臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の朝日歌壇から(9月29日掲載・其のⅣ)

2014年09月29日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]

(可児市・林寿鶴子)
〇  たよりない葉をひたすらに母胎とし月下美人は輝いて咲く

(横浜市・飯島幹也)
〇  認知症なる母何故か雨の夜に灯台をまた見たがる晩夏

(可児市・豊田正己)
〇  公園の猿とは違ふ貌をして罠に掛りし日本猿の子

(富山市・松田わこ)
〇  初サンマゆっくりじゅわっと味わって私から秋に近づいてゆく

(市川市・小田優子)
〇  誰一人せかしておらねどととととと生き急ぐごとき鳩の歩みは

(大津市・森翔吾)
〇  恋文も写真も全部消したのにきみはなかなか消えてくれない

(舞鶴市・吉富憲治)
〇  部員皆沖へ漕ぎ出でがらんどう艇庫に犬の繋がれいたる

(アメリカ・郷隼人)
〇  一滴の雨も降らずに五カ月余カリフォルニアに雨乞いの祈り

(小美玉市・津嶋修)
〇  みんみんの頻りに鳴くを背後にし喪のネクタイを緩めつつをり

(下野市・若島安子)
〇  いわし雲待受画面(まちうけ)いっぱい浮かす時故郷の浜の地曳網顕つ

今週の朝日俳壇から(9月29日掲載・其のⅠ)

2014年09月29日 | 今週の朝日俳壇から
[長谷川櫂選]

(みよし市・稲垣長)
〇  丸谷頑亭逝きこの方の大長夜

 〔返〕 丸谷頑亭来てこの夜の長談義  


(城陽市・山仲勉)
〇  名刀の錆びたるごとく秋刀魚焼く

 〔返〕  名刀の錆びたる如く生きにけり


(いわき市・星野みつ子)
〇  律といふ菩薩ありけり獺祭忌

 〔返〕  冬越しの妹ひとり名は律女


(山梨県市川三郷町・笠井彰)
〇  月の客みな銀の鞍に乗り

 〔返〕  娘みな銀の鞍置き嫁ぎたし  


(ドイツ・ハルツォーク洋子)
〇  登高や墨絵にしたきライン河

 〔返〕  登高は杜甫の律詩の題なりき  

 
(玉野市・勝村博)
〇  空蝉や一枚の葉を羽交絞め

 〔返〕  空蝉の一夜眠らん膝を抱き


(横浜市・多海本日出子)
〇  昔ほど数まとまらず稲雀

(横浜市・津田壽)
〇  ここまでは上司は来ぬや大花野

(三鷹市・村井田貞子)
〇  台風の外れたる闇の深さかな

(飯塚市・釋蜩硯)
〇  八木山の名水吸ひて梨実る

今週の朝日俳壇から(9月29日掲載・其のⅡ)

2014年09月29日 | 今週の朝日俳壇から
[大串章選]

(さいたま市・久保田恵子)
〇  露の世に激しく乳を求めけり

(新座市・渡辺真智子)
〇  晩秋やすべて許して眠らんと

(栃木県野木町・小林たけし)
〇  一斉に稲穂手に振り熱気球

(磐田市・谷公子)
〇  さわやかに育つ二齢の頭脳かな

(熊本市・西美愛子)
〇  誰よりも花野の風に長居して

(津市・中山いつき)
〇  猪は牙より眠る十三夜

(横須賀市・久留宮怜)
〇  星月夜獅子を描きし古代人

 〔返〕  星月夜四肢をもて吾抱きをり

(八王子市・斎賀勇)
〇  ヒーローになりきつてゐる木の実独楽

(東京都・望月喜久代)
〇  阿波踊はじけてくると云うて出る

(敦賀市・村中聖火)
〇  望の夜や山に逝きたる人のこと

今週の朝日俳壇から(9月29日掲載・其のⅢ)

2014年09月29日 | 今週の朝日俳壇から
[稲畑汀子選]

