簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

バス弁(日本一路線バスの旅)

2018-07-30 | Weblog



 奈良交通が運行する日本一の路線バス「八木新宮線」は、沿線の十津川村で
は地元住民の足とされるバスである。
しかし車を持たないお年寄りのためとはいえ、これまで乗車して見かけるのは
観光客ばかりである。
当地のお年寄りの足とは言え、その利用は限定的でしかないようだ。

 村は過疎化が進み、人口はここ30年ほどの間に半減している。
マイカーも普及した今日、村民の足として劇的な改善が得られる見込みは恐ら
くない。足として維持しながらも、そろそろ観光路線にもう少し舵を切っても
良いのではと思ったりし、人ごとながらアイデアを絞ってみたる。



 旅行前にネットでこのバスのことを調べると、始発から終着まで一本のバスを
乗り通せば下車する折り「乗車証明書」が貰えるとの情報が何件か見受けられた。
しかし奈良交通のHPで調べてみたが、その記述を見つけることは出来なかった。
廃止されてしまったのかもしれないが、だとしたら復活したらどうだろうか?





 観光客受けを狙うなら、路線バスとは言えその乗車券が軟券では様にならない。
ここはやはり「168バスハイク乗車券」は、硬券が好ましい。
しかもそのデザインはシンプルな横に長い形状で、路線図に168カ所の停留所名を
全て入れたもので、その長さも「日本一長い乗車券」が良いだろう。





 このバスは始発から終着まで、その所要時間は6時間半を要する。
そのため途中三カ所でトイレ休憩の時間を取るが、食事をとるまでの時間は無い。
従って始発で乗車時、希望者から弁当の予約を受けたらどうか。

 内容は渓谷すし、鮎あぶり、原木しいたけ、手作りこんにゃくなど十津川特産
で固め、渡し場所は十津川温泉停留所あたりがが良さそうだ。
ここでは少し長めの休憩で、湖畔を眺めながら「バス弁」を食べるのも悪くない。

 バスに揺られ、流れゆく車窓を眺めながら、こんな他愛もない空想をあれこれと
描いている。(続)

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村営バス(日本一路線バスの旅)

2018-07-27 | Weblog


 十津川村は、南北・東西共にその幅が30Kmを越える広大な面積を有する村で
あるが、国道168号が貫通しているとは言え、鉄道や高速道路は通ってはいない。

 そのためひとたび災害が発生すると、村が孤立する危険をはらんでいる。
そんな危惧もあってか、かつて五條市から新宮市を結ぶ鉄道「五新線」が計画
され、戦前には建設にも着手されたが、戦後になって国鉄の再建計画の煽りを
食って計画は完遂されることもなく頓挫している。





 この日泊まった宿の従業員は、「バスは殆ど乗らない、新宮へ行くことも多い
が車で行くし、橋本でも車で行く」と言っていた。
このようにマイカーが普及しバス利用者が減少したものの、村には車を持たない
高齢者も多いらしく、それらの足はもっぱらバスに頼ることになる。
そのためここでは早くから村営バスが運営されていて、今でも多くの路線が有り、
村内をきめ細かく巡っている。



 国道168号線が唯一の幹線道として、決して本数が多いわけではないが、奈良
交通や熊野交通のバスが橋本や新宮に向けて走っている。
しかしこれを利用して十津川に観光で訪れる人はあくまでも少数派で、多くは車
で来ると言う。



 従って村営バスは村を訪れる観光客を意識したものではなく、あくまでも幹線
を走るバスのその隙間を埋めるような運行がされていて、どの支線も生活路線的
な色彩が強く、朝夕の往復に、日中便が加わる程度である。



 この地域の観光地を巡る折り村営バスを使うとしても、元々の運行目的が違っ
ているだけに、その便数が極めて少ないのみならず、観光への利便性は考慮され
ていないので、旅程を組み立てるには本当に苦労する。(続)


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二日目の計画(日本一路線バスの旅)

2018-07-25 | Weblog
 

 静かな大自然の景観と、至福の食事、穏やかに温泉を「湖閣泉 吉乃屋」で
楽しんだ翌日、実は二日目の予定については、どうしようか随分と悩んでいた。

 



 二日間有効の「168バスハイク乗車券」を購入しているので、奈良交通のバス
を効率的に使えばいいのだが、これは一日三往復しか運行されていない。
初便は八木始発が9時15分で、ここ津川温泉の発時刻は13時39分である。
第二便が昨日利用した便で、11時45分発でここには16時14分着だ。
最終便が13時45分発で、この地の到着は18時14分になってしまう。



