つむじ風

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朽ちないサクラ

2018年08月13日 11時45分14秒 | Review

柚月裕子/徳間文庫

 2018年3月15日初版、2018/年3月31日第2刷。著者の作品は初めて読む。お題の「朽ちないサクラ」の意味が判るのは最後の最後だった。それまで、どうしてこのお題なのか気にしながら読んでいたのだが、納得した。

 この作品の面白いところは、やはり最終段の「朽ちないサクラ」元・警備部第一課出身の富樫隆幸(課長)が、主人公の森口 泉によって攻め立てられ告白(=否定できない)する場面だろう。同時に公安警察と刑事警察の違い、組織の非情さ、酷薄さ、残酷さである。小説でありながら背筋に冷たいものが流れるようなリアルさがあるクライマックスだった。
 世間では容易にその姿を見ることが出来ない、時代の波に押されて、その存在意義さえ問われかねないあの組織のことだ。一見、解決したかに見えた事件の裏にとんでもない画策が横たわっていた。「サクラ」は朽ちていなかったのである。

 冒頭のストーカー事件は「桶川ストーカー殺人事件」をModelにしているらしいが、著者はその関係の出身でもなければ研究者でもない。すべて自前の調査らしい。それで、さも今見てきたかのようにここまで書くのだから、一言で言って凄い作家である。

 主人公「森口 泉」には警察の事務職を辞めて、今度は警察官として再度採用試験を受けるという(シリーズ化に)含みを持たせている。好感の持てる主人公なだけに大いに期待したいところだ。



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