(長野市・縣展子)
〇  だんだんと大秋晴となりし旅

(西宮市・竹田賢治)
〇  攻める蚊と防ぐ我あり一休寺

 〔返〕  攻める蚊と叩く我あり神宮前
(熊本市・山澄陽子)
〇  蝉時雨消えて耳鳴り残りけり

 〔返〕  父逝きて借財数億残りけり

(大阪市・山田天)
〇  どこまでも高き青空桐は実に

 〔返〕  何処までも高き人格山田天

(福山市・広川良子)
〇  雲一朶月の過客でありにけり

 〔返〕  後三日経てば過客も過ぎ往くに

(三鷹市・村井田貞子)
〇  台風の外れたる闇の深さかな

(土浦市・栗田幸一)
〇  旅人の浮いて沈んで芒原

(敦賀市・村中聖火)
〇  名月や地球を統べて天心に

(立川市・三好忠則)
〇  芋虫に明日蝶になるこころざし

(芦屋市・高杉靖子)
〇  金水引束ね秋草らしくなる

今週の朝日俳壇から(9月29日掲載・其のⅣ)

2014年09月29日 | 今週の朝日俳壇から
[金子兜太選]

(熊谷市・時田幻椏)
〇  灯に蝉の闇に虫鳴く命かな

(長岡市・内山秀隆)
〇  蚊帳の果て最後は一人ただ一人

(養父市・足立威宏)
〇  満月に力瘤見せ老農夫

(福島県伊達市・佐藤茂)
〇  死蔵書の斯くながらへて夜長あり

(三郷市・岡崎正宏)
〇  九条は自己主張する天高し

(みよし市・稲垣長)
〇  秋の暮生き足りしとも足らずとも

(伊丹市・保理江順子)
〇  白粉の花に早起き鼻キッス

(長崎市・濱口星火)
〇  雲仙の蝉は美声と運転士

(船橋市・斉木直哉)
〇  午後の果日差しの果や虫の声

(福島市・渡辺恭彦)
〇  徴兵の時代来るかも曼珠沙華

今週の朝日歌壇から(9月22日掲載・其のⅠ)

2014年09月29日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]

(八王子市・相原法則)
〇  家にいる子はだれだろう電話からカバンおとす音鷺の哭くこえ

 「家にいる⇒子はだれだろう⇒電話から⇒カバンおとす音⇒鷺の哭くこえ(が聴こえる)」といった、定型に則りながらも、架空の誰かに向って語り掛けているような語り口、即ち、短歌らしからぬ言葉の運びが、口語時代の短歌らしいリズムを感じさせて抜群に宜しい。
 〔返〕  親の無い娘がマッチを売ろうとす場面に在っても安倍は手を振る


(いわき市・馬目弘平)
〇  棄てられし河豚の子海へ放たれて振り向きもせず真っ直ぐ潜る

 相手が、食い意地の張ったいわき市の住民であったら食べられてしまうかも知れない。
 そこで、「河豚の子」は「海へ放たれ」るや否や、後を「振り向きもせず」にすたこらさっさと「真っ直ぐ」に海底へと「潜る」のでありましょう。
 〔返〕  被災地の海であっても増しなのさ!いわき市民に食べられるより!


