※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣(2019)「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「第9章 アメリカの経営文化」(その5)
(7)-5 1970年代・1980年代の激変(続2):ファブレス・ファウンドリー方式(テキサス州ヒューストンの企業コンバック)!アメリカ国内企業の空洞化!(173-174頁)
S もう一つの技術革新の中心地テキサス州ヒューストンの企業コンバックがファブレス・ファウンドリー方式と呼ばれるビジネスモデルを創りだした。
S-2 自らは工場を持たないファブレスとなり、ファウンドリーに外注(アウトソーシング)し、生産させる。
※1.ファブレス(fabless)はfab(fabrication facility、工場)を持たない会社のこと。半導体の設計は行うが生産ラインを持たない。
※2.ファウンドリー(foundry)(Cf. 本来、鋳物工場の意味)は半導体関連製品の受託製造を専門とする会社。
S-3 ファブレス・ファウンドリー方式は、コストを著しく低下できる。
S-4 最初はファウンドリーはアメリカ国内サプライアーであったが、後にシンガポール、韓国、台湾、中国などの企業がファウンドリー企業となった。
S-5 アップルなど、シリコンヴァレー企業も直ちに追随。ハイテク企業は、ファブレス・ファウンドリー・モデルによってコスト削減した。これは脱統合化、大企業解体の流れだ。
S-6 こうしてアメリカ国内の製造業の空洞化が促進された。
S-7 また経営者企業の解体(大企業解体)の流れは、経営者企業のブルーカラーにあった先任権ルール(ファーストカム・ラーストリーブ原則)や、それに基づく愛社精神的企業文化を失われせていった。
(7)-6 1970年代・1980年代の激変(続3):海外への工場移転(産業の空洞化)!南部への産業重心のシフト(北から南へ)!ラストベルトの労働者の絶望!(174-175頁)
T 1970年代以降、北部ではUSW(米鉄鋼労組)、UAW(米自動車労組)など産別組合が強かった。かくて、労組の既得権に阻まれ①新しい技術革新がスムーズに導入されず、また②南部の自由労働州(クローズドユニオンを禁止する、right to workを認める、Ex. ケンタッキー州、テネシー州)への工場建設もできず、③日本企業の後塵を拝することがしばしばだった。(Ex. GM)
T-2 他方で北部の労働者は、(a)海外への工場移転(産業の空洞化)、(b)南部への産業重心のシフト(Ex. テキサスのハイテク産業、石油産業の活況)によって、高い失業率そして「孤立した個人主義」(ボランティア活動をするゆとりもなくなった状況)に追い込まれている。
T-3 ミシガン州、オハイオ州などの「ラストベルト」の絶望した労働者が、実現しそうもない希望を抱いて、2016年大統領選挙でトランプに投票した。(Cf. ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』参照。)
(7)-7 1970年代・1980年代の激変(続4):経営者資本主義の崩壊と中産層の崩壊!(175-177頁)
U アメリカ社会は、19世紀後半、大企業が登場して以降、それに伴って新しく勃興した技師やホワイトカラーの中間層によって支えられてきた社会だ。そして1950年代・1960年代は、経営者資本主義の隆盛とぶ厚い中間層の時代だ。
U-2 しかし1970年代・1980年代、経営者資本主義が崩壊した。すなわち第3次産業革命以降、新しく生み出された経営文化は、(ア)エリート大学・大学院教育を受けた一部のホワイトカラー層には恵みだったが、(イ)大多数のブルー・カラー労働者や、高学歴でないホワイトカラー層には、所得の低下、頻繁な転職という下方への激変をもたらした。
U-3 北部の自動車、鉄鋼などの産業では、ブルーカラーもかなり高給だったが、そうした産業が不振となり、工場閉鎖や失業が発生した。(ラストベルト!)彼らは、スーパーマーケット(Ex. ウォルマート)やガソリンスタンドなど流通サービス業に勤めざるを得なくなった。給料は半減どころか3分の1以下になった。
V かつてアメリカは、19世紀前半、トクヴィルが描いた時代以来、個人主義だけでなく団体主義が力を持っており、20世紀中葉、経営者資本主義の時代まで、そのようなゆとりがあった。(1950年代、60年代!)