 沿線の途中にある熊野本宮大社や湯の峰温泉にも立ち寄りたいのだが、午前
中の運行が無いので、それまでをどう過ごすか色々悩むのである。
 
 昴の郷まで行けば(歩きなら2キロ余り、30分ほどらしい)、温泉の立ち寄
り湯や、人力ロープウェイの「野猿(やえん)」の体験もできる。
そこからは、天空の里と言われる果無(はてなし)集落近くまで行くことも
出来そうだ。歩けば1時間ほどだそうだ。


 集落へは村営バスの果無線が有るので、時間を合わせればお昼には戻って
こられるし、世界遺産小辺路の登山口を見に行く(歩く時間は無い)のも一応
時間的には可能だ。
また熊野本宮大社の奥の宮と言われ、パワースポットとしても人気の玉置神社
も良いだろう。しかしこれは前日までにバスの乗車予約が必要で、空きがあれ
ば当日でも乗ることが出来るらしい。



 行きたいところは沢山ある。
昼過ぎにしか来ない奈良交通のバスをこのまま待つわけにもいかず、そんな選択
肢に色々悩んだ挙句、この日の最初の寄り道は、8時35分発の村営バスを使い熊野
本宮大社に向かうことに決めた。(続)

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湖閣泉 吉乃屋(日本一路線バスの旅)

2018-07-23 | Weblog


 ここ十津川温泉には観光旅館と民宿を合わせると8軒ほどの宿が有る。
そんな中格別な理由が有ったわけではないが「湖閣泉 吉乃屋」を選択した。
バス停からなら歩いて五分ほどのところ、眼前にダム湖を見下ろす少し高台に
ある宿で有る。



 ここ十津川温泉ではかって「日本一長い路線バス」で来村し、村内の宿泊施設
を利用すれば、往復のバス賃をタダにするキャンペーンで観光客誘致を図ってい
た時期が有ったが、今は既に終わっている。
あの手この手の努力を続け、その甲斐あってここ最近ではバスの利用客もこの地
への訪問客も僅かながら増えているのだそうだ。



 公衆浴場「庵の湯」の前を通るとその先の道の隅に、明治22年の大水害を後
世に縛める石碑が立てられていた。
元々50mほど下の川縁に有ったものだが、ダム湖の出現でこの地に移したと書
かれている。北海道への集団移住を余儀なくされた災害だけに村民にとっては
忘れてはならないもので有るようだ。



 部屋に案内され窓から静かな湖面を眺めると、心なし水が茶色に濁っている
ように見受けられる。「いつもこんな色?」と聞くと、「先日雨が降ったので。
何時もは瑠璃色と言うか、コバルト色と言うか、綺麗ですよ」とのことだ。



 静寂で四季折々の眺望を売りにする温泉らしく窓を開けても聞こえてくるのは、
風が揺らす木々のざわめきと、小鳥たちの囀りだけである。
食事処の窓際には、そんな小鳥たちの為のえさ場が設けられている。
小鳥たちのついばみをガラス越しに眺めながら、朝食を共にする趣向だ。(続)



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十津川温泉(日本一路線バスの旅)

2018-07-20 | Weblog



 平成16年6月に全国で初めて「源泉かけ流し宣言」を行ったと言う十津川温泉
郷は、十津川温泉、温泉地(とうせんじ)温泉、上湯温泉の三つからなり、郷内
の25温泉施設が源泉かけ流しを誇っている。



 今晩の宿を取った十津川温泉は、二津野ダム湖の畔に開けた温泉地である。
温泉の歴史はさほど古くは無く、江戸は元禄年間に炭焼き人夫が源泉を発見し
たのが始まりらしい。
源泉は70度、ナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉で切り傷ややけどに効能があり、
安全第一な温泉を目指すとし、定期的なレジオネラ検査を行っていると言う。



 周辺は温泉街と言っても食事処や土産物屋が軒を連ねる歓楽的な町並みが
有るわけでもなく、バス停近くに何でも屋さんのようなスーパーが有だけで、
後はどこにでもあるような町のお店だけだ。
こうした至って健全な環境が「国民保養温泉地」として評価を得たのであろう。
ここには湖畔に向き合うように温泉自慢の旅館や民宿等、8軒程が点在している。



 路線バスの停留所の目の前はダム湖が広がり、そのほとりに公衆浴場「庵の湯」
(大人400円)が有る。ここには無料で利用できる足湯や飲泉場が併設されている。
ここから歩いて三分ほどの橋を渡った先には「憩いの湯」(大人300円)もあり、
これらは全て源泉かけ流しの湯である。