(富山市・松田梨子)
〇  高校まで徒歩で七分今のところトキメキはなくて穏やかな道
 
 先週の「永田和宏選」の入選作として、「恋までもゆずってしまうねえちゃんにあきれる私とママとひぐらし」という、松田わこさん作の佳作が掲載されていた事は、私たち朝日歌壇の読者にとっては、未だ記憶している事であり、件の作中の「ねえちゃん」とは、本作の作者・松田梨子さんを指して言う事も亦、私たちが承知している事でありましょう。
 その「ねえちゃん」たる松田梨子さんの今週の入選作が「高校まで徒歩で七分今のところトキメキはなくて穏やかな道」とは、真に摩訶不思議な話である。
 現在の在籍校が第一志望校であり、しかも「徒歩で七分」の近距離に在る高校であるならば、この上、何を望む事がありましょうか?
 この上、何かを望んだとしたならば、作者の松田梨子さんは、雷様にお臍を抜かれてしまう危険性だって有り得ましょう!
 それなのにも関わらず、彼女はなったばかりの女子高校生だてらに「今のところトキメキはなくて穏やかな道」とまで、言っているのである。
 「穏やかな道」とは言うものの、「「今のところトキメキはなくて」と言うからには、彼女は心「トキメキ」を感じるような恋をしたいと願っている事は明らかである。
 妹の松田わこさんに「恋までもゆずってしまうねえちゃんにあきれる私とママとひぐらし」と揶揄されたはがりの松田梨子さんが、一度は他人に譲って身を引いたばかりの恋路を歩む事を切なく願っているとは、女心というものは、私たち男性にとっては測り難い闇の世界なのかも知れません。
 〔返〕  再会し心トキメキ感じしも友に盗られてまた泣き別れ


(東京都・上田結香)
〇  帰ったらまた喧嘩ばかりするのでしょうけれど仲良く見た旅の景色

 「成田離婚」という言葉もありますから、ゆめゆめ油断してはいけません。
 〔返〕  旅景色仲良く見たのは夢なりき成田に着いた途端にバイバイ


(伊那市・小林勝幸)
〇  朝あさの目覚めのいよよ早くなり朝顔やちやぼ未だ眠れり
 
 「朝顔やちやぼ」までが「未だ」眠っている早朝に「目覚め」てしまうとは、老耄性不眠症に罹患してしまったのかも知れません。
 その治療策としては、今晩から就寝前にラジオ体操を第二体操まで遣って、汗を流してから入浴し、その後に就床なさったら如何でありましょうか?
 ラジオ体操は必ずしも正確に遣らなくてもかなりの効き目がありますよ!
 是非是非、お試し下さい。
 〔返〕  朝あさに寝覚めが益々早まって深夜便さえ聴く暇が無し


(三郷市・木村義煕)
〇  秋の虫鳴けば涼しい夜の床急に眠りが深く濃くなる

 人の世は様々であり、信州は伊那の村里に「朝あさの目覚めのいよよ早くなり」と溢す老耄の歌詠みが在れば、南(と云う程の南ではありませんが)の埼玉は三郷の陋屋に「秋の虫鳴けば涼しい夜の床急に眠りが深く濃くなる」などと、独り寝の侘しさに耐えている歌詠みが在るのである。
 それら両者のどちらの暮らし向きが、歌詠みとして、より相応しくより望ましい暮らし向きであるか、などと比較して云うような事はしませんが、現在の私は、連日連夜のように不眠状態に陥り、NHKの「ラジオ深夜便」に耳を澄ましながら、夜明けを待っているのである。
 〔返〕  浮気の虫が鳴いても侘しい夜のとこ森田美由紀の悩ましき声


(名古屋市・中村桃子)
〇  風立ちぬあの子の髪がなびいてる何かが始まりそうな九月

 中村桃子さんは、まだ中学生になったばかりのくせしてナマイキを言ったりしている!
 「風立ちぬ」といったら、堀辰雄作のサナトリウム小説の世界ではありませんか!
 平成の世の中に、「八ヶ岳の見える信州のサナトリウムに於いて、若い男女が永遠の愛を誓い合う」などという事は、在り得ませんよ!
 中学生だったら、それに相応しくテニスコートに出て、テニスでもしたら如何ですか!
 私の孫娘は、昨日も秋空の下のコートでテニスの試合に汗を流したという事ですよ!
 〔返〕  始まるのは噴火水害山崩れ!黙って居ては恋も片恋


(富山市・松田わこ)
〇  「ウソも方便」と笑ったママなのに私の小さなウソを許さない

 そもそも「ウソも方便」という言葉自体が子供騙しの方便なのですから、大人という者は信用する事が出来ません。
 〔返〕  「友達に譲った恋」と言いながらめそめそしてる変なねえちゃん


