sachiclinic's blog

すこやかな毎日を迎える日のために

初めに(第5回)

2014-12-29 21:36:31 | 日記
我が子の経験を通して理解したことは、子どもの薄い皮膚は成長期にあれこれと乾燥したり、かゆくなったりするものなの。そして、ステロイド依存になり易いということ。
きっとどの子も。

帰国してから、皮膚科医療現場に戻りました。
その後はステロイドを使わないアトピー治療をあれこれと模索する毎日でした。ステロイド治療を受けてきた方は、ステロイドの中止による離脱皮膚炎に苦しまれますし、離脱皮膚炎が終わった後も、いろいろな皮膚のトラブルが続く方もあります。

お母さん達は、子どものかゆみが一体いつ治るのか、何もぬらないで何故治るのか、不安を持っておられました。患者さんにとってベストな治療は何か、これからも考えていきたいと思います。

2003年に独立開業して10年を過ぎました。
「こんなに良くなりました」とお子さんを連れてこられます。「本当にどうなるかと思っていたのに、こんなにきれいになりました」お母さんはニコニコです。私も嬉しく思い「お母さんの努力で良くなられました。本当によく頑張られました。」とお話しします。

魔法の薬を使ったわけではありません。魔法の薬は、魔法の世界にしかありません。治るために必要と思う生活スタイルの事や皮膚のことをお話ししてきました。子供たちが治っていったのは、お話ししたことを理解くださり、アトピっ子の毎日を見守ってくださったお母さんお父さんの力です。
アトピーは自然治癒していきます。

ステロイドは使わないほうが、早くきれいになっていくように思います。ステロイドを使用している方は、急に中止できる場合と、急に中止すると子どもが(時にはお母さんが)とても困ってしまう場合がありますから、その子の持っている力に応じて、生活環境の見直しをしながら、ステロイドを使わなくても良い強い皮膚になるよう、できることから取り組んで行っていただいています。

アトピーが治るために必要なことを、良くなった患者さん達の体験などを通して、本のなかでお伝えしていきたいと思います。

5回にわたり、お伝えしたさち先生の出版予定の本の初めに部分のご紹介を終わります。今年もブログをご覧いただきありがとうございました。

来年も、お役に立てる内容をお知らせしていきたいと思います。正月3が日は寒くなりそうです心も体も温かい楽しいお正月をお過ごしください

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初めに(第4回)

2014-12-23 14:56:53 | 日記
とても元気で、何一つ大病をしたことはない3才の女の子。なぜかゆい?
 その頃、夫が仕事でアメリカへ行くことになった。「子どもと1日中過ごしてアトピ-の原因をつかむチャンスだ」と考え、私は退職し、夫と子ども3人(長女4歳)を連れてサンフランシスコへ行った。
 毎日子どもと過ごして解った事は、「昼間はとても元気」ということ。「これはおかしい?病気であればこんなに元気な訳がない」
 通ったサンフランシスコの保育園で偶然、ひどいアトピっ子に出会った。中国人とドイツ人の混血。母親にザジテンを勧めると「この子は軽いアトピーだった。悪化したときに小児病院へ行ったら、ステロイドの注射をされた。その翌日にピカピカになったが、1週間後にはこのざまだ。もう二度と病院に行く気はない。どの薬も使いたくない」(英語だったので、細かい表現は違いますが、おおよその内容でした。)
 そうか!わが子のステロイド外用剤を止めることができず、効果がないザジテンを気休めで続けていた私は、24時間娘と一緒に過ごして元気な様子を目の前にして、「今日からはステロイドを塗らない」と決めた・・・一抹の不安を抱えながら。

 卒後数年の頃、全身にデルモベート(、最強のステロイド)を塗り続けていた尋常性乾癬の患者さんがいた。薄く萎縮した皮膚は机の角にあたるだけで破れ、縫合しても縫合糸で縫った端からまた簡単に皮膚が破れてしまう。あるときその患者さんは風邪で体調を崩し、1週間外用ができなくなった後に多臓器不全で亡くなった。風邪で寝込んだために、デルモベートの外用ができずに生じた副腎不全だったのだろう。長期にステロイドを外用する怖さを見ていたので、子どもにステロイドは悪化している部位に薄くしか塗ることができずにいた。皮膚科に娘を連れて行けば、「外用が足らない」と怒られたであろう。駆け出しの医者の頃、アトピーの患者さんの治療には全身にステロイドの外用を指導され、実際に治療として行い、患者さんに指導もしていたけれども・・・わが子には使いたくなかった。
(本当に無責任な皮膚科医でした・・今は深く反省しております)

