蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

邂逅の森

2007年03月17日 | 本の感想
邂逅の森(熊谷達也 文藝春秋)

大正―昭和初期の東北地方を舞台にマタギ(猟師)の一生を描く。
主人公はマタギとして一人前になった頃に地元の資産家の娘に手をつけたことを理由に故郷を追放され、銅鉱山で働くことになる。鉱山でも力量が認められるが、密猟をしていた同僚に刺激されて、自分の天職はマタギだと気づき、その同僚の故郷の村で再びマタギとなる。

印象的なエピソードを並べると・・・
①マタギは、真冬の山岳地帯で少数の仲間と野宿しながら長期間獲物を追いかける。
②雪の中でも数時間身じろきもせずに獲物を待つことができる。
③猟で鉄砲を使うことはあまりなく(銃弾が高価であるため)、多くはワナにかけたり、棒で叩き殺したりする。
④使用後の銃弾の薬莢は回収して、薬莢がまともな形をしている間は銃弾は自作する。しかし、薬莢は何度もつかうと狙ったところに行かなくなる。

昔のマタギの狩猟法や習慣が詳しく、生き生きと描かれているが、ストーリー展開ももたつくことはなく、テンポ良く進むので、とても読みやすい。二つの主要な文学賞を受賞していることにも素直に納得できる内容。

主人公は、日露戦争で狙撃兵であったという設定になっている。兵士としての物語は全く語られないが、「スゴ腕のマタギの狙撃兵」というテーマでの小説をぜひ読んで見たい。

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