Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

エルザの夢の無い決断

2006-11-20 | 文化一般
いよいよ、ベルリンドイツオパーの閉鎖は時間の問題となって来たようである。なにもブーレーズやイスラム過激派がビスマルクアレの劇場を爆破する必要はすらなくなった。アンゲラ・メルケルがドイツ連邦としてこれ以上の援助をしないことを、ベルリン市長ヴォヴェライトが確認して、今後三年間の音楽劇上運営が試される。

ウンターデンリンデンの劇場に続く、コーミッシェオパーの集客率に差を空けられた、旧西ドイツを代表した劇場の存在価値は、著しく低下している。芸術面で見ると、詳しく調べたわけではないが、メシアンの「アシッシのフランシス」やその他の二十世紀オペラが幾らか話題となっていたぐらいで、今更クラッシックなレパートリーにおいてはウンターデンリンデンの歴史の前には影が霞む。また、コーミッシェオパーは、嘗てのクノールオパーのように音楽劇場として斬新な公演をしていると見聞きすると、この面でも到底及ばない。合理的な構造の西ドイツが誇った現代的な劇場は席のクラスに拘らず舞台を堪能出来るとして有名だったが、そうした民主主義的な体裁を問う西側のショーウインドーは遠の昔に叩き壊された。

むしろ、イデメネオ騒動ではないがレパートリーが負債となっているとすら書かれ、首都から片田舎へと逆戻りしたボンの劇場に倣ってスター歌手の削減から取り組むべきと言われている。

個人的に予想すれば、国立劇場は観光客を中心に質の高い保守的な舞台を旧東独の時のように追及して、ガーシュインやバースタインなどのミュージカルを半分ほど入れていかなければいけないであろうし、音楽劇場の方は盛んに実験的な試みをして世界を引っ張って行かないといけない。双方がある程度商業的に成功する事を見越して、現ドイツオパーのアンサンブルは双方のアンサンブルに各々別けられて再配置する事になるのであろう。

ドイツで最も成功して伝統的なミュンヘンのオペラが、高額の入場料にも拘らず集客率が高く、人口当たりの上演客席数が遥かに多いに拘らず、一席当たりの公的助成額が85ユーロと低い。これをベルリンの国立劇場の144ユーロ、ドイツェオパーの165ユーロと比較するとその収益性が明白である。こうした違いはそもそも、その都市の文化的な差異であって、急に是正する事も不可能であり、伝統芸能であるだけに伝統の意味は大きい。

さて、経済的事実を見て行くと、一千七百万ユーロの経費節約で九千九百万ユーロの公的援助で三年間を乗り切っていかなければいけないということになっている。スポンサー等の私的援助があったとしても世界に冠たる特徴を持ちえていない事が、命取りとなりそうである。

先日、キエフ出身の指揮者ヴォルデマール・ネルソンが68歳で死去したようだ。バイロイトでデ・ヴァールトが放り投げたクッパー演出の「ローエングリーン」を成功裏に導いて一躍西側で有名になった。ドーナーニ時代のハンブルクの日本への引越し公演でも、土台が聞いた悠々とした情念的な音楽を聞かせた。当時のハンザ都市ハンブルクは「影の無い女」の公演と共に音楽程度の高い劇場であった記憶がある。

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