sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ククーシュカ

2016-12-05 | 映画
2年前に見た映画で、ほとんど感想を書いてなかった映画のことを
別のことを調べてて思い出したら、
それってこの前見た「みかんの丘」と似てる構図の話だな〜と気づいた。

ここに少しだけ書いたけど、これ→三姉妹〜雲南の子
傷ついた敵同士の兵士が同じ家で看病される。
家の主は、「みかんの丘」は何もかも知り尽くしてなお優しさを失くさない老人で
「ククーシュカ」は生命力溢れる女性だけど、どっちもすごくいい映画です。

で、ククーシュカのことを書きたくなったけど
感想書いてない映画は、結構内容を忘れちゃうんですよね。
内容を忘れた昔の映画についても、
覚えてることだけ書くいいかげんなブログです。笑
ククーシュカというのはロシア語でカッコウのことらしいです。

フィンランドの最北部のラップランドでひとりでたくましく生きるサーミ人の女性が
第二次大戦末期に、敵対していたソ連兵とフィンランド兵を一緒に匿うことになる。
3人ともそれぞれの言葉を全く知らず、言葉による意思の疎通がおかしいくらいできない。
誤解はとけず、ソ連兵はフィンランド兵をナチだと思い込み、なんとか殺そうとするが
自分は怪我をしているので、なかなかうまくいかない。
サーミ人の女性は強く優しい自立した女性で、
夫がいなくなって以来、久しぶりの男たちの出現にうきうき。
久しぶりの男だわ一度に二人も!ラッキー!みたいなシーンがあって、
この女性が(の民族が?)性に対しておおらかで明るいのだなとわかる。

この3人が、全く通じないし噛み合わないのに、なんだかよくしゃべるんですよ、
それぞれ勝手に。
通じないから一方は怒って何か言ってるのに、言われた方は勘違いして
ニコニコと礼を言ったりする、そういう掛け合いのところが
なんとも言えないユーモアで面白いです。

この映画も、兵士たちはだんだんわかりあうようになっていくのだけど
ラストは「みかんの丘」とと違って、暖かい幸せなシーンなので
ファンタジーや寓話に近いかもしれません。
でも内容的には「みかんの丘」と同じことを表していると思います。

この映画について書かれた早稲田大の水島朝穂さんの文
紛争は解決ではなく転換するのだ、と書かれていて、なるほどなと思った。
 米軍の研究によると、戦場において敵と遭遇して、実際に相手に発砲できる兵士は25%しかいなかったという。驚いた米軍当局は、標的を人間の形に変える。そして、繰り返し、人間の形の標的を瞬間的に撃つ訓練をする。すると、戦場での発砲率があがったというのである。相手と知り合いになってから、それでは殺し合いなさいといってもできるものではない。いわんや、一緒にものを作ったり、助け合ったりすれば、もう殺せない。この映画は、「不思議な三角関係」を通じて、女性1 人に男性2人という文字通りの三角関係だけでなく、実は、2者の憎しみと対立を解消する方法は、そこに第三者(しかも異性)を介在させることで、憎しみと対立のエネルギーを「転換」してしまう話である。ノルウェーの平和学者J・ガルトゥングの主張する「超越法」(Transcend)のことを思い出した。
 ガルトゥングによれば、紛争は「解決」するのではなく、「転換」する。つまり、対立する双方の主張や立場を調整するのではなく、双方の矛盾や対立から跳躍して、新しい創造的な道を見つけ出すという方法で、矛盾や対立を「超越」していく(詳しくは、J.ガルトゥング=奥本京子訳『平和的手段による紛争の転換――超越法』(平和文化、2000年)。そこでは、対立する紛争当事者双方と、独立・客観的な立場で対話できる第三者が必要となる。これを「紛争ワーカー」ないし「平和ワーカー」と呼ぶ。
 また、紛争転換のための「超越法」では、α)態度における「共感」、β)行動における「非暴力」、γ)対立における「創造性」の三角形がカギとなる。この場合、サーミ人の女性が魅力的な「平和ワーカー」の役回りを演じ、言葉は通じなくても双方に共感が生まれていくこと、そして、厳しい自然のなかで生活を成り立たせるための共同作業が必要となっていること。そこに創造的な意欲が生まれ、おのずと暴力はなくなっていく。
 この映画の「不思議な三角関係」そのものが、それぞれに国家を背負った軍隊構成員が、生活に必要な共同作業のなかで憎しみや対立の根を昇華させていく「場」になっているように思う。目標は生活であり、それはきわめて平和的だ。「武力なき平和」への道程において、この「超越法」は重要な意味をもつ。この「ククーシュカ」は、「超越法」のケース・スタディとしてみても面白いだろう。


それはさておき、ムーミンの国、北欧タンゴの国、フィンランドが
最近、呼んでる気がするのですよ。一度行ってみようかしらん。