蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ちいさな城下町

2017年11月28日 | 本の感想
ちいさな城下町(安西水丸 文春文庫)

城跡巡り(というか歴史全般)が趣味の著者が、あまり有名でない小さめの城跡を訪ね歩いた旅行記。

著者の本業はイラストレータで、村上春樹さんのエッセイ本の表紙絵、挿絵が有名だと思います。村上さんのエッセイにもご本人がよく登場しますが、そこでは酒好き、女好きのタダのおじさん、みたいな感じ。描く絵もいわゆるヘタウマ系かな(失礼!というかもう死語か)なんてイメージでした。

しかし、本書を読むと相当な読書家で歴史への造詣も深いことがうかがわれ、そう思って本書に収録された著者のイラストを見ると、妙に上品な感じに見えたりして、自分のいいかげんさに呆れます

本書は、全部で20の城跡を紹介していますが、訪ねる先の城や史跡とはあまり関係ない昔話から始まって、城に絡む武将の系譜やエピソードを解説し、城跡や周辺の街の様子を描写する、というパターンが多くなっています。
最初のまくら的な思い出話の部分が一番面白くて、この部分をもっと長くしてくれればいいのに、なんて思えました。
中盤の歴史解説が(多分、正確に書こうと意識されたためと思われますが)硬い漢字で、街の様子の紹介は、まあ、普通から、という感じでした。

雑誌連載されていたそうなので、場所の選定や実際の訪問は計画的に行われていたと思われますが、いかにも思いつきで電車や飛行機に乗って日帰りか一泊で帰ってきました、というムードが醸し出されているのがなんともユル~い感じで、(最近トシのせいで、若い頃は全く興味がわかなかった名所・旧跡などを訪ねることが楽しくなってきたこともあり)つい自分でも行ってみたくなります。特に駅の観光案内書でマップをもらって行先を決めるあたりが、いいなあ、と思えました。
また、ありがちなグルメ方面に傾くことなく、食事シーンがそっけないのも却って好感が持てました。

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