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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

青森市営バス

2011-11-28 23:30:20 | 津軽のいろいろ
久しぶりの青森の話題は、バスの話。※前回の青森の記事
青森市内の路線バスは、青森市営バスが圧倒的多数。あとは一部で弘南バスとJRバス東北が多少走るほか、下北交通や十和田観光電鉄といった県内他地域の中距離路線が乗り入れる。
現在は「企業局交通部」が経営している青森市営バスは、東北地方にある数少ない公営交通事業者(他は仙台、八戸、廃止された秋田)であり、我が秋田市とほぼ同規模の街において、今なお市営バスを走らせている青森市の状況には興味があった。

青森市営バスの歴史は古く、創設は1926(大正15)年。公営バスとしては東京都交通局に次ぐ歴史があるようだ。※秋田市営バスは1941(昭和16)年発足。
戦後は近隣町村にも路線網を拡大していたが、最近は市外からは撤退。2008年に貸切事業を廃止するなど、縮小傾向の面もある。
しかしながら、今なお市内の路線バスの大部分を担い、平成の大合併で青森市に編入された浪岡地域に新たに路線を開設するなど、市民の足としての役目はしっかりと果たしている。
民間移管と称してとっとと手を引き、合併した雄和町の100円バスを廃止させてしまった(不採算ではあったのだけど)、秋田市とは正反対だ。

今のところ、青森市営バスでは民間移管などの動きはないようだ。ただし、効率化のため一部路線(浪岡方面など)の運行業務を弘南バスへ委託(=市営バスの車両を弘南バス社員が運転)している。
市営のまま外部委託するというのは、市が主体となって経営・運行に責任を持つという意味では、民間に任せきりにするよりもいいのではないだろうか。
秋田市営バスのあり方が検討されていた当時は、まだ民間委託という概念自体が一般的ではなかったこともあると思うが、もし、秋田市営バスもこうなっていたら…と考えてしまう。

新町ですれ違う弘南バスと青森市営バス
青森市内の弘南バスは、黒石や五所川原行きが合わせて毎時2往復くらい運行されている(意外にも本社のある弘前行きはない)。青森駅周辺では、それなりに見かけた(秋田市内を走る羽後交通のバスよりは頻繁)。

青森市営バスは、上の写真のような大型バスが大部分。いすゞ、日野、三菱ふそうの3社製を導入しており、最近は他事業者の中古車も入れている。
中型バスが多い秋田や弘前を見慣れた者としては、迫力がある。広い道幅と相まって、都会的に見える。
青森市役所前の市営バスと弘南バス
上の写真の市営バスには、車体広告があるが、フルラッピングではない。
現在のようにラッピング広告が流行る前から、青森市営バスでは車体広告を行っており、10年以上前にテレビで見たのを記憶している。たしかクリネックスのティッシュペーパーの箱をそのままデザインしたものなどがあり、おそらくシールではなく直にペイントしていたのではないだろうか。
しかし、現在は衰退傾向のようだ。前回触れたように弘前でもあまり見ないし、青森では車体広告は少ないようだ。

中型バス。一般的なものより少し短いタイプか
中型バスや小型バス(日野リエッセ)も多少は見かけた。
大型バスと塗装は同じだが、巨大な文字で「青森市営」と表示されているのが異なる。
大型・中型とも車両正面中央に黄色い市章があるのは、秋田市営バスと同じ。

大型バス
大型バスでは、側面後部窓下に小さめに「青森市営」と表示。これも秋田市営バスと似ている。
よく見ると、「青森市営」の文字は何種類かあるようだ。
「青」の「月」、「営」の上の点に注目

上と文字のバランスが異なる。「森」は「木」でなく「ホ」。そして車体が汚い!
このほか、中型・小型の大きな文字と同じ普通の丸ゴシック体のものもあった。
秋田市営バスでもメーカーや導入時期によって表示に微妙な差があったし、中央交通では「秋田中“宍”交通」に見えるものがあるのと同じことか。


青森市営バスのバス停。これも何種類かあり、見た範囲内で紹介します。
新しそうなバス停
昔ながらの“ダルマ型”バス停の雰囲気を残しながらも、スタイリッシュなデザイン。
頭の丸い部分にバス停名が表示されず、下段の時刻表の上に表示されているのがちょっと珍しい。次のバス停名を表示しているのは親切。

頭の部分は、ここ数年で、事業者名称が企業局交通部→企業局企業部→再び企業局交通部と変遷したので、それに対応するためかシール張り。
シワシワ剥がれかけ
ほとんど市営バスしか走らないのだから、「市営バス」と大きく書かなくてもいいような気もする。

本数の少ないバス停。
これは旧型?
やや背が低い、お店の看板みたいな四角いバス停。安定感はありそう。
上段の名称などの表示部分は、パソコンで作成したものをラミネートして貼っていた。

