Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

灰の水曜日の前に

2005-02-09 | 文化一般
19世紀前半にカーニヴァルを扱っている芸術家にロベルト・シューマンがいる。ピアノのために25歳の時に作曲した「謝肉祭」と29歳の時の「ヴィーンの謝肉祭の茶番劇」である。特に前者は初期の名曲で曲集を四つの音、A(イ)、S/Es(変ホ)、C(ハ)、H(ロ)または三つの音、As(変イ)、C(ハ)、H(ロ) による音階を織り込んで構成している事で有名である。もう一つこの曲集の最後の曲が、この作曲家らが参加している芸術運動に寄せて「ダヴィデ同盟の行進曲」になっているのも注目に値する。作曲家自らこの曲名について1835年の「灰の水曜日」(ASCHERMITTWOCH)前(謝肉祭期間)の作曲完成に因んで付けたと語っている。ハイデルベルク滞在からイタリア旅行を経験して、出筆、出版活動を始めていた。政治的謝肉祭と云うものが、ライン流域のカーニヴァルに端を発して、現在も存在する。無礼講の祭りにおける自由精神の発露と云うが、ここで作曲家が示したかったのは直前の時代・世代の芸術的俗物主義を批判するロマン主義芸術へのモットーだったのだろうか?先天性の梅毒が悪化、脳神経障害を起こして、デュッセルドルフの橋からラインに身投げをしたのが謝肉祭が終わる二日前の1854年2月27日「薔薇の月曜日」であった。

木の芽立ちのこの頃、誰もが湧き上がってくる生気を自ずと感じるのである。特に冬から春への気候の変化の激しい日々、例えば先週の金曜日の日差しは強く一斉に芽が吹くような陽気であった。謝肉祭は、カソリック地域の行事であるが、実際は土着的な風習であることに気が付く。このような祭りに自らマスクをつけて参加して汗を掻くと、その効用が良く分かる。悪魔的な夜の松明から灰の水曜日まで参加するとなると、冬の間に体内に溜まった全ての不純物が一斉に皮膚を通して放出される。

ライン流域のカーニヴァルは共通していて、プァルツも殆んどこれと変わらないが、ケルンの場合はカーニヴァルとしか呼ばれないのに対して、マインツは概ねファスナハトと呼ばれる。(非俗物たちのマスケラーデ [ 文学・思想 ] / 2005-02-08より続く、灰の水曜日の前に [ 文化一般 ] / 2005-02-09へと続く)



参照:アレマン地方のカーニヴァル [ 生活・暦 ] / 2005-02-07
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6 コメント

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シューマンの謝肉祭のASCH (望 岳人)
2005-02-09 12:57:35
「謝肉祭」は、まったくシューマネスクな曲で、愛好しております。



さて、シューマンの「謝肉祭」の ASCHについては、一般的にhttp://www.schumann.jp/comment/c009.html のように、恋人だった女性の出身地のように説明されているようですが、「灰の水曜日」に関係のあるというご指摘、大変興味深く拝見しました。
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浄化 (julia)
2005-02-09 18:09:28
ただ、なんとなく口にしていた、芸術家にも、それぞれ興味深い歴史があるものですね。春にヨーロッパの方へ、独りで旅行に出かけようかと