(只野ハル)
○ 絶え間なく光届かぬ深海にマリンスノーは降り沈みゆく
詠い出しの五音「絶え間なく」の位置がやや不安定と思われましたので、いろいろと試行錯誤してはみましたが、結論的には、このままでも宜しいかと思われます。
〔返〕 深海にひかり届かぬ真昼間マリンスノーは降り沈みゆく 鳥羽省三
(吾妻誠一)
○ 落ち行けばこの深淵を抜け出すか 天地無用のラベル探す日
パラドックスの具体例として直ぐに思い付くのは、私の小学校時代の恩師・原賀達哉先生のお言葉「私は差別主義者が大嫌いだ!」という言葉、もう一つ挙げると、同じ原賀達哉先生の「明日の二時間目に算数の抜き打ちテストを行います」という言葉である。
本作の「落ち行けばこの深淵を抜け出すか」という上の句は、私の恩師・原賀達哉先生の名言に勝るとも劣らない、パラドックスを伴った言葉である。
ところで、作中に見られる「天地無用のラベル」とは、「この荷物を逆さまにしてはいけません」と、いうメッセージを運搬者などに伝える為に、割れ物などの荷物を入れたダンボール箱などの上面や側面に貼る「ラベル」である。
と言うことは、本作に於いて作者の吾妻誠一さんは、ささやかなインチキを伴った魔法を使っていることになりましょうか?
何故ならば、「天地無用のラベル」が私の説明したような性質のものであったとしたならば、それを貼った箱の中に入れられながら落ちて行った者は何処までも落ちて行くばかりで、永久に「深淵」の底から這い出すことが出来ないような仕掛けになっているからである。
現実世界に於いては、落ちて行った者が永久に救われない仕掛けを形作っている重要な要素が「天地無用のラベル」なのであるが、本作の作者は其処のところを誤解ないしは曲解して、この仕掛けを、恰も砂時計のような仕掛けとして扱い、「落ち行けばこの深淵を抜け出すか」と言っているのである。
〔返〕 行けどなほコンクリート造りの畦道で我はたぢろぐ憩ふ術なく 鳥羽省三
本作の作者・吾妻誠一さんの御ブログのタイトルは「コンクリート畦道」である。
(珠弾)
○ からだ深く沈めて湯舟敏郎のニヒルを口の端に浮かべて
本作の作者・珠弾さんは、一日の労働に疲れた心身を休める為に、自分の「からだ」を「湯舟」に「深く沈めて」いるのであるが、彼は無類のプロ野球ファンであり、しかもアンチ巨人派であるから、その思いは、どうしてもかつて阪神タイガースの投手として鳴らした「湯舟敏郎」へと馳せ向かってしまうのでありましょう。
後半の七七句が「ニヒルを口の端に浮かべて」となっているが、「ニヒルを口の端に浮かべて」、たらたらとした態度でスライダーやフォークやカーブを自由自在に投げ分け、並み居る巨人軍の強打者たちから三振を取るのが、彼・湯舟敏郎の最大の魅力であったことを私も記憶して居ります。
〔返〕 ニヒルさは湯舟に負けぬ者なれば珠弾の詠むのはひねくれ短歌 鳥羽省三
(さとうはな)
○ 伝わらぬ言葉の多さ木蓮の若木に深く水遣りをする
本作の作者のさとうはなさんは、「木蓮の若木に深く水遣り」をしたからといって、決して「伝わらぬ言葉の多さ」が解消されるとは思ってもいないのであるが、それでも尚かつ、悩み多き日は「木蓮の若木に深く水遣り」をしたくなるような衝動に駆られるのでありましょう。
〔返〕 貝がらの小舟に一首の歌を載せ山の彼方に流しましょうか 鳥羽省三
さとうはなさんの御ブログのタイトルは「貝がらの小舟」である。
(矢野理々座)
○ あなたとの距離が次第に近づいてどの辺りから深い仲なの?
「お臍の下20cmの辺りから」といった具合に、具体的な数字を示してお答えすれば宜しいのでありましょうが、何分、あちら方面のことについては不勉強なものですから、ご希望に添いかねます。
〔返〕 あなたとの隔たりが狭くなり過ぎてお臍の辺りが痒くなっちゃう 鳥羽省三
(かげいぬ)
○ 君の中の“立入禁止”を突破して深入りしてる僕を感じて
本作の作者の場合も、「あなたとの隔たりが狭くなり過ぎてお臍の辺りが痒くなっちゃう」と、彼女に言わせたい口なのでありましょうか?
〔返〕 君の躰の挿入禁止の立札を無視して我は心地良くなる 鳥羽省三
(磯野カヅオ)
○ 学帽を目深にかぶる少年のステンカラーに降る春の雪
作中の「ステンカラー」とは、男性用の外套の一種、即ち「ステンカラーコート」を指して言うのでありましょうか?
だとしたら、「学帽を目深にかぶる少年のステンカラーに降る春の雪」とは、貧乏百姓の小倅の私にとっては、あまりにも羨ましい光景である。
〔返〕 降る雪や大正ロマンは遠くなりステンカラーを私は持たない 鳥羽省三
(あみー)
○ ぽっかりと心にあいている穴の深いところをくすぐってやる
「ぽっかりと心にあいている穴の深いところをくすぐって」やったとしたら、満たされない彼の心が、幾分かは満たされるのでありましようか?
