名南将棋大会ブログ 名古屋

名南将棋大会告知や結果のほか、
将棋が強くなるための記事を書きます。
まずは将棋上達法則を見てください。

大山将棋研究(638);四間飛車に居飛車穴熊(佐伯昌優)

2017-09-10 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

(負けましたが)後手番大山先生の次の手は?

☆ 今日の棋譜20170910
昭和57年2月、佐伯昌優(さえきよしまさ)先生と第21期十段戦です。


大山先生の四間飛車に佐伯先生は居飛車穴熊です。

54銀から65歩という対策はもっと後の時代かと思っていました。

角交換になり

角の打ちあいで

大山先生の44角から33桂は少し欲張った感じです。佐伯先生は3筋を絡めて

54歩を狙います。

44角はどかして

54歩に42金、攻めているのが角銀だけですからすぐにつぶす攻めでもないようです。

飛車を使えば2筋から焦らされ

穴熊が未完成ですが、飛角銀で精一杯攻めます。大山先生が銀を32に引いたのは、52銀に53歩を嫌がったのでしょう。

角銀交換で と金を作り

飛車を追います。こういう取り合いには応じずに

後で25歩を取り返した図は後手陣がすっきりしています。

86角と目先を変えられたら銀を打って

38と から駒を取りに行きます。飛を追われても歩の裏に入れば問題なし。

桂香を拾われて駒損になった佐伯先生はパンツ脱ぎの勝負手です。

でも飛を追われて縦には動きにくく、捕獲されてしまいました。

やむなく飛を切って銀を取ります。これで駒損はほぼなくなった勘定なのですが、穴熊が薄いので先手が悪いです。

大山先生は58飛成から78金、こうなれば筋に入った感じです。飛を打って粘られても

54桂が使えるので調子が良いです。

74歩には75飛ですか。こういうのは居飛車からは見えにくいですね。

佐伯先生も反撃で形になったようですが、次の87飛成が詰めろなのです。

何か受けなければいけなくなり

角を取られて87桂で投了です。

この振り飛車の腰掛銀から65歩という指し方は、小林健二先生の本に出ていたので(1997年)もっと後の時代のものかと思っていましたが、大山先生の将棋に原典があったのですね。そのあとで藤井システムが出たので流行りませんでしたが、堅い美濃囲いで戦えるので優秀なのではないかとは思っていました。
佐伯先生も悪い手を指しているわけでもないのですが、穴熊が薄いままではうまくいきませんでした。今見直されてもおかしくなさそうに思います。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:佐伯昌優7段
後手:大山王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 6八玉(59)
8 4二飛(82)
9 7八玉(68)
10 6二玉(51)
11 5六歩(57)
12 4三銀(32)
13 5七銀(48)
14 7二銀(71)
15 7七角(88)
16 7一玉(62)
17 8八玉(78)
18 5二金(41)
19 9八香(99)
20 6四歩(63)
21 9九玉(88)
22 5四銀(43)
23 6六歩(67)
24 6五歩(64)
25 8八銀(79)
26 4五歩(44)
27 6五歩(66)
28 同 銀(54)
29 2二角成(77)
30 同 飛(42)
31 7七銀(88)
32 8二玉(71)
33 5八金(49)
34 5四銀(65)
35 8八銀(77)
36 2四歩(23)
37 7七角打
38 3三角打
39 6六銀(57)
40 4四角(33)
41 3六歩(37)
42 3三桂(21)
43 3五歩(36)
44 同 角(44)
45 5五歩(56)
46 4三銀(54)
47 6五銀(66)
48 4四角(35)
49 4六歩(47)
50 同 歩(45)
51 4五歩打
52 3五角(44)
53 5四歩(55)
54 4二金(52)
55 5三歩成(54)
56 同 角(35)
57 4八飛(28)
58 6四歩打
59 5六銀(65)
60 2五歩(24)
61 4六飛(48)
62 3五角(53)
63 3六飛(46)
64 2四飛(22)
65 5五銀(56)
66 2六歩(25)
67 4四歩(45)
68 3二銀(43)
69 4六銀(55)
70 2七歩成(26)
71 3五銀(46)
72 同 歩(34)
73 同 飛(36)
74 3四歩打
75 5五飛(35)
76 5四歩打
77 2五歩打
78 2一飛(24)
79 5四飛(55)
80 5三歩打
81 6四飛(54)
82 6三歩打
83 6七飛(64)
84 2五飛(21)
85 8六角(77)
86 8五銀打
87 5九角(86)
88 3八と(27)
89 2六歩打
90 4五飛(25)
91 7五歩(76)
92 2九と(38)
93 6六飛(67)
94 1九と(29)
95 7七桂(89)
96 5四桂打
97 3六飛(66)
98 3五歩(34)
99 5六飛(36)
100 5五香打
101 同 飛(56)
102 同 飛(45)
103 8五桂(77)
104 5八飛成(55)
105 同 金(69)
106 7八金打
107 7九飛打
108 同 金(78)
109 同 銀(88)
110 6九飛打
111 8九金打
112 6六桂(54)
113 7四歩(75)
114 7五飛打
115 7七香打
116 8五飛(75)
117 3七角(59)
118 8七飛成(85)
119 7三歩成(74)
120 同 銀(72)
121 同 香成(77)
122 同 桂(81)
123 8八銀打
124 3七龍(87)
125 7四歩打
126 8七桂打
127 投了
まで126手で後手の勝ち


