Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

夏日の火照りを内から癒す

2009-05-27 | 試飲百景
真夏日の始まってから窓を閉めては寝れなくなり、パジャマも夏物に着替えた。雷が夜中に轟き、一雨二雨来るとやっと涼しくなった。気温摂氏三十度から今度は二十度を切ると気持ち良い風が吹く。それでもTシャツ短パンからなかなか戻せない。涼しいのはやはり気持ちが良い。

日曜日は陽射しも強く、三十分も炎天下を歩くと赤外線効果で体の中から温まってしまった。ゲオルク・モスバッハ醸造所の冷えたワインを片っ端から試飲する。ここでも2007年産と2008年産の比較試飲が楽しめた。両手にグラスを掴んで二挺拳銃である。グーツヴァインが6ユーロであるが、オルツヴァインのヴァッヘンハイマーもフォルスターも同価格なので商品構成に若干問題があるような気がする。逆にオルツヴァインの方が味が落ちる場合もあるという、方々の醸造所でも遭遇した似た傾向があって、必ずしもグーツヴァインとオルツヴァインの格付けが旨く行かないと言う事例であろう。要するに2008年産の各醸造所のグーツヴァインは、現時点で市場最高の質に至っている。VDPの今後の課題かも知れない。

その中で2008年産で明白だったのが久しぶりに地所シュティフトから魅力あるリースリングが出来上がっていることである。酸の量感と熟成度が美味くバランスすることで、ややもすると重みがあるこの地所の土壌の良さが復活したという感じがする。一本7ユーロ20は適価であろう。その反面ヘアゴットザッカーは薄っぺらさが災いして今一つである。当然のことながら、より酸の強いエルスターは現時点では強過ぎる。次なる両年対比はモイスヘーレである。2007年産がやはり良いミネラル味を出していてマニア向け推薦である。ムーゼンハングの脆弱性に対して、ヘアゴットザッカー・シュペートレーゼの両年は現時点では前年度にやはり軍配が上がる。更にラインヘーレ辺りになると繊細さが欠けるようになり物足りない。

2006年産のバサルトが日本のワイン会で評判が良かった報告を若旦那さんに話したのだが、私自身は2007年産のそれや2008年産のそれを比較試飲しても同じような質であまり楽しめない表情を顔に出すと、旦那は「あれはうちの二番手レヴェルのワインだからな」と此方の真意を読まれた。

グランクリュのフロインドシュトックがまだ残っており、キーセルベルクとウンゲホイヤーともども試飲するどころか、それでアスパラガスとニコゴリサラダを楽しむ。けちけちしていて食事を流し込む程は注いで貰えなかったのだが、それでも追加購入を決心させるには十分な新鮮さと美味さであった。

「それなら、ウンゲホイヤーはどうだ?」と訊ねられる。

「その昔はボディー感のあるフローラルなリースリングと思われていたが、最近は熟成するとエグミが出てくるなど必ずしも容易なワインではないよね。どの辺りでしたっけ?」

「真ん中辺の地所」

「んん、そんな訳でどちらかというとご婦人向けのフロインドシュトックの方が飲み易いかな。お宅にはないがホーヘンモルゲンなんかも人気が出て来ているからね。一寸似ていないかな?」

「いや、ホーヘンモルゲンはどちらかといえば隣り合わせ地所のキーセルベルクなどに近いから、フロインドシュトックは寧ろウンゲホイヤーとかに近い筈だけど」

この先はどうしても話が進まなくなってしまう。「土壌の話は難しい」と、自称土壌原理主義者は思う。最終的には主観的な意味づけがなされるので、地理的な話と混同してしまうと話は更に煩雑化してしまう。何れにしても2008年産のそれの出来は間違いなさそうである。重くはならないでより膨らみ感がありそうだ。ヌガーキャンデー味が強くなればとても面白いだろう。

兎に角、古いものより新しいものの方が濃いぐらいにワインの色が違うのは生物学的熟成の相違がある訳だから、レープホルツ氏の発言のように、2008年産は秋の林檎酸からワイン酸への移行が特徴でもあろう。冬の気温と相俟ってワイン酸からの酒石が集積したのも納得である。そして瓶の中に残る林檎酸が良い熟成をするとなると将来が楽しみである。それがどれほどミルキーになるかは化学的微生物学に調べて見ると分かるかもしれない。

2005年産のウンゲホイヤーのアウスレーゼや2007年産のTBAも試飲したが悪くはないが其処まで投資する価値は感じられなかった。むしろ二種類の2006年産の赤ワインシュペート、ブルグンダーとメルローを試飲して2003年産の良さを思い出した。

今晩は涼しく眠れそうだが、赤ワインで温まると言うよりも、質の高いヴァッヘンハイマー・アルテンブルク・リースリングを開けて次ぎの夏日に備えて身体を癒したいものである。



参照:
スパイシーな相互感応 2008-05-26 | ワイン
チーズの付け合わせ葡萄 2008-09-05 | ワイン
胃に沁みる夕べの祈り 2008-11-20 | 料理
今年度の消費とその番付 2008-12-29 | ワイン
放言、よー、観てみよー 2009-01-05 | ワイン
疎まれるようでありたい 2009-02-20 | 試飲百景
小動物ににじり迫り寄る 2009-05-02 | 雑感
辺境の伝統の塩味ピーマン 2009-05-26 | 試飲百景
堺東にあまたの巨匠を迎えて (新・緑家のリースリング日記)

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4 コメント

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早のみのワイン (yokun)
2009-05-27 15:57:19

シュティフトの7ユーロ20はとても
コスパに優れていそうですね。
普段飲むのに本当によよさそうです。
興味あります。

オルツワインとグーツワインの話は、
本当に面白いです。
ラインガウ・キードリッヒの小さなワイングートSPEICHER-SCHUTHと言うところでも、
当主との雑談で、下手をすると出来具合が逆転現象を起こすこともあるだろうということを、
伺ったことがあります。

フロインドシュトック。
pfaelzerweinがのみやすいタイプなら、
私の好みかもしれません。
これまた興味津々です。

返信する
たおやかな感じが良い (pfaelzerwein)
2009-05-27 17:38:31
シュパイヒャー・シュートは知りませんでしたが、ヴァイルのご近所さんですね。HPを見ましたが、もう少し正直な市場戦略をを心掛けるべきかと思いました。キードリッヒはラウエンタールなどに比べて難しい地所です。

外部者からそんな話が出たことが大変意外です。

フロインドシュトックは個人的には嘗てのBJのそれなのですが、ホーヘンモルゲンに比べると石灰のつるっとした味わいが異なり、より女性的です。偉大なワインではないですが、たおやかな感じが良いです。間違いなくお好みと思います。私にとっては、ミネラル質があまり感じられないので万人に勧め易いリースリングです。ここのピノノワールがこの地所のようです。

シュティフトは七月にでも試してみたら如何ですか。来週にでも一本買ってきて自宅で試してみます。
返信する
失礼しました。 (yokun)
2009-05-27 18:45:09
私のコメント中に
pfaelzerweinさんのことを呼び捨てにして、
「pfaelzerweinがのみやすいタイプ」などと
してしまったこと、
大変失礼しました。
謹んでお詫びします。

ごめんなさい。

フロインドシュトックとシュティフトは
とても楽しみです。

又新しい味わいに出会えるとおもうと、、、。

では。
返信する
フロインドシュトック (pfaelzerwein)
2009-05-27 20:48:59
2007年産フロインドシュトックは七月にはないでしょうが、秋には2008年産が出ます。
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