Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

現代の音環境への認知力

2012-03-10 | 
フランクフルト空港はストライキなど最近なにかと話題となっている。我々が興味あるのは、新滑走路絡みでの、航空機の騒音の大きさに準じた空港使用料の設定であろう。

アイデアとしてはとてもよいと思うが、他の空港も同じような基準を設けなければ航空業界への大きな影響はないだろう。チァイナエアーなどは、欧州空域でのCO2規制で、サンクションとしてA380 の注文をキャンセルしたのと同じように、フランクフルトに飛ばさないことで圧力をかける。

それを受けてルフトハンザなどは、既に小ざかしいボーイング737のエンジンカヴァーのアコースティックパネルズを取替え、離着陸で2.4dbの騒音低下の効果を得た。またA320シリーズでは主翼下のタンク油圧調整に渦調整装置を取り付けて離陸時の騒音を0.6から2.3db下げている。この少ない対数表示のデシベルの削減によってスタートバーンにおける騒音を85dbに抑えることが出来ると言うのである。

騒音を下げることは、一般的には環境問題の解決であるが、そうした住民の生活環境の向上であると同時に、音への感受性を鈍らさないための基本的なことなのである。感受性とは、なにも高度な芸術的な表現まで行かなくとも、人類の基本的な五感に、つまり認知にかかわることなのである。基本的人権とかそうした主張以前の根源的なものである。

先日購入したCDエディションの中で、やはりハインリッヒ・シュッツの音楽はその和声のあり方からしてブルックナーなどに通じる独自性が見事である。そしてその他のパッヘルベルのカノンも手馴れたもので素晴らしいが、恐らく知ることもなかったようなラッススの弟子のレヒナーなどの美学的時代背景も良く分り、こうしたエディションのなによりもの利点である。なるほど廉価版なのでブックレットには情報はないので、個々の作曲家や曲については必要ならば逐一調べなければいけないが、現在においてはネットで十分な情報も楽譜も容易に無料で得ることが出来るので全く問題ないであろう。

騒音の中での反射的な拒絶・閉鎖とは丁度反対に、こうした積極的な聴姿勢によって初めて開かれる音の環境が存在しており、嘗てCD導入期に問題となっていたような受身の聴環境というのはこうした聴習慣で完全に打破できるだろう。そうした目的に叶うように、個々の良く出来たCDのプログラムに加えて、全体もアンソロージーとして素晴らしく文化的な制作となっている。

そもそも大バッハの音楽の本質的な価値や趣味を理解しようと思えばその一族の音楽だけでなくこうしたそれらを取り巻く環境を実感しないことには分らない。それは、所謂西洋近代音楽への視点でもあって、現代人の音環境の基礎にあるものなのだ。



参照:
屋根裏のジェットストリーム 2012-02-26 | テクニック
文学としてのジャーナリズム 2012-01-04 | マスメディア批評
脱思想・脱原発・脱体制 2008-01-29 | 歴史・時事
無駄が聞こえない環境作り 2011-09-07 | テクニック
タービンが力強く回るところ 2011-07-04 | テクニック
福袋CDエディション 2012-02-28 | 暦

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5 コメント

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フランクフルト空港 (菅野茂)
2012-03-28 15:55:45
2chでここのブログの作者が僕と勘違いされているようですが、フランクフルト空港についてちょっとコメントするとこの前にいましたが確かに大きくなりすぎましたね。煩いはずです。もっと飛行機の発着をほかの地方に振り分けたら良いと思います。
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騒音も地域の利便性との天秤にかけられている (pfaelzerwein)
2012-03-28 18:03:47
「2chでここのブログの作者が僕と勘違い」 ― それはご迷惑をおかけしました。一度謝罪訂正の記事を出さなければいけませんね。

しかし、あそこでの批評はいい加減なものが多数で、私も「ドイツでは除染が成功している」と述べていると書かれています。チェルノブイリ禍に関してですが、出来た所でもそれをしなかったので地中深く定着してしまったぐらいで、なにかするべきではなかったかと考えているのが本心です。当時はただの旅行者でしたが。実際には、二年、三十年とその自然の半減の経過が観測されているのです。

そこから、なにを、いつ、収穫・猟・漁してはいけないかは明らかなのですが、日本の監督官庁はそれを公にしないのです。

空港の騒音も地域の利便性との天秤にかけられているような面もあって、何処まで許容するべきなのかとなるのでしょう。ハブ空港としての利便性を考えると容易に分散とはいかず、更に騒音の分配と言うことにもなりますね。
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Unknown (菅野茂)
2012-03-28 22:55:15
ああー、別に要りません。現在住んでいるところがRheinland/Pfalzで同じだから誰かが同一人物だと思っているようですね。ここはそのはずれで限りなくNRW/ボンに近いところです。ちなみに自分はワインをめったに飲みません。

こちらはあのチェルノブイリの事故が起こった年にウィーンから入ったのですね。そのままドイツに来てずーっと年月が過ぎてしまいました。

除染はしなければならないでしょうかどの程度かは誰もわからないでしょう。専門家でさえ意見は違うようです。

フランクフルトの飛行場の近くに友人宅がありますが煩いようです。元々はそれを見越して飛行場を作ったようですが場所がドイツのど真ん中なので需要が供給を上回りどんどん拡大して行ったようです。パリやロンドンぐらい離れていれば良いんですが、やはり解決策としてはもう少し発着数を地方の空港に移すべきでしょう。特に人口の多いルール地方はフランクフルトを使いません。
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長距離のものは中短距離に比べると便数も少ない (pfaelzerwein)
2012-03-29 05:47:23
ケルンでノルトライン州だと思ってました。86年からですか。あのときからの友人を持ちあの時のことを良く覚えてます。

パリも分かれて若干使いにくく、車でのアクセスも悪い、またロンドンも幾つにも別かれていてスタンステッドなどはケムブリッジですからね。その意味からは、フランクフルト以外も欧州内向きには分散されているので変わらないでしょう。但し大型のA380や長距離のものは中短距離に比べると便数も少ないので分散効果はあまりないかと思います。

個人的には欧州内で飛行機を使うのは限られているので、フランクフルト以外を使うことはないです。
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Unknown (菅野茂)
2012-03-29 06:11:53
パリは主にシャルル・ドゴール空港ですね。ロンドンの空港は主にヒースロー空港ですね。そのほかの空港はめったに使わないですね。

ええ。もちろんケルンはNRW州です。ケルンとボンの間で一つあるんですね。そのほかにデュッセルドルフ空港がかなり近くにあります。別々に作ったのはちょっと無駄でしたね。集めればミュンヘンぐらいの空港になっていたと思います。ちょっと日本の地方に似ている。
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