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20170910今日の一手(その568);大山先生なら

2017-09-10 | 今日の一手

20170910今日の一手

7月8日の名南将棋大会から、KさんとOさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。


一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
桂香と金歩の交換で、後手に持ち歩があるので歩はカウントせず。互いに馬を作り合っています。二枚換えの分だけやや先手の駒損です。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は51馬と持ち駒飛金で3枚。
後手の攻め駒は69飛35桂と持ち駒桂香で4枚。77馬も数えてもよいくらいで、十分な数があります。

総合すれば互角です。

☆ 大局観として
終盤戦で、もうすぐ寄せ合いに入ろうとしています。後手からは27桂成の筋(これは24香を打ってからかもしれません)と47香や66桂や67歩など横から攻める筋があります。先手は61馬~62飛~41銀くらいでしょうか。先手玉が何手すきかは(王手が入るので)数えにくいのですが、後手玉は薄いとはいえ4手すきでは寄せ合いが不安です。つまりは受ける手も考慮に入れる必要がありそうです。
先手の戦力(攻め駒)が少ないので、後手玉攻略には時間がかかるのだ、という見立てです。


△ まずは実戦の手順を見てみます。61馬と銀を取って、47香に59金引

これは少し危険で、49香成69金48成香で負け筋かと思います。でも89飛成と逃げられて、58金右と手が戻り67桂

最初から59金寄と比べて一手パスなので、かなり怪しくなりました。62飛59桂成41銀

それでも先に詰めろがかかるので、これは先手が少しよさそう。後手に42金打と受けられたらまだわからなかったのですが、42銀36歩58成桂35歩48成桂

これで先手玉に詰めろがかかりました。後手玉は・・・32銀成同玉31金同玉41金と追っていけば詰みますね。実は36歩~35歩は不要で、42銀と引いたところで詰んでいたのです。
これに気が付かず(気付きにくいかも)32銀成同玉42飛成

