Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

牡鹿搭からカメラを落とす

2014-04-20 | アウトドーア・環境
怪我以後初めて大きな壁を登る。肩から肘に掛けての筋も前日のボールダーで痛んでいたので、それほどの成果は期待できずに適当に陽射しの下で登るつもりでいた。それでもなんとなく昨年からの課題を選んでしまった。

勿論昨年からの課題は今年は大分敷居が低くなっている。それでも、その一つ「ボックフェアシュナイデュング」つまり「牡鹿搭の凹角」は、技術的には全く問題ないのだが、ハーケン一つ無く、30Mを一気に登るものなので、墜落の可能性が恐ろしく、更に引き返して来れないルートである。

足元まで行くと想像していたように北東面なのでもう一つ陽が当たらず、肌寒い。それでもそこまで来たからにはと思って自らを鼓舞するのだが、肩の調子に不安がある。明らかに、右手を差し込んで突っ張るデュルファー登りの箇所か右手を突っ込んでのリス登攀が核心部なのだ。

それでも試し試しウォーミングアップ代わりに登り始めると最初の障壁が現われる。そこで時間をかけて中間支点に機械式楔などを設置していると身体が徐々に温まってきた。最初の小さなコブを乗り越えると、腹が決まってくる。それでも用具を節約しながら楔などを掛けていくと、上半の核心部の下に出た。

そこで長いシュリンゲを組み合わせれば、大きな岩角に、命を護ってくれる中間支点を掛けられたのだが、120CM三本では十分かどうか疑問だったので、断念していよいよ核心部に入る。割れ目の入り口になるので下が抉れていて、手がかりも右の壁にある穴と襞である。だからどうしても右手を掛けて引っ張る形になる。痛さは忘れていたが、強く引っ張り続ける自信はなかった。そこで念のために確りとした支点を設置する。二度目の試みもそれほど容易ではなかったが思い切って割れ目の下辺に足を掛けて乗り越える。

なるほどそこに立つと、核心部には赤色のフレンズがどんどん掛かるので、幾つも欲しくなると聞いていたところだと分った。既に下部で赤のヘクセントリックを掛けて - このルートを登るために購入しておいたようなものである -、更に割れ目の入り口にも赤色を使ったので、残りは一つである。適当に最後の一つをかけて、左の壁に手掛かりを見つけた。そこに立って、今度はリンクカムの一つ大きな金色を押し込んでみる。とてもよく効いてくれた。流石に倍の価格の商品である。

更に割れ目上方の左の縁に小さな手掛かりを見つけたのでそこに立ち上がるが、そこから割れ目を抜けるまでは足掛かりも手掛かりも無い。落ち着いて身体を左に傾けながら、右手と右足でバランスを取って、更に大きな青いフレンズを差し込む。綺麗に効いてくれてとても嬉しかった ― そしてザイルが赤く染まっていたので指を見ると出血していた。なぜならばそこからは登りつくすしかないからで、デュルファー気味に二手ほど登ると上部の岩角に手が届いた。そして岩角を越えて上部の穴に頭を突っ込んで、息を整える。

下から笑い声が聞こえるのは下肢しか下から見えなくなってしまっているからである。穴は向こう側に抜けているのでもう少し大きければ其の侭抜けて行きたいところだった。どうもそれも子供の穴抜けでは無いが不可能そうなので、腰の青いヘキセントリックを探る - その時にその内側に挿していたカメラを落としたようだ。そして、その青色を穴の上部にを掛けて、再び穴から上半身を出して、最後の瘤を越える。終了点の立ち木に確保を取る。

カメラを落としたことには気がついていなかったので、相棒がなにかを探しているのを見てまたつまらないことをしていると思っていた。暫く探したあと諦めて登ってくるが、下半部は全く問題なく登ってくる。しかし上部に来て核心部で大分苦労をしていた。そして「ザイルにぶら下がっても楔の回収を優先しろ」と言い渡しておいたにも拘らず、最後から二つ目の容易な青いフレンズを回収してこなかった。全く容易に取れるにも拘らずである。要するに私がバランスを取って設置する姿勢が全く取れていないのである。全くそこを登る技術難度に達していないことを示す。最近毎度のように同じようなことが繰り返されるのは偶然ではないと気がつくようになった。

さて、頂上までは登りたがっている相棒に行かせて、こちらはカメラやフレンズの回収が気になっているので、さっさと頂上での記帳を済ませて、そこに気もあらずで、回収を兼ねて懸垂下降を二回して、地上に降り立つ。カメラの落ちた方向は聞いていたので、谷を降りていく。それ以上は致し方ないというところから上に向かって登ってくると、谷の鞍部のような場所でカメラバックを見つけた。外見は確りしている。そもそも、紐で結んでいたゴム部と吊り紐の二箇所が切れているのは、穴で横にこすったからだろう。発見地点まで殆ど40Mほどの落差であった。

またケースのファスナーの手掛かりが吹っ飛んでいる。徐に開けると痛んではいない。電源を入れると普通に作動する。レンズも出る。ディスプレーも割れていない。写真も写る。モニターも出来る。相棒に聞くと、穴から降ってきて - 恐らくどこかで撥ねたあと、砂地の地面で跳ね返って其の侭鞍部へと吹っ飛んだようだ。自宅で試してみても傷みは全く確認できていない。ケースから外に出ていたストライプなどが痛んでいる感じがするだけだ。兎に角、ケースの効果は天晴れであったが、その吊り部などはあまりに弱すぎた。もっとしっかりしたケースと適当なストライプを探さなければいけない。

凹角は素晴らしい登攀だった。昨年登ったホッホシュタインの「オークの割れ目」と下半部は似た感じで登るよりも支点を設置するのに上手に立たなければいけないのに苦労する、上半部は「火の酒の道」よりも倍ほど長くハーケンが無いので難しい。これが右腕故障でも完璧に登れたので、格下の場所は何時でも完璧に登れる自信がついた。ビッグウォールを登る最低条件だろうか。



参照:
ある程度熟せるように 2013-09-29 | アウトドーア・環境
火の酒ブックコーナーの道 2013-10-12 | アウトドーア・環境
デジタルカメラの高機能 2013-10-06 | テクニック

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