Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

われらが神はかたき砦

2005-03-04 | 文学・思想
重要な宗教改革に、礼拝の形式が含まれる。ルター自身も、様々な材料を基に賛美歌を作曲している。この影響は、バッハの作曲への使用 の み に 限 っ て も 多大である。それらに関しては改めて扱いたいが、同名のカンタータ「われらが神はかたき砦」BWV80が殊に有名である。

その賛美歌を素材として、宗教改革300年後1830年に初演されるべく作曲されたのが、メンデルスゾーンの第五交響曲である。この作曲家には、やはり聖歌を使ったグーテンベルクの400年祭の1840年に初演された第二交響曲が存在する。第五交響曲の解説では、「ドレスナー・アーメン」といわれる古い旋律をヴァーグナーが十字教会で聞いて後年「パルシファルの聖杯の動機」として使う事とこの「われらが神はかたき砦」が四楽章の主題であると決まって記してある。前者の起源や原型にも、ヴァーグナーの創作と共に大変興味があるのだが、十分な資料は直ぐにはネットでは出てこなかった。

結局この第五交響曲は、政治的な困難を伴ない予定の祝典を飾る事が出来ずに、二年遅れの1832年にベルリンで初演された。ハイネなどに「まやかしの信仰」と叩かれ、作曲家も三省して生前の出版とはならなかった。ドイツ主義の渦が巻く真っ只中、1829年にマタイ受難オラトリオを復活上演してバッハの復興を先導していたキリスト教徒作曲家の判断であったろう。

フェリックス・メンデルスゾーンの活動において、祖父の1729年生まれのモーゼス・メンデルスゾーンの存在は大きい。貧しいユダヤ人としてのその伝統的な教育を受けると同時に西欧の自然科学などの教養も吸収する。絹工場で働きながら帳簿を預けられ、何時しか共同経営者になっていく。ユダヤ人としての居住の制限の下でも、レッシングなどとの親交を結び、ユダヤ人への時代錯誤の認識を警告する。1763年には「形而上学の明証性への考察」でプロイセンの賞を受け、アカデミー会員に推挙されたが啓蒙の王フリードリッヒはこれを認証しなかった。

その後も啓蒙思想のモーゼスは、ユダヤ社会のドイツの大地における疎外を取り除くべく活動する。ヘブライ語の聖書のドイツ語への翻訳を遂行する。しかし文字はヘブライ文字を使わなければいけなかった現実は見逃せない。多くのユダヤ人はドイツ語の教育を受けていなかった。ヘブライ文字のドイツ語がユダヤ人ドイツ語を生んでいく。ユダヤ教とプロテスタントの融合を図る試みとして今後とも彼の活動は繰り返し取り上げられるだろう。キリスト教を諭しの宗教として、ユダヤ教を戒律の宗教として定義したのは彼である。そして彼の活動に対して最も厳しく抵抗したのは、当時のラビたちであった事も記されている。

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4 コメント

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バッハというと・・・ (manimani)
2005-03-04 12:40:40
バッハと聞くだけで手が勝手にコメントしてしまいます。

バッハはコラール・カンタータを始めとして、器楽曲でも多くのルターコラールの編曲をしていますね。「改めて扱いたい」とおっしゃる内容に期待申し上げます。

あと、バッハの受難曲について一貫して「受難オラトリオ」という呼称を使われている見識には感服いたしますです。
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フェリックス・メンデルスゾーン (ohta)
2005-03-04 14:04:13
"フェリックス・メンデルスゾーンの活動において" と始まったので目を開いて読みました.メンデルスゾーンについてのしっかりした調査,研究成果を心待ちにしているのです.その理由は

http://www.mech.nitech.ac.jp/~ohta/Books.html

平田達治 「中欧・墓標をめぐる旅」のところに書いてあります.
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こんにちは (フンメル)
2005-03-06 08:53:07
いつもこちらのblogで勉強させていただいてます。今回はモーゼス・メンデルスゾーンについてなるほどと思いました。ohta氏のサイトも興味深く読ませていただきました。
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manimaniさん!、 ohtaさん!、 フンメルさん! (pfaelzerwein)
2005-03-07 20:59:53
manimaniさん、お待ちしていました。そしてカンタータに関しては恐らく全曲ご存知のmanimaniさんの情報を当てにしています。器楽曲もカンタータもどのコラールの使用が先かだけでも膨大な研究になっているんでしょうね。オルガン小曲集がある場合は、それが「オリジナル」だと想像しますが。今晩も「マタイ受難」の会に行ってまいります。







ohtaさん、コメント有難うございました。モーゼスはどの分野で最も研究されているのか知りませんが、作曲家抜きでも大変興味ある存在ですね。



自動車の記事少し拝見しました。スイスの高地に居ましたので、燃料の値段も高くオクタン価95のノーマルを混ぜました。更に海抜2000メートルの気圧の関係で体積が膨らんで注入の実質量が可なり違うとも聞いております。この時期には珍しい、マイナス20度の気温で寒冷高地テストには絶好のコンディションの様でした。また色々とご指摘頂ければ幸いです。







フンメルさん、恐縮です。ミヒャエルスキルへの写真羨ましいです。多くの事が頭を過ぎり、想像力を掻き立ててくれます。

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