Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

万霊節への静かなざわめき

2011-11-02 | 
不思議なもので偶然のように膨大な情報量の中からなにかを見つけることは少なくない。もちろん、無意識のうちにも必要な情報をいつも選択しているのであり、取捨選択の作業が自動的に行われているからに違いない。

そもそも情報の洪水の中でなにかを得るということは、なにかを理解しようとする営みなのであって、そうした行為なくしては情報を得ようとすることも無い筈である。

何時も死亡欄を研究しているわけではないが、これまでも何度も「関係者」の死亡記事を偶然のように見つける。なるほど新聞の死亡欄は大きな文字で氏名が書いてあるので、その広告主の名前とともに一瞬に目に入るようになっている。しかし、普段は全く関係なくて、嘗てそれも十年も二十年も前に人の話として一度ぐらいしか名前を聞いたことのないような人の名前もその一瞬に自らの情報として処理してしまえるのである。

自らに特に関係のあるような人の死亡記事ならば記事以外でも聞こえてくるかもしれないが、全く直接関係のない人の名前もその一瞬で峻別してしまえることに、大規模のコムピューターでも不可能な情報の選択の方法が介在していることを経験する。

週末の新聞に見つけたのはそうした一般教養としての記憶ではない特定の人物の名前ではなくて、有名人の名前であった。フォン・アーニムと目に入れば、ドイツ文化に興味のある人ならばあのアーヒムか奥さんのベティーナを思い出すかもしれない。あまりに古い家庭であり、プロシア王との繋がりもあり、実際に亡くなった人がどの系統の人かはとても他人には判らないが、死亡記事にハイデルベルクロマンティックの友人であるフォン・アイヘンドルフの詩が載っている。

大気は大地を通い、落穂は静かに波打ち、
森々は静かにざわめいた、そのような透明な夜。

吾が魂は羽を広げ放った、
静寂の国土の彼方へと、まるで国許に帰るかのように。

霧が深く立ち上る諸聖人の日の朝、朝食を持って山の上へと向かった。一時間を掛けて五百メートルほどを登って頂上に出た。山の上は霧の上だった。そこでコーヒーを飲んで、パンを齧って降りてきた。谷に下りてくると、上がってくるものとすれ違う。近づいてくると仲間の家族連れであった。約二時間の行程であった。



参照:
Hermann Prey - Liederkreis, op. 39 - 5. Mondnacht,
Dietrich Fischer-Dieskau Mondnacht,
Peter Schreier - Schumann: Mondnacht,
RICHARD TAUBER SINGS MONDNACHT SCHUMANN 1935,
Leo Slezak sings Schumann's "Mondnacht",
ANNELIESE ROTHENBERGER (1926-2010) " MONDNACHT" ROBERT SCHUMANN.
Régine Crespin : "Mondnacht" (Liederkreis) by Robert Schumann,
Schumann: Liederkreis, "Mondnacht" - Elisabeth Schwarzkopf
Allerseelen - Kiri Te Kanawa & Georg Solti (YouTube)
馭者のようにほくそ笑む 2007-10-22 | 文化一般
冬の夕焼けは珍しいか? 2005-01-12 | 文学・思想

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2 コメント

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若いときの念い (ohta)
2011-11-02 19:35:27
 Hermann Prey の Liederkreis ではかつては Karl Engel 伴奏による LP でした.今回 Link が張られているものの伴奏は Leonard Hokanson のようです.永らく聴いていなかったこともあり,昭和 39 年出版の,佐々木庸一「ドイツ・リート名詩百選」音楽之友社 を出してみましたら,7 番目に出ており,鉛筆での自分の書き込みを見つけましたが,消えかけていて読めません.Als floege sie nach Haus が als ob で接続法二式,sie は meine Seele と著者の注があります.自分で直接ドイツ語で分かるようになりたいという念いがあったのです.

 国外に出ていると新聞の死亡欄や国内ニュースから離れますので,あの人はまだご存命とばかり思い込んでいて,どういう浦島太郎かと他人から笑いの対象になるということがしばしば起こります.
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一筋縄ならぬ (pfaelzerwein)
2011-11-03 06:34:48
シューマンの歌曲は一筋縄ならぬと感じましたが、女声でもシュヴァルツコップの録音を聞くとなるほどと思います。憎いほどのドイツ語です。

因みに最近ラジオでシュライヤーの肉声を聞きましたが、内容は忘れました。

意外にスレザークのが印象に残ります。声の魅力だけでも、語りの巧さだけでも駄目で、シューマンの演奏実践はなかなか興味深いです。

ドイツ語に三種類の性があることが時には助かることもあるのですね。
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