V-2 だが第3次産業革命以降、1970年代・1980年代になると①経営者資本主義が崩壊し、②中間層が解体し、③ボランティアや団体活動を行うゆとりがなくなった時代となった。さらに悪いことに④家族の絆が弱くなり、⑤宗教心も減退し、⑥「孤独な群衆」、孤立した個人主義の時代となった。
V-3 かくてアメリカは、かつての「高信頼社会」から「低信頼社会」へ、さらに家族への信頼も低下し、最悪の「低信頼社会」へと、アメリカの社会(Ex. 経営文化)は変貌した。
(7)-5 1970年代・1980年代の激変(続2):ファブレス・ファウンドリー方式(テキサス州ヒューストンの企業コンバック)!アメリカ国内企業の空洞化!(173-174頁)
S もう一つの技術革新の中心地テキサス州ヒューストンの企業コンバックがファブレス・ファウンドリー方式と呼ばれるビジネスモデルを創りだした。
S-2 自らは工場を持たないファブレスとなり、ファウンドリーに外注(アウトソーシング)し、生産させる。
※1.ファブレス(fabless)はfab(fabrication facility、工場)を持たない会社のこと。半導体の設計は行うが生産ラインを持たない。
※2.ファウンドリー(foundry)(Cf. 本来、鋳物工場の意味)は半導体関連製品の受託製造を専門とする会社。
S-3 ファブレス・ファウンドリー方式は、コストを著しく低下できる。
S-4 最初はファウンドリーはアメリカ国内サプライアーであったが、後にシンガポール、韓国、台湾、中国などの企業がファウンドリー企業となった。
S-5 アップルなど、シリコンヴァレー企業も直ちに追随。ハイテク企業は、ファブレス・ファウンドリー・モデルによってコスト削減した。これは脱統合化、大企業解体の流れだ。
S-6 こうしてアメリカ国内の製造業の空洞化が促進された。
S-7 また経営者企業の解体(大企業解体)の流れは、経営者企業のブルーカラーにあった先任権ルール(ファーストカム・ラーストリーブ原則)や、それに基づく愛社精神的企業文化を失われせていった。
(7)-6 1970年代・1980年代の激変(続3):海外への工場移転(産業の空洞化)!南部への産業重心のシフト(北から南へ)!ラストベルトの労働者の絶望!(174-175頁)
T 1970年代以降、北部ではUSW(米鉄鋼労組)、UAW(米自動車労組)など産別組合が強かった。かくて、労組の既得権に阻まれ①新しい技術革新がスムーズに導入されず、また②南部の自由労働州(クローズドユニオンを禁止する、right to workを認める、Ex. ケンタッキー州、テネシー州)への工場建設もできず、③日本企業の後塵を拝することがしばしばだった。(Ex. GM)
T-2 他方で北部の労働者は、(a)海外への工場移転(産業の空洞化)、(b)南部への産業重心のシフト(Ex. テキサスのハイテク産業、石油産業の活況)によって、高い失業率そして「孤立した個人主義」(ボランティア活動をするゆとりもなくなった状況)に追い込まれている。
T-3 ミシガン州、オハイオ州などの「ラストベルト」の絶望した労働者が、実現しそうもない希望を抱いて、2016年大統領選挙でトランプに投票した。(Cf. ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』参照。)
(7)-7 1970年代・1980年代の激変(続4):経営者資本主義の崩壊と中産層の崩壊!(175-177頁)
U アメリカ社会は、19世紀後半、大企業が登場して以降、それに伴って新しく勃興した技師やホワイトカラーの中間層によって支えられてきた社会だ。そして1950年代・1960年代は、経営者資本主義の隆盛とぶ厚い中間層の時代だ。
U-2 しかし1970年代・1980年代、経営者資本主義が崩壊した。すなわち第3次産業革命以降、新しく生み出された経営文化は、(ア)エリート大学・大学院教育を受けた一部のホワイトカラー層には恵みだったが、(イ)大多数のブルー・カラー労働者や、高学歴でないホワイトカラー層には、所得の低下、頻繁な転職という下方への激変をもたらした。
U-3 北部の自動車、鉄鋼などの産業では、ブルーカラーもかなり高給だったが、そうした産業が不振となり、工場閉鎖や失業が発生した。(ラストベルト!)彼らは、スーパーマーケット(Ex. ウォルマート)やガソリンスタンドなど流通サービス業に勤めざるを得なくなった。給料は半減どころか3分の1以下になった。
V かつてアメリカは、19世紀前半、トクヴィルが描いた時代以来、個人主義だけでなく団体主義が力を持っており、20世紀中葉、経営者資本主義の時代まで、そのようなゆとりがあった。(1950年代、60年代!)
V-2 だが第3次産業革命以降、1970年代・1980年代になると①経営者資本主義が崩壊し、②中間層が解体し、③ボランティアや団体活動を行うゆとりがなくなった時代となった。さらに悪いことに④家族の絆が弱くなり、⑤宗教心も減退し、⑥「孤独な群衆」、孤立した個人主義の時代となった。
V-3 かくてアメリカは、かつての「高信頼社会」から「低信頼社会」へ、さらに家族への信頼も低下し、最悪の「低信頼社会」へと、アメリカの社会(Ex. 経営文化)は変貌した。