蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ゆれる

2007年11月02日 | 映画の感想
写真家の主人公は、母の法事で田舎の実家へ帰る。
実家では父と兄がガソリンスタンドを営んでいる。
主人公と兄はガソリンスタンドの従業員の女の子と山奥の川原へ出かけるが、兄と女の子は吊橋でもみあううち、女の子が橋から転落して死んでしまう。
後日、兄は自分が女の子を突き落としたと自首する。主人公はおじの弁護士と裁判で兄を無罪にしようとするが・・・

何が真実なのかわからなくなってしまう「藪の中」とか「事件」に似た筋立てで、この映画でも「真実」は最後まで明らかにされない。

テーマは兄弟の関係で、二人は表面上はとても良い関係なのだが、兄は写真家として都会で派手に活躍し女にもてる弟にジェラシーを感じていたことが、拘置所での面会で明らかになる。

弟もうわべは兄を敬っているのだが、兄に痛いところを突かれるとボロがでてしまう。それでも和解を予感させるラストシーンで映画は終わるのだが、この場面の解釈も人それぞれかもしれない。

主人公の父と弁護士である父の弟との間にも同じような兄弟の相克があることがほのめかされるが、この父役の伊武雅刀、弁護士役の蟹江敬三の演技が非常によい。役にはまりすぎていて怖いほどだ。

また、随所で(兄弟の実家の状況を象徴するシンボルとして)洗濯物がとても効果的に使われているのが印象的だった。

「ゆれる」の少し前にみた映画が「タブロイド」だった。人間や社会の二面性、「真実」の頼りなさとか相対性を描いたものとして通底するものがあった。「タブロイド」がどぎつくテーマを観客に突きつけてくるのに対して、「ゆれる」は穏やかにボンヤリと迫ってくる。民族性(とまでいうのはオーバーかもしれないが)がよく出ていると思った。

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