蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

仮想通貨革命

2014年08月10日 | 本の感想
仮想通貨革命 (野口悠紀雄 ダイヤモンド社)

1)ビットコインの仕組み(次の3段階で理解すべきという。うち、③がビットコイン独特の革命的アイディアとする)

①電子署名を用いてビットコインを送る。

→ビットコインは署名して受渡ししている(約束手形の裏書譲渡に似ている)。
改ざんやなりすまし防止のため、公開鍵暗号とハッシュ関数を用いた既存の電子署名を利用する。なお、補論の公開鍵暗号の仕組みの説明は、これまでに見たどんな解説よりもわかりやすかった。(というか、公開鍵暗号の仕組みがやっとこさ腹に落ちた)

②取引をP2Pネットワークで維持するブロックチェーンに記録する。

→ブロックチェーンは、二重使用を避けるための仕組み。普通の貨幣の世界では銀行がこの役目を果たして厳重な管理をしている。
全取引の記録を維持し公表する。取引記録はブロックを呼ばれ、不動産の登記簿に似ている。誰が正当な現在の所有者であるかを確認できるようにし、対価としての商品やサービスの受渡しをできるようにしている。

③ブロックチェーン改ざん防止のため、プルーフオブワークの計算を課する。

→各ブロックには、前のブロックのハッシュ(取引記録の要約)が記録されていて、そのハッシュ計算を解くある数(ナンス)を算出することがプルーフオブワークで、有効な解決アルゴリズムがないので総当たりで行うしかない。
ナンスを算出できた人(マイナーと呼ばれる)には報酬としてビットコインが与えらえる。なお、ナンスの算出は難しいが、それが正しいかどうかを検証すうことは容易。

ビットコインを偽造・改ざんしようとするとハッシュ値を変更しなければならない(ナンスの算出同様の手間がかかる)が、一つのブロックのみならず後続のブロックのハッシュ値を変更する必要もあり、膨大な手間(コンピューターパワー)を要する。
それほどのパワーをかけるくらいなら、偽造・改ざんするより、正直なマイナーになってビットコインを貰う方が合理的である。これがブロックチェーン改ざんの防止手段になっている。

2)電子マネーとの違い

①転々流通する(電子マネーは1回限り)。
② 中央管理主体が不要で運営コストが安い=送金等の手数料を低くできる。
③大量の送金、保有が可能。
④特定通貨にリンクしていないので、国際送金ができる。

3)今後の展開

①ビットコインは送金コストが安いので、小規模ビジネスに有利。現状の通貨のほとんどは預金通貨で通貨の移動コストが高い。特に国際送金の場合はLCの利用を強いられたりするし、為替スプレッドも取られる。銀行制度が発達していないアフリカなどで通貨革命が進んでいるのはこのため。

②ブロックチェーンの考え方を金融取引やエスクロー、さらには一般的な消費者契約にまで利用して手数料等のコスト低減を図ることができる。

③中央管理者がいなくても運営が可能な仕組みを利用すれば、(コストがかかる)マネジメント層が不要な自動化企業(DAC)が実現できる。



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