(岐阜市・後藤進)
〇  人間がそこまで来たかといふやうに頭を上げ見をり蝦夷鹿の群

 蝦夷鹿も羚羊も奈良公園に見られるただの鹿も、鹿と名の付く動物は、例外無く澄んだ眼をしていて、それを眺めている私たち人間を注意深く眺め続けているものである。
 でも「人間がそこまで来たかといふやうに頭を上げ見をり」とは、劣等意識の虜になっている作者の思い寄せが原因の誤解でありましょう。
 〔返〕  鹿どもも其処まで遣るかと思わせて妻恋う雄の角突き争い


(前橋市・荻原葉月)
〇  棚に乗る葡萄の袋はち切れてほのかに匂ふ初秋の庭

 「棚に乗る葡萄の袋はち切れて」とあるが、我が家の葡萄棚に乗っている今年の葡萄は、いつまで経ってもはち切れそうになかったので、つい先日、袋を破いてみたら、ほとんど萎びてしまっていたのでありました。
 その原因は、二月に行った剪定作業に於いて、私の持ち前の性格のけち臭さが発揮された事を拠るものと思われ、我が事ながらも反省せざるを得ませんでした。
 そこで、来年こそは、伸び切った蔓や枝を惜しまずに十二分に剪定しようと、冬になるのを今から待ち焦がれている私なのである。
 因みに云うと、我が家の庭の葡萄棚の葡萄は「ピオーネ」と「キャンベル」の二種類である。
 田舎暮らしをしていた頃の我が家の庭には、葡萄だけでも「キャンベル・ピオーネ・マスカット」と三種類も在り、その他の果物の成り木としては、「二種類のキウイ・白桃・無花果・ネクタリン・プルーン・リンゴ」と盛り沢山の盛況であり、毎年の収穫期になると、自宅で食するだけでは無く、親戚に配り、横浜や川崎に住んでいる息子や妻の妹宅に宅急便で送るなどしていたのであるが、それも今となっては昔話となってしまいました。
 〔返〕  萎びたる葡萄に申す恨み言「成るか成らぬか成らねば伐るぞ!」

今週の朝日歌壇から(9月22日掲載・其のⅡ)

2014年09月29日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]

(兵庫県・高垣裕子)
〇  盆がすみ片付け終えし台所しきりに聞こゆ鹿撃ちの音

 一種の意は、「婚家のご先祖様や舅や姑たちをお迎えしての、重く片苦しいながらも敬虔な数日を過ごした後の主婦が、数多くの来客や仏様たちへの供応を無事にし終えた事に対して満足感を覚えながら、台所でハレの日遣いの膳・椀・皿などの片付け仕事を済ませ、ふと安堵の胸を撫で下ろしていた折も折、遠くから聞こえて来たのは鹿撃ちのの鉄砲の音であった」といったところでありましょうか。
 作中の<われ>の気持ちを分析すれば、「いくら盆が済んだとは言え、幾日も経っていない今朝、生類の命を絶つ鹿撃つをしなくても良かろうに!」といったところであり、その反面、「鹿撃ちの鉄砲の音が台所仕事をしている自分の耳に聴こえるのは、鳥獣害に悩まされているこの村の習いであるから、やっと普段の〝ケ〟の暮らしに戻る事が出来て一安心!」といった気持ちも無きにしも非ずでありましょう。
 ところで、「しきりに聞こゆ」と言ったら、少なくとも一分間に一発くらいは「鹿撃ち」をする鉄砲の音が聞こえなければならないだろうし、更に言えば、その音は一定の間隔を置いての連続音で無ければならないようにも思われるのである。
 「今年の秋は鹿や猪や熊が無闇矢鱈に人里に出て来て、野菜畑や果樹畑を荒らし廻っているので農家の人々が困っている」とは、よく聴く話ではある。
 「それはそうでも、人里近い所で一分間に数発も鹿撃ちの鉄砲を連続的にぶっ放すような乱暴な猟師が在るとは信じられない話である」というのは、鳥獣害に悩まされている山里生活の実情を知らない私だけの感想でありましょうか?
  〔返〕  十七日御魂送りも済んだとて鉄砲担いで鹿撃ちに往く