 温泉街の旅館や店舗の店先には様々な「のれん」が掛けられている。
その数は30枚を超えると言う。街を歩いてこれらを写メリ、数を集めるとお土産
がもらえるキャンペーンも行っているようだ。(続)



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路線バスの存続(日本一路線バスの旅)

2018-07-18 | Weblog


 午後四時半少し前、日本一の路線バスは三回目の休憩地である十津川温泉の
停留所に15分ほど遅れて到着した。
路線バスとは言え、これまでの停留所では乗客の乗り降りが無く通過を重ねる
だけだから特急バスのようなものだが、それでもこの長距離では定刻の運行は
なかなかに難しいようだ。



 ここで五人の乗客の内四人が下りた。久しぶりの動きである。
バスに残るのは横浜の女性だけで、聞けば彼女も今晩はこの先のホテル昴に泊
まり、翌日は玉置神社に行くと言う。



 休憩を終えたバスは、新たな乗客を乗せることもなく出て行った。
この先のホテル昴停留所で彼女を下ろした後、乗客を乗せることもなく新宮に
向かうのであろうか。
これでは儲からないのではと、些か心配しながら出ていくバスを見送った。



 この路線の運行が始まった当時は、待望され開通したこともあり連日満員の
乗客で盛況で有ったようだが、その後沿線の過疎が進み人口が減ると同時に、
マイカーが普及し利用客は減少した。
合わせて地勢的に豪雨災害の発生しやすい土地柄で、崩れた土砂で国道が通れ
ず、運休を余儀なくされることも度々有ったりする。



 こうなると当然営業収支は悪化し赤字が続き、お決まりのように路線を短縮
するとか、廃止してしまえと言う論議が巻き上がったのだそうだ。



 しかしここ十津川村は元々新宮との結びつきが強い土地柄らしく、僅かな
がら一定の利用が有ると言う。
特にマイカーを持たない高齢者にとっては貴重な足となっているから路線を分割
すればこれらの利用者に乗り継ぎが発生し、利便性が悪くなると反対の声も根強
かったらしい。
結果止めるにやめられなかったようで、そこで国と奈良県や沿線自治体の補助
金の出番となったものらしい。(続)


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十津川村(日本一路線バスの旅)

2018-07-16 | Weblog

 紀伊半島のど真ん中奈良県の最南端に位置する十津川村は、人口3300人余り、
人口密度で言えば一平方キロメートル当たり五人余りである。



 日本一と言われる面積は、東京23区よりも広く、琵琶湖をも僅かに上回る。
殆どが急峻な山地で平地が少なく農耕作業に適さない厳しい地勢で、村の真
ん中を十津川が南に向けて流れている。
そのため主な産業は林業と川魚などの加工だと言う。



 バスは、大和八木駅を出発して凡そ4時間、十津川村の中心的な地域に入り
込んできた。
沿道にはそばなどを提供する食事処や、村役場、警察署、道の駅・十津川郷な
どが有り、久しぶりに見る町並みである。
そんな中、始発から数え107番目の停留所「十津川村役場」が有ったが、バスは
停まることもなく通過すると周囲の僅かな賑わいもすぐに途切れ、再び川沿い
の山道になる。



 ここまで所々でバイパスが完成し、新道には新しいトンネルも掘られている。
しかしバスは時折思い出したようにその新道に出る物の、直ぐに旧道に戻り殆ど
そこを走って来た。



 そんな道沿いでは(見落としたのかも知れないが)、日本全国どこでもお目
にかかるコンビニではあるが、五條バスセンターを出て国道168号が山中に入り
込んで以来見かけてはいない。
先ほどの役場を中心とした町並みの中にも目にすることが無かった。
後で聞くと、村にはスタバどころかコンビニも無いと言う。



 始発から4時間半以上も経過し、先ほどの役場前から凡そ30分経ってバスは
三回目の休憩地、十津川温泉に到着した。
これまで乗ってきた五人の乗客の内、ここで四人が下りると言う。(続)




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豪雨災害(日本一路線バスの旅)

2018-07-13 | Weblog



 バスに同乗していた名古屋からと言う一人旅の男性は、途中で風が強いので
引き返したと残念がっていた。
また横浜からと言うこれも一人旅の女性は、橋を見たら初めから怖くなって渡
れなかったと言う。



 吊り橋の説明板によると、当時川には丸木橋が架かり、川原には集落やその
田畑が有った。ところが明治22(1889)年に停滞した秋雨前線と、台風が重な
っての記録的な大雨が降った。
この地を襲った大水害で壊滅的な被害が出て、人々の生活を一変させたという。



