう目的ではないし…

●できるかもしれない100円バスはどうなる?
上記のタウンビークルの話が出た時、「無料で運行するのは財源が不安定であり、既存交通機関の経営を圧迫する」と言った人がいた。
それは秋田商工会議所の会頭であり、バス会社の社長。(この発言はバス会社社長としてのもので、会頭としてはノーコメントだった)

その際、「会社として100円バスはできるかもしれない」ともおっしゃったそうだ。(循環運行するのかどうかなど、具体的な点は不明)
2010年3月1日のことだったのだが、その後、どうなったのでしょうか。
また、2009年に作られた「秋田市公共交通政策ビジョン」においても、運賃定額エリアの導入や循環バスの運行を検討することが盛り込まれているはず。

タウンビークルの項目の繰り返しになるが、これらとも県の電気バスの試験運行と類似点が多そうだ。混乱を招き、互いに足を引っ張ることにならないだろうか。
バス会社がいつまで経ってもやる気がなさそうだから、この機会に県にやってもらうということもアリだったりして。


試験運行については、魁に「今後バス事業者との協議を進める」とある。民間バス会社に運行を委託するのだろう。
同規模やそれ以下の都市では、市街地循環バスや100円バスが普通に運行されているのに、どちらも実施されていない秋田市。
運行エリアを中心市街地に限定せず、もう少し広げて、既存の路線バスがないエリアや病院・店舗を巡るバスこそほしいようにも思う(だいぶ前に妄想したように)が、どうなるのか。
【26日追記】上でも触れた26日の河北の記事では「路線はJR秋田駅周辺循環や、県庁、秋田市役所がある山王地区を通るコースを想定する。高齢化で自動車を運転しない世代が増えることを念頭に、将来的には住宅地と市中心部を結ぶ路線も検討する。」とある。
これは路線設定の点では、かなり期待できるかも。バス会社や秋田市がなかなか腰を上げないから、県が動いてくれたのだろうか。
また、太陽光や風力の利用、非接触型充電の可能性なども探るという。本件はトヨタ自動車グループの豊田中央研究所出身の秋田県産業技術総合研究センター所長の発案だという。
1日遅れだが、河北新報が深く掘り下げてくれて新たな情報が分かった。秋田の他のマスコミ各社も、もっと踏み込んで伝えてほしいものです。

追記分を含めた個人的感想としては、
他の事例に先を越されないかという点は素人目には不安(自動車に詳しい職員や大手メーカーがついているようなので、少し安心?)。運行に当たっては秋田市のタウンビークルや既存バス路線との競合・棲み分けが問題になりそう。
だけど、クリーンな乗り物による、市街地の公共交通の充実という点ではおもしろいし、実際に将来的に必要とされるものだと思う。久々に期待が持てる秋田県の事業だと思った。

※続きはこちら

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2 コメント

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Unknown (あんなか)
2011-01-25 22:30:16
私も新聞記事等でえーっ今頃?と思った一人です。
電気バスと言えば黒部ダム辺りにトロリーバスがありますがあれも電気バスの一種ですし。
確かスイスでしたっけ?観光地で化石燃料車を一切排してミニ電気バスを走らせてる様なことを聞いたような。
それよりも管理人様がお書きになられたように循環バスや100円バスを運行して欲しい物です。
そういえば80年代初期に秋田市の交通政策ビジョンとして秋田駅から城東地区を通って御所野を経由するモノレール計画がありましたね。
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導入でなく開発とは (taic02)
2011-01-25 23:04:31
そうですね、現在残るトロリーバスは黒部にある2路線だけです。かつては東京都などにもあったそうですね。法律上はバスでなく鉄道扱いだそうです。
設備維持費用や技術の進歩から、現在はバッテリーを使った電気バスの方が注目され、それを「導入」しようというのなら文句はありません。でも、それを「開発」しようというのには、驚きました。

御所野だけでなく、広小路付近にもモノレール構想があったらしいです。
現在では、路面電車(トラム・LRT)を造るという考えもできますが、街並み、道幅やコストを考えると、実現は厳しそうです。
バス路線を見直す(小型車両によるきめ細かなルートなど)ことこそ、今の秋田市中心部に必要な交通手段だと考えています。
バス会社の経営が厳しいのは分かりますが、中心部で工夫すれば多少は収益が上がるのではないかと思うのですが、やる気がないようで…
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