〔返〕 ぽっかりと彼の心に空いている深い洞穴弄って遣れ 鳥羽省三
○ 絶え間なく光届かぬ深海にマリンスノーは降り沈みゆく
詠い出しの五音「絶え間なく」の位置がやや不安定と思われましたので、いろいろと試行錯誤してはみましたが、結論的には、このままでも宜しいかと思われます。
〔返〕 深海にひかり届かぬ真昼間マリンスノーは降り沈みゆく 鳥羽省三
(吾妻誠一)
○ 落ち行けばこの深淵を抜け出すか 天地無用のラベル探す日
パラドックスの具体例として直ぐに思い付くのは、私の小学校時代の恩師・原賀達哉先生のお言葉「私は差別主義者が大嫌いだ!」という言葉、もう一つ挙げると、同じ原賀達哉先生の「明日の二時間目に算数の抜き打ちテストを行います」という言葉である。
本作の「落ち行けばこの深淵を抜け出すか」という上の句は、私の恩師・原賀達哉先生の名言に勝るとも劣らない、パラドックスを伴った言葉である。
ところで、作中に見られる「天地無用のラベル」とは、「この荷物を逆さまにしてはいけません」と、いうメッセージを運搬者などに伝える為に、割れ物などの荷物を入れたダンボール箱などの上面や側面に貼る「ラベル」である。
と言うことは、本作に於いて作者の吾妻誠一さんは、ささやかなインチキを伴った魔法を使っていることになりましょうか?
何故ならば、「天地無用のラベル」が私の説明したような性質のものであったとしたならば、それを貼った箱の中に入れられながら落ちて行った者は何処までも落ちて行くばかりで、永久に「深淵」の底から這い出すことが出来ないような仕掛けになっているからである。
現実世界に於いては、落ちて行った者が永久に救われない仕掛けを形作っている重要な要素が「天地無用のラベル」なのであるが、本作の作者は其処のところを誤解ないしは曲解して、この仕掛けを、恰も砂時計のような仕掛けとして扱い、「落ち行けばこの深淵を抜け出すか」と言っているのである。
〔返〕 行けどなほコンクリート造りの畦道で我はたぢろぐ憩ふ術なく 鳥羽省三
本作の作者・吾妻誠一さんの御ブログのタイトルは「コンクリート畦道」である。
(珠弾)
○ からだ深く沈めて湯舟敏郎のニヒルを口の端に浮かべて
本作の作者・珠弾さんは、一日の労働に疲れた心身を休める為に、自分の「からだ」を「湯舟」に「深く沈めて」いるのであるが、彼は無類のプロ野球ファンであり、しかもアンチ巨人派であるから、その思いは、どうしてもかつて阪神タイガースの投手として鳴らした「湯舟敏郎」へと馳せ向かってしまうのでありましょう。
後半の七七句が「ニヒルを口の端に浮かべて」となっているが、「ニヒルを口の端に浮かべて」、たらたらとした態度でスライダーやフォークやカーブを自由自在に投げ分け、並み居る巨人軍の強打者たちから三振を取るのが、彼・湯舟敏郎の最大の魅力であったことを私も記憶して居ります。
〔返〕 ニヒルさは湯舟に負けぬ者なれば珠弾の詠むのはひねくれ短歌 鳥羽省三
(さとうはな)
○ 伝わらぬ言葉の多さ木蓮の若木に深く水遣りをする
本作の作者のさとうはなさんは、「木蓮の若木に深く水遣り」をしたからといって、決して「伝わらぬ言葉の多さ」が解消されるとは思ってもいないのであるが、それでも尚かつ、悩み多き日は「木蓮の若木に深く水遣り」をしたくなるような衝動に駆られるのでありましょう。
〔返〕 貝がらの小舟に一首の歌を載せ山の彼方に流しましょうか 鳥羽省三
さとうはなさんの御ブログのタイトルは「貝がらの小舟」である。
(矢野理々座)
○ あなたとの距離が次第に近づいてどの辺りから深い仲なの?
「お臍の下20cmの辺りから」といった具合に、具体的な数字を示してお答えすれば宜しいのでありましょうが、何分、あちら方面のことについては不勉強なものですから、ご希望に添いかねます。
〔返〕 あなたとの隔たりが狭くなり過ぎてお臍の辺りが痒くなっちゃう 鳥羽省三
(かげいぬ)
○ 君の中の“立入禁止”を突破して深入りしてる僕を感じて
本作の作者の場合も、「あなたとの隔たりが狭くなり過ぎてお臍の辺りが痒くなっちゃう」と、彼女に言わせたい口なのでありましょうか?
〔返〕 君の躰の挿入禁止の立札を無視して我は心地良くなる 鳥羽省三
(磯野カヅオ)
○ 学帽を目深にかぶる少年のステンカラーに降る春の雪
作中の「ステンカラー」とは、男性用の外套の一種、即ち「ステンカラーコート」を指して言うのでありましょうか?
だとしたら、「学帽を目深にかぶる少年のステンカラーに降る春の雪」とは、貧乏百姓の小倅の私にとっては、あまりにも羨ましい光景である。
〔返〕 降る雪や大正ロマンは遠くなりステンカラーを私は持たない 鳥羽省三
(あみー)
○ ぽっかりと心にあいている穴の深いところをくすぐってやる
「ぽっかりと心にあいている穴の深いところをくすぐって」やったとしたら、満たされない彼の心が、幾分かは満たされるのでありましようか?
〔返〕 ぽっかりと彼の心に空いている深い洞穴弄って遣れ 鳥羽省三