<藤白神社 ふじしろじんじゃ>
イザナギ・イザナミの神生みの際に生まれた
天鳥船命(あめのとりふねのみこと)は、
別名、鳥之石楠船神・天磐櫲樟船・天鳥磐櫲樟船とも言い、
日本書紀では双神が最初に生んだ蛭子(ひるこ)の大神を
海に流す際に登場する船の神様として知られています。
ちなみに「櫲樟(よしょう)」とは楠のことを指し、
「鳥磐櫲樟船(とりのいわくすぶね)」は、
鳥のように速く走り、岩のように堅固な楠で作った船、
という意味なのだとか。饒速日尊が天下る際に乗っていた、
天磐船(あめのいわふね)とも同一視される存在です。
天鳥船命の化身であるクスノキ(楠・樟・櫲)は、
古代から信仰の対象として、神聖視されていたのでしょう。
楠信仰が盛んだった紀伊半島の南部一帯では、
和歌山市付近を拠点にしていた名草戸畔(なぐさとべ)、
新宮市付近を拠点にしていた丹敷戸畔(にしきとべ)、
ともに楠を一族のトーテムとして崇拝していた痕跡があります。
また、その名に「楠」を抱く和歌山出身の天才・南方熊楠も、
両親が海南市の藤白神社にある、巨大な大楠のご神木に
願掛けをした結果、この世に誕生したそうです。