これは同型でもっと古い?
こちらは文字を直接手書きしているようだ。
農協の名前が変わったためか、バス停名部分は重ね貼り。



青森市営バスの路線は、市の東と西にある東部営業所・西部営業所と中心部を結ぶ路線がメインルートのようだ。
上の写真にある「矢作」停留所から中心部まで、バスに乗ってみた。
時刻表
ここは東部営業所発の路線が通るバス停。
上の写真の時刻表は、始発の5時58分から11時14分までのもので、裏に続きがある。
等間隔ではないが、10分も待たずにバスが来るので、利用しやすい。今の秋田市では、これほどバスが来るエリアなんて、ほとんどなくなってしまった。
時刻表アップ
中央交通と同じ、表計算ソフトで作成したかのような1行に1便のスタイルで、ちょっと見づらい。弘南バスやかつての秋田市営バスのような、1時間ごとに1列を使う形式の方が、量的な配分が分かっていいと思うのだが。
平日と土日が1つの表にまとまって掲載されている。平日のみ運行(=土日運休)の便もけっこうある。
ここを通るバスは、青森駅行きのほか、中心部の「古川」を通り西部方面へ直通するバスもある。西部方面の路線には新青森駅へ行く便もあり、時刻表に新幹線のマークが付いている。


乗車した車両は三菱製大型車でどこかの中古車。座席の布地に何種類かの建物が描かれていたので、それを元に調べると、川崎市交通局からの譲渡車のようだ。
印象は、普通の地方都市の路線バスだったが、利用者が多いと感じた。途中の青森県立中央病院前などからぞろぞろ乗ってきて、ほぼ満席になった。

運賃(青森市営バスでは「料金」と呼ぶそうだ)は、初乗りが130円と安い。
僕は行きは第3セクターの青い森鉄道を利用し、帰りに市営バスに乗った。青い森鉄道の運賃が高いなと思うと同時に、バスならそれ以上取られてしまうかと覚悟していた。
しかし、バス代は思ったより安かった。(乗降区間が同じでないので単純には比較できないが感覚として)
本数も多いし、この運賃ならバスの方が優位だろう。


青森市営バスの回数券は、磁気式のバスカード。利用時間帯限定で割引率が高い「買物カード」もある。
カードは、乗車時はカードリーダーに通さず、整理券を取る方式。整理券にバーコードが印字されていて、降車時に整理券とカードを運賃箱に読み込ませて精算する。


秋田市では今年から始まった70歳以上が100円でバスを利用できる制度は、青森市では「いき・粋乗車証」という名称で既に実施済み。
100円は現金でなく、バスカードで支払うことも可能で、実質的には100円以下で利用できてしまう。回数券などでの支払いは二重の割引になってしまうので、秋田市のように現金払いしかできないことが多いはずだが、珍しい。
また、乗車証所持者には、全線を1か月1500円~1年1万2000円で利用できるフリーパスもある。

そして高齢者だけでなく、2007年からは青森市内在住の小学生以下の子どもは無料で乗車できるそうだ。(市外在住者は従来通り半額)
これこそ、「市民のための市による路線バス」だ。

青森市営バスの経営状態などは分からないし、青森市民としての立場では問題点もあるかもしれない(例えば100円バスがあればいいとか)が、市営バスがなくなってどんどん不便になっていく秋田市民からすれば、青森市の路線バス環境がとてもうらやましく感じられた。

【29日追記】車内放送の広告で、弘前市の観光の宣伝が流れていた。
「禅寺が立ち並ぶ禅林街で、座禅をしてみませんか? 詳しくは弘前観光コンベンション協会『弘前感交劇場』ホームページへ」とかいう内容だったはず。
洋風建築巡り(?)の別バージョンとあわせて、(同じ路線で)2度は流れた。

※続きはこちら
※2013年の青森市営バスはこの記事後半

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8 コメント

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青森市営バス (とびいり)
2011-11-28 23:58:27
淡い記憶なんですが、モノコック全盛時代の青森市営は日野ばっかり走っていた覚えがあります。中扉は必ず引戸であり、そして中乗り前降り、これが都会的で美貌の眼差しを注いでおりました(弘南は前乗り前降り)。
それと、おっしゃる通り昔からデカい車両ばかり扱っていて、それがまた都会的に感じました。現在は、中型・小型もあるようですが周流はやはり大型ですよね。浪岡線にまで大型を使用しているものですから、意外に手厚いなぁと思いました。
それと、津軽(弘前・五所川原)との決定的違いは、お客さんでした。津軽地方の客はバス待ちの際、停留所の周りにタムロして各々ブラブラしていて、いざバスが見えたとなれば我先にバス停に群がり無法地帯。一方で青森市の客は、降雨でも猛吹雪でも必ず一列に並んでジッと耐える。これもまた子供ながらに、都会的と感じずにはいられませんでした。