 結局、アメリカの地でステロイド外用の中止を行った。幸いなことに離脱皮膚炎はなく、一か月過ぎにはアトピーの症状はきれいに消えた。嫌だと思いながら塗っていたので、ステロイドの使用量が少なかったため、中止後の離脱皮膚炎も起きなかったと思われる。ステロイドをやめたとき、ほかの保湿剤は何もぬらなかった。
 今にして思えばきっきの痒みの原因は「ごく軽いステロイド依存」だったと思う。(続く)
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初めに(第3回)

2014-12-14 20:52:21 | 日記
その後、わが子二人にアトピーの症状がでました。次女が3歳のとき、夏に海水浴ですっかり日焼けして真っ黒だった子が秋に涼しくなってきたときに、がさがさかゆみがでてきました。そのころは入浴で石鹸も使用していましたし、毎日ロコイドとか、リンデロンとか「恐る恐る」使っていました。ステロイドを我が子に塗るのは嫌なことでした。次女のアトピーはあれよあれよと全身に広がり、冬には夜中中掻き毟るようになっていました。冬に1歳の長男も関節のかゆみがありました。ちょっと湿疹がでやすかったのです(目の横がきれるとか)けど、こちらは放っておきました。
その頃のことを、「薬のチェックは命のチェック31号」に書きました。一部を修正して以下に掲載します。我が子がアトピーになって、初めて真剣になったなんて、お恥ずかしい話です。言い訳をしますと、我が子には特別な思いがありましたから「薬でコントロールする」という選択はありませんでした。

初めて真剣にアトピー治療に取り組んだ皮膚科医・・・我が子だったから。

「きっき」(娘の愛称)が3歳になった秋、突然痒みがはじまった。乳児湿疹も出ていたので、皮膚の弱い子だったのかもしれない。3才の夏に海水浴に行ってよく日焼けした皮膚がむける頃に痒みを訴えた。
痒がるわが子に少量のステロイド外用剤を塗布した。毎日痒がるので痒い部分にステロイドを外用して、保育園へ行かせた。薬を塗るとそのときは良いが、夜になるとまたあちこちに出没する湿疹を不思議に思い、ロコイド(ステロイドマイルドランク)を続け、よくなれば亜鉛化(保護剤)にし、症状の強いときは思い切ってネリゾナ(ベリーストロングのステロイド)を使い、毎日あれこれ悩みながらsteroid外用剤を繰り返した。皮膚科医になって8年目、皮膚科専門資格をとったあとだ。

 その年の暮れ「アトピー性皮膚炎」の症状がきれいにそろった。乾燥と痒み、関節の湿疹、夜の掻破(そうはと読む。掻き毟ること)。抗アレルギー剤といわれる抗ヒスタミン剤をあれこれ飲ませ、漢方も「アトピーに良い」といわれるものは3歳の子に機嫌をとったり怒ったりしては飲ませていた。
「あの頃、お母さんが飲めって言うから、漢方飲んどったんよ。薬を飲まないと、お母さんすごく恐くなるけん」と18歳になった時に「きっき」が言った。
「きっき」とほぼ同じ頃、1歳の誕生日を迎えた「くんくん」(むすこの愛称)にも湿疹が始まった。関節の痒みだ。「くんくん」はよく太っていて、泣くと目の横が切れたり、身体の皮膚もガサガサしていたが、3番目になると私もあまり気にならず、放置していた。放置されたくんくんは大きな問題なく過ごした。
 冬になるころには「きっき」は夜中全身を掻きむしり、本人は掻きながら寝ているのだけれど、掻きむしる音で私は熟睡できない。私の頭の中には寝ても覚めても「何故アトピーが治らないのか」という思いが消えなくなった。
 「原因は何?ダニか、衣類か」「今日は何を塗ろうか、ネリゾナは強いか、ロコイドでも赤味が引くか」。毎日毎日、同じ考えがぐるぐる回る。「もしかしたらザジテン(抗アレルギー剤と呼ばれる抗ヒスタミン剤 当時は新しい薬だった)を続ければ治るか」「この漢方は3歳の子にはどの量が最適か」。最後には「きっと熟睡するだろう」とセルシン(!)さえ飲ませた。

編集部注:セルシン(睡眠鎮静剤・抗不安剤)効果として、神経症における不安・緊張・抑うつ 、うつ病における不安・緊張、心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ など   (続く)
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