と追いかけたのですが、77馬の利きもあるし、詰まなくて後手の勝ちに終わりました。

後手は47香など横から攻めるのでは遅い(美濃囲いの堅い方から攻めている)ようです。27桂成

と捨ててみましょう。27同玉35桂36玉(28玉には24香がある)49竜同銀24銀

詰めろがかかり、26歩に33桂で受けがあるかどうか。後手は攻めるだけでよい、先手玉は安全な場所がない、という形ですから、後手が有利でしょう。

後手は24香と打っておくのもあります。

59金打に27桂成同銀同香成同玉35桂

今度は上に逃げると飛を切られて後手は金銀を持っているから負けです。


よって38玉

59飛成同金引(寄では詰み)47銀39玉27桂成28飛

なんとも危ない形ですが、これは難しそうです。


○ 大山先生の棋譜を毎日並べていますが、大山先生ならどう受けるか。これは36歩でしょう。

27桂成同玉15桂37玉

は先手玉を寄せにくいです。

戻って55馬には56金

54馬35歩36桂37玉28香

ではまだうるさそうですが、34歩からの寄せ合い(42銀同馬同金51飛)か、59金引から受けるか、で先手が良いです。

後手はもう少し強く27桂成

と捨てて、27同玉24香26歩44馬18桂14桂

と玉頭を攻めるのでしょうか。45歩26香37玉

美濃囲いの玉が上に逃げ出すと(歩の内側がよい)広いので余裕がありそうです。


× 59金打はずいぶん手堅そうで

89飛成など逃げてもらえば61馬66桂に67金


あるいは89飛成61馬24香62飛15桂16銀

と受けることができます。

でも59同飛成と切って

59同金寄24香36歩55馬

の時に飛しかないのです。やむなく56飛では同馬同歩27桂成同銀同香成同玉39飛

で寄せられてしまいます。


△ ということは持ち駒の金を温存して59金引

のほうが同飛成以下は受けやすいということになります。59同飛成同金24香36歩55馬

56金もありますが、強く35歩46馬37金36桂39玉57馬48歩

でも受かっているようです。


△ 59金寄だと

同飛成以下は先ほどの変化と同じです。89飛成61馬66桂

が嫌なので、金は引くほうが良さそうです。

もっとも銀を取らずに36歩

ならば66桂35歩36香37桂打

はまだまだ難しく、59金寄も疑問手というほどではなさそうです。


△ 最後は59飛と合わせる手。

59同飛成同金引は、59金打同飛成同金引と比べて持ち駒の飛金が入れ替わっているわけですが、飛よりも金を持っている方が受けやすい、という不思議な図です。
(24香36歩55馬35歩46馬37金)


ということで怖いのは24香36歩に27桂成同銀15桂

(すぐに27同香成とは後手の持ち駒が違ってくる)26歩27桂成同玉26香同玉

これで寄せられていてもおかしくないのですが、28飛27飛25銀37玉

で耐えています。


☆ まとめ

一直線の寄せ合いが負けそうだと読んだら(あるいは直感したら)どう指すか。

振り飛車党だとしたら、大山先生だったらどう指すか、と考えてみるのは面白いです。大山先生の美濃囲いは堅い、というのは中段に逃げ出した玉を捕まえにくい、というのを知っているからです。美濃囲いを再構築したり、離れた金銀を寄せたり、というテクニックもありました。
で、大山先生なら36歩だろうと思うのです。寄せ合いが勝ちかどうか、を読んで結論を出すのではなく、直前に35桂と打たれたのだから、言いなりに進めては嫌な感じがして、寄せてみなさい、と歩を突きだすのでしょう。

27桂成の筋はかなり危なくて、先に受けるほうが手堅いという原則は生きています。61馬と銀を取って36銀と埋める、のでは間に合いません。

玉頭方面に手を入れるなら36歩と突いて、後の35桂打を防ぐとともに桂取り(取るのも怖いですが)で催促しています。37玉とかわしてしまえばかなり耐久力があります。

持ち駒が金だと玉頭方面に打つ場所がなく、59金打、59金引、59金寄を検討することになります。飛車を逃げてもらえるなら1手儲けたようなもの(ならば金を打って銀を拾っておくのが手堅い勝ち方)ですが、切られた時には持ち駒に金を持っていたほうが良いのでした。

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