青森市営の車両を弘南社員が運転しているというのは、全く知りませんでした。面白い試みですね。JR西のEF81をJR東管内ではJR東の社員が牽いている日本海みたいなものですね。
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弘前との違い (taic02)
2011-11-29 19:46:21
弘前では中ドアを使いませんからね。青森市は豪雪地ですから、積雪時の各バス停の除雪は大変かもしれません。
浪岡線用車両は、青森県内唯一のノンステップバスでしたでしょうか? 数年前に見かけましたが、秋田県の路線用では使われていない大型ノンステップがガラガラで走っており、もったいないな~と感じたものです。
お客の待ち方までは気づきませんでしたが、秋田市の乗客の待ち方は…弘前と同じかな?

公営バスを、ライバルでもある民間他社のドライバーが運転するというのが意外ですね。
公営交通事業で最大の支出であろう人件費を削減でき、弘南バスとしても“安定収入”があり、しかも乗客は従来と同じ感覚で利用できるので、いいやり方だと思います。
仙台や名古屋などの一部でも同様の外部委託が行われています。
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良いやり方 (住民)
2013-02-12 19:29:09
車両、事業主体は市が責任を持ち、乗務員は弘南バス。秋田市もそうなっていたら運行本数も車両も従来のまま維持出来たでしょうね。バスロケも継続してたと思いますし。当時、秋田市からの補助金、年間10億円という支出は、全面民間移管というよりも、乗務員のみをすべて民間に委託さえすれば、廃止する必要はなかったと思います。

弘前は営業所はそうなると市営バスの営業所になるのかわかりませんが、車両更新も市が行うでしょうし、民間は必要以上にバスを保有する必要はなく、支出がないので一番良い方法ですね。特に今の秋田市のバスは規制緩和の弊害が出ていると思います。

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人件費 (taic02)
2013-02-13 00:11:34
公営交通事業の最大の経費は人件費ですから、民間委託すれば解決できますね。
市営のままなら、カネだけでなく、どんどん口も出せます(というか自らの責任になる)。

ただ、どうも100%外部委託にするということは、法律上か何かの制約があるらしいです。
青森市に合併した旧浪岡町エリアでは、前からの弘南バス自社路線、市営バス(弘南バス委託で市営バスの車両)、市のコミュニティバス(弘南バス委託で弘南バスの車両)と、3種類のバスが走っていて、結局はどれも弘南バスが関わって、一部では競合しているという、ややこしいことになっていて、その辺の整理も必要かもしれません。
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難しい面もあるけれど (住民)
2013-02-21 13:50:52
市営バス廃止時にイオンモール秋田の委託契約のような無料バスを秋田市の旧市営バス全路線で運行する事も出来たのかなと思います。イオンも誰でも乗れるバス運行で損して特取れでバス会社も委託金が入る。そんな方法にすれば市営バスも委託契約として走らせる、またバス譲渡は今回同様に譲渡をすればうまく出来たのではないでしょうか。

制約があって市営バスを乗務員だけ100%民間移管出来ないのとは、委託契約は別になるのではと思いました。
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スポンサー (taic02)
2013-02-21 23:57:02
考え方としては、企業がバスのスポンサーというかバス運行に協賛するということでしょうか。
どこかの地方都市の100円循環バスでは、協賛企業を募ってお金を出してもらい、バスの運行費に当てているのはあったはずです。

規制緩和・新規参入といっても、地方では古い体質から抜けだせません。
思い切ったことも必要でしょうけど、既得権だなんだとハードルも出てくるでしょうし、難しいのかもしれません。
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Unknown (住民)
2013-02-22 11:34:37
スポンサーのような契約もありだと思います。

または市が市営バス廃止時に市営全65路線を貸切としてバス会社と契約し委託する。貸切契約なら市は貸切代金をバス会社に払えばいいし、バス会社は安定収入が得られる。市が貸切としてバス会社に頼む事でバス運賃は無料となる。

中央交通と市営交通で競合していた路線は補助金で対応する。複雑ですがこんな事出来なかったのかなと考えてました。
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とらわれないやり方 (taic02)
2013-02-23 21:17:33
既成のものにとらわれない、やり方もできたかもしれません。
ですが、受益者負担はもっともなことで、利用者がしかるべき運賃は払うべきだとも思います。バス会社も商売ですから、行政頼みでなく自分の努力で儲けてほしいし。

ただ、JRや100円で乗れる高齢者市民との格差が大きいのも問題です。
八戸市周辺では、運賃に上限を設け、市内300円、周辺地域500円以内で済むようになったそうで、広い秋田市でも、そういうやり方もできるかもしれません。
バス会社も行政も現状維持でなく、いろいろ考えてほしいものです。
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