(安芸高田市・安芸深史)
〇  帆をたたみ晩夏の海は潮任せ岬を回り波静かなり

 作者の安芸深史さんは、広島県と言っても、普段は海を見ることが出来ない中国山地のど真ん中の安芸高田市にお住まいである。
 したがって、件の「晩夏の海」とは、遠い異国の避暑地の海とは限らなく、せいぜい広島湾か瀬戸内海に過ぎないものと思われる。
 だとすれば、「帆をたたみ」「潮任せ」の船路でも、村上水軍や台風に襲われたりする危険性はゼロであるから気楽なものである。
 とは言え、中国山地のど真ん中の住民が「晩夏の海」に繰り出した訳であるから、その感激振りには、私たち読者の想像以上のものがありましょうか?
 ところで、本作は「永田和宏選」の六席にも入選している。
 〔返〕  藪を漕ぎ茸を探す山歩き熊に襲われないかと冷や冷や


(藤岡市・田村智)
〇  碓井路をささと若雉子過りたり赤く鋭き野鳥の顔で

 「若雉子」であろうが「老雉子」であろうが、雉子は雉子であるから「赤く鋭き野鳥の顔」をしているのは当然のことである。 
 然るに、私たち日本人の認識の中に棲む「若雉子」は、内国産の鳥類の中では貴公子とも言うべき存在である。
 その「貴公子」たる「若雉子」が、意外にも「赤く鋭き野鳥の顔」をして、「碓井路をささと」「過り」行ったものだから、いくら群馬県藤岡市の住民の田村智さんと言えども、驚くまいことか!
 〔返〕  碓井嶺を掠め行きたる日航機御巣鷹山に撃墜しけむ


(八王子市・江藤幸代)
〇  風渡り木漏れ陽揺れて銀鼠の和毛もそよぐ上高地の猿

 「上高地」と言えば、かつては登山家の聖地とも言われ仰がれた秘境であるが、平成の今となっては、<山ガール>を自認する愚かな女性たちの泥足で踏み固められ、俗塵に塗れてしまった土地柄であり、その地に棲息する「猿」は、彼の山ガールどもに餌を強請って生きている存在でしか無く、その生態たるや、上野動物園の猿山の猿に増さるとも劣らないような狡猾極まりないテイタラクである。
 本作の作者・江藤幸代さんは、そうした「上高地の猿」の薄汚い身体を覆っている毛皮を「銀鼠の和毛」と断じて言い、その「銀鼠の和毛」が、「風渡り木漏れ陽揺れて」「そよぐ」様子に、憧れの眼差しを向けているのでありましょう。
 だが、そうした有り様こそは、昨今の<登山ブーム>、<上高地ブーム>、<山ガールブーム>の実態を余すところ無く示しているのでありましょう。
 〔返〕  御嶽に噴石降り敷く真つ昼間なんじやらほいほいなんじやらほい


(東京都・岡谷滋郎)
〇  幼子に座り直して撫で受けるラブラドールレトリバーやさし

 かつては猟犬界の王者として、大ブリテン島の山野を獲物を追い求めて駈け巡っていた「ラブラドールレトリバー」も、今となっては、狡猾極まりない人間どもに飼い慣らされ、その多くが家庭犬として、あるいは盲導犬や警察犬などの使役犬として飼育され、時には、社会福祉バザーなどにも駆り出されて客寄せパンダ然として振る舞っているのである。
 作中の「ラブラドールレトリバー」は、東京都内の社会福祉バザーなどに駆り出された盲導犬でありましょうが、その彼が、会場を訪れた「幼子」を前にして「座り直して撫で受ける」という場面に取材した本作に於いて、作者の岡谷滋郎さんは、件の「ラブラドールレトリバー」の姿を「やさし」と感じているのであるが、彼「ラブラドールレトリバー」種の来歴を振り返って見る時、評者の私としては、其処に一抹の哀れさを感じるのである。
 〔返〕  髷結って負けてばかりの遠藤は懸賞配給担当力士?  
   

