先手番勝浦先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170916
昭和57年3月、池田修一先生と第23期王位戦です。池田先生は二度目の王位リーグ入りみたいです。エピソードは同郷の先崎先生の本で読むことができます。
大山先生の先手で、中央位取り中飛車か
と思ったら右銀が出てきて
こういう力戦になりました。若いころはこういうのが多かったはずですが、第3巻から並べているのでいつになることか。
形は後手のほうが整っています。
池田先生から仕掛けて
75歩に大山先生は57銀、相居飛車でもこういう大山流の金銀移動が見られます。
金銀の連結が切れてきて怖いのですが、角を転回して攻めをけん制します。
焦って74歩は66歩から攻められます。じっと銀を引いて攻めてきなさいというのです。84飛には63歩も嫌なので、池田先生は攻めるしかなく
駒をぶつけていきます。桂取りは受ける形がなくて
銀を打って攻めを継続します。
馬を作り合っても桂歩損ではやや苦しいです。桂を取り返し
竜を作らせても金を剥がしに行きます。
大山玉に詰めろがかかりました。どう受けますか?
大山先生は79桂で69金と使わせてから歩を払います。
54馬を同竜と取って両取り。これで寄せ合いです。
65銀と打たれれば41銀で返し
再び先手玉が詰めろ。でもここで54馬が詰めろ逃れの詰めろでした。
投了図。先に竜を切れば詰みだったみたいですが。
桂馬を取った73角成あたりでやや先手有利なのですが、その差はわずかです。最後はぴったり先手の勝ちなのですが、大山先生はどこで見切ったのでしょうね。
相居飛車の将棋でもなんとなく大山先生らしさが出ています。
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# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:池田修一5段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 5六歩(57)
4 3四歩(33)
5 5五歩(56)
6 6二銀(71)
7 4八銀(39)
8 4二銀(31)
9 5七銀(48)
10 3二金(41)
11 5六銀(57)
12 8五歩(84)
13 7七角(88)
14 4一玉(51)
15 6六歩(67)
16 7四歩(73)
17 6八銀(79)
18 6四歩(63)
19 5七銀(68)
20 6三銀(62)
21 4六銀(57)
22 4四歩(43)
23 7八金(69)
24 5二金(61)
25 5八金(49)
26 9四歩(93)
27 2六歩(27)
28 4三金(52)
29 2五歩(26)
30 3三銀(42)
31 6九玉(59)
32 3一角(22)
33 3六歩(37)
34 4二角(31)
35 6七金(58)
36 3一玉(41)
37 1六歩(17)
38 2二玉(31)
39 6八角(77)
40 5四歩(53)
41 9六歩(97)
42 7三桂(81)
43 5四歩(55)
44 同 銀(63)
45 5五銀(46)
46 6三銀(54)
47 1五歩(16)
48 8一飛(82)
49 7九玉(69)
50 5四歩打
51 4六銀(55)
52 6五歩(64)
53 同 歩(66)
54 7五歩(74)
55 5七銀(46)
56 7六歩(75)
57 同 金(67)
58 6四歩打
59 5九角(68)
60 6五歩(64)
61 3七角(59)
62 6四銀(63)
63 6七銀(56)
64 7五歩打
65 7七金(76)
66 5五歩(54)
67 6八銀(57)
68 6六歩(65)
69 同 銀(67)
70 6五銀(64)
71 5五角(37)
72 7六歩(75)
73 6七金(77)
74 6六銀(65)
75 同 金(67)
76 8六歩(85)
77 同 歩(87)
78 7五銀打
79 同 金(66)
80 同 角(42)
81 7三角成(55)
82 3九角成(75)
83 5八飛(28)
84 2九馬(39)
85 5二飛成(58)
86 6六桂打
87 6七銀打
88 7八桂成(66)
89 同 玉(79)
90 4七馬(29)
91 5八歩打
92 8七歩打
93 同 玉(78)
94 6五馬(47)
95 7九桂打
96 6九金打
97 7六銀(67)
98 5四馬(65)
99 同 龍(52)
100 同 金(43)
101 6三角打
102 6八金(69)
103 8一角成(63)
104 6五銀打
105 4一銀打
106 4二金(32)
107 6二飛打
108 7八飛打
109 5四馬(81)
110 7六飛成(78)
111 9七玉(87)
112 3一銀打
113 3二金打
114 投了
まで113手で先手の勝ち
20170916今日の一手
7月16日の名南将棋大会から、JさんとYさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