 ここ十津川村では、平成23(2011)年の台風23号でも、流域で大きな被害が
出たらしい。猛烈な豪雨で土石流が発生し、せき止められた川の水が溢れ住宅
地を直撃、18名もの犠牲者が出た。



 山が深く急峻なため、ひとたび大雨が降れば各所で山崩れが置き、土石流と
なって集落を襲う、昔からの宿命でもあったようだ。
明治での災害の折には復興に三十年も要すと言われ当地での生活再建をあきら
めた被災者600戸2691名が北海道の徳富川流域に移住して新生活を求めている。
それが今日の北海道の新十津川町である。


                 (北海道・JR札沼線・新十津川駅)

 急ぎ足で吊り橋を渡り、どうにか休憩時間の内にバスに戻ってきた。
乗客は相変わらず五名のままで、それを確認するドライバーの表情にも弛緩し
たゆとりが感じられる。
停車中に話を聞くと、国道沿線で頻繁にみられる土木工事は、バイパスや道路
の改良工事と同時に、災害復旧工事も急ピッチで進められていて、それらが合
わさってのことと言う。(続)



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谷瀬の大吊橋(日本一路線バスの旅)

2018-07-11 | Weblog

 バスは十津川と名を変えた川に沿いながら新しいトンネルを潜ることもなく
旧道を進み、上野地の集落に入ってきた。
ここでは20分間、二度目の休憩をとるのでこの時間を利用して是非見ておきた
いものが有る。





 「谷瀬の大吊橋」である。
この周辺の集落の住民が一戸当たり20万円と言う、当時としては破格の大金を
協力し、総額800万円余りを投じて昭和29年につくられた生活橋である。
その長さ297.7m、川からの高さ54m、村道としては日本一のものだそうだ。





 入り口には番小屋が有り、一度に20名以上が橋に入らないようコントロール
している。
この日は小雨交じりの強風が横から吹き付けるあいにくの日で、橋を渡るのを
一瞬躊躇したが、折角なのでと渡り始めた。



 20分の休憩の間にこの橋を往復するには、おっかなびっくりでのろのろと渡
るわけにもいかず、殆ど駆け足に近い速歩である。
時折強風に橋を揺らされ、身体をネット際に押され肝を冷やす。
おまけに足場の板は決して分厚い物とは言えず、不安定で、重みでしなったり
するから心もとない事この上もない。



 不安になって途中で若干の後悔をするが、引き返すのも癪でこうなったらも
う何が何でも向こう岸まで行くしかない。
一緒に渡り始めた内の何人かは途中で引き返したようで、橋の取っ掛かり辺り
で写真を撮っている。気が付けば橋の上は一人、二人と寂しいものだ。

 やっとの思いで向こう岸にたどり着き、直ぐに折り返す。
足元ばかりで、殆ど景色を見る余裕もないまま、それでも何枚かの写真を確保
して何とか渡り終えた。すっかり体も冷えてしまった。(続)


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旧道と新道(日本一路線バスの旅)

2018-07-09 | Weblog


 日本一の路線バスは、これまでも車内では停留所の案内が繰り返し行われて
いるが、そこに乗車を待つ客も無く、無論降りる客もいないまま通過を繰り返
してきた。



 大和八木駅前を出発し凡そ2時間半、「星のくに」停留所でも停まることも
なく通過する。
思えばあの五條バスセンターを過ぎてから乗客の乗り降りは行われてはいない。



 天辻峠に至るまでの道は幅員も狭く、車窓の下には深い谷が落ち込む随分と
山深いところで、雲が湧きあがるのか所々で視界を遮っている。



 分水嶺である新天辻隧道を抜けると、国道は少しずつ高度を下げながら大塔
橋を渡ると、車窓右手にダム湖が見えてくる。
熊野川上流域につくられた猿谷ダム貯水池の、更に上流域となる地域である。
水量が少ない時期だからか、山肌には大きな爪でかき取ったような地層の横縞
模様が見て取れる。



 峠を抜けた辺りから国道168号には新しいトンネルが掘られ、幅員の広い真
新しいバイパスが目立つようになる。橋の架替えが行われている場所もある。
川に目を凝らせば所々で護岸壁の工事が行われ、既に修復されたと思われると
ころも少なくは無く、いたるところで土木工事が行われているのがよく解る。



 しかしバスは真新しいバイパスの恩恵を左程受けることもなく、多くは幅員
の狭い曲がりくねった旧道を走行する。
なぜならそこに集落があり、そこに停留所が有り、そこにバスを頼りにする住
民の生活が有るからだ。
しかし過疎の進んだ集落には乗客など居そうにないと分かっていても、バスは
律儀に停留所を巡って行く。(続)


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