(長野市・関龍夫)
〇  信濃なる北信五岳は靄の上マグマが冷えた形に見ゆる

 木曽の御嶽さんの惨状を鑑みる時、本作への読者諸氏の評価及び感想は、如何なることに相成りましょうか?
 〔返〕  斑尾に妙高・黒姫・戸隠に飯綱山で「まみくとい」なり


(郡山市・渡辺良子)
〇  この山に上つてゐればと繰り返し見上げつつ去る大川小を

 メルトダウン時の東京電力社内の混乱振りや無責任振りを回顧してみる時、私たち日本国民は、彼の日の「大川小」の惨状を、その本分を忘れた無責任な教員に因る人災とばかり断定して片付ける訳には行きません。
 〔返〕  御嶽に登っていなけりゃ今頃は「逸ノ城勝って」と禱ってただろう


(小平市・萩原慎一郎)
〇  非正規という受け入れがたき現状を受け入れながら生きているのだ

  我が国に於いて、労働者派遣業を行う業者は、第一次オイルショック後の1975年頃から急速に増大しつつあったのであるが、これに法的な根拠を与え、その傾向に拍車を掛け、利益追求本位の資本家層が貧しい労働者苛めに邁進するようになった発端は、第二次中曽根内閣の1985年6月に施行され、その翌年の7月に施行された「派遣労働者の保護」を名目とした法律、即ち「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(通称、労働者派遣法)である。
 然るに、本日召集される第187臨時国会に於いて、第二次安倍改造内閣は、この法律の改正案(実質的には労働者苛めを目的とした、雇用者寄りの改悪案)を再提案しようとしているのである。
 東京都小平市にお住いの萩原慎一郎さんは、本作に於いて「非正規という受け入れがたき現状を受け入れながら生きているのだ」とヒステリックに叫び、悲鳴を上げ、時流に警鐘を鳴らそうとしているのであるが、規制緩和の美名に名を借りての、この法律の改悪は今や必至である。
 時恰も、朝日新聞は彼の二件の誤報事件の言い訳に終始していて、その報道内容もどっちつかずのものであり、世論を善導して行くような元気を失っているのであり、反自民のシンボル的な存在の政治家・土井たか子も、昨日、黄泉路に旅立って行ってしまったのである。
 <1ドル110円>という、消費者泣かせの円安を目前にした今日、私たち貧しい庶民の暮らしは如何なることに相成るのでありましょうか?
 朝日新聞の良識ある記者諸君を元気を出し給え!
 私は、父祖以来100年に及ぶ朝日新聞の読者であり、再三に亘る読売新聞の購読勧誘員の囁く「東京ドームの内野席招待券を二枚サービスしますよ!」という甘い攻撃に抗して、これからも厳として朝日新聞の読者であることを貫いて行くから、覚悟して取材・報道に励み、良識ある国民・読者と一体となって、安倍痴呆改革を木端微塵に粉砕しようではありませんか?
 〔返〕  非正規の受け入れ難き現状を固定化せむと企む輩

 
(福岡市・南川光司)
〇  防衛はまず原発を無くすこと敵の着弾廃墟の日本

 自民党議員の金城湯池たる福岡県の住民ながらも、本作の作者・南川光司さんの仰ることは、意外にもしっかりしているのである。
 〔返〕  褌を堅く締めなけゃやられるぞ再稼働より廃炉が急務


(横須賀市・池田卓爾)
〇  原発の事故原爆と思いこむ認知症の母のおびえ止まらず

 「原発の事故」を、即「原爆と思い込む」のは、必ずしも「認知症」の所為とは限りません。
 と言うよりも、むしろ、「原発を核の平和利用だ」と決め込んでいる側が、唯一の被爆国の国民たる日本人としては、「認知症」の罹患者なのかも知れません。
 〔返〕  朝日紙の誤報即ち「無罪だ!」と嬉し泣きする東電患部