序盤は見ていないのですが
角換わりで先手の早繰り銀、後手は腰掛銀でしょう。早繰り銀を追い返せずにさばかせてしまったという図で、先手の大成功。ただしそこから優勢にもっていくのは難しいです。玉を移動しないで端攻めが決まれば楽勝なのですが。
ここから桂を跳ねて銀を打ち
角と銀を打ちあった
という図は全くの互角です。45銀と打ったのがおかしかったのでしょう。固めて待つか(66歩は突かないほうが良い)、端攻めか、という選択でした。
しばらく進んで
55銀左とぶつけたら66歩と打たれました。56角なら無難でしたが85角と逃げ、55銀33歩に22金とかわされたのが問題図。
☆形勢判断をします。
銀と歩歩の交換ですからこの図では駒損です。
玉の堅さはやや先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は28飛85角45桂で3枚。
後手の攻め駒は54角と持ち駒銀銀で3枚。82飛も加わりそうで4枚に近いです。
総合すれば後手有利です。
☆ 大局観として
33歩を取ってもらって桂馬を交換し、銀を取り返して形勢互角、というはずだったのですが33歩を取ってもらえませんでした。55の銀を取り返すと桂馬を取られて(持ち歩の関係はありますが)桂損です。3手前の85角は疑問だったようです。疑問手を重ねないことが大事で、1回ならまだ何とかなるものです。
まずは桂損でまずいか、という確認をします。まずければもっと強く攻める手を探さなければなりません。手段は限られるので探してみましょう。
× 実戦は55銀と取りました。当然45角
この角も好位置です。66銀33金左46歩54角65歩
と桂損でも辛抱したのです。が、後手は歩を入手したので完全に桂損です。玉の堅さだけは上回っていますが、後手の攻め駒はさらに増えました。以下の手順は省略しますが
銀を打って桂損を解消しようとしたのですが
飛を抑えきれずに攻められて
飛角もさばかれては大差です。
自然に指してもだめなので、強く攻める手を探します。
○ 53桂成
どうせ取られるのですから捨ててみます。53同金55銀45角
後手玉は金をもてば41金で詰みますね。ですから54銀打
というのが厳しい手になります。78角成同玉52金では王手飛車64角も見えますね。だから73桂74角を利かせて(角の取り合いはやや後手もち)、どちらかで取ることになりますが、54金同銀
で後手玉は詰めろです。78角成同玉33金に64角
42に合駒をしても41金から取ることができます。22玉には41角成、32玉には31金22玉41角成、と先手の攻めが続きます。これは先手有利です。
後手は角で銀を取るほうが良さそうで
54同銀同金63角打
が詰めろ。33金に54角成はやや先手よしというところです。
○ 他の候補は24歩で
これは手抜けません。24同歩同飛23歩34飛では44銀
銀を食い逃げされていますから、これでは厳しさが足りません。
24歩同歩に23歩
23同金に53桂成同金55銀45角32銀
というのが狙いでした。金二枚を上ずらせて銀を打ちこみます。
32同飛同歩成同玉51飛
52歩に同角成以下攻めが続きます。(まだ形勢は難しいですが)
32銀に22玉とかわせば41角成
これは受けなしです。
後手はどこかで変化するのですが55銀に角を取らせて辛抱
では54銀同金63角成で先手よし。
最初の23歩を無視して44銀
のほうが難しそうです。22歩成同玉32金同金同歩成同玉22歩
22同玉に41角成32銀というのは形勢互角でしょう。
× 他の候補は14歩ですが
取られて得かどうか、ということもありますし、44銀13歩成同桂14歩87銀
でも自信なしです。
☆ まとめ
形勢が悪くなると自然な手で勝てる、というわけにはいきません。じっと我慢してミスを期待するか、不自然な手でも敵陣に嫌味をつけて勝負するか。
実戦では自然な手で駒損になりました。戦力に差があるわけですから、長引けば苦しくなるのが道理です。主張できるのは先手玉の堅さだけでしたが、後手も攻め駒が多いので逆転のチャンス(攻め間違い)は起こりませんでした。
どうせ桂損するなら53桂成と敵陣を乱してしまえ、というところから手がないかと考えます。
金を入手できれば詰めろになる、と気が付けば54銀打です。
32銀と打ちこみたいと思えばもう少し工夫して、先に24歩同歩23歩を入れておきたい、とさかのぼって考えます。(ここで24歩は27銀か、24歩同歩23歩に33金か)
いずれにしても上の図を想定しているわけで、形勢が悪ければ読みの作業が必要になります。この図まで進めてみて、何もありませんでした、で負けることが多いと思います。(実際は手がある局面ですが、53桂成と捨てるのが不自然な手なので感覚では選びにくい。)
つまり読みが得意なタイプは、形勢不利になっても枝葉(やや不自然な手の変化)を考えることで逆転の筋を見つけられるかもしれません。
直感が得意なタイプは、序盤研究をしっかりやって、形勢不利にならないようにすることが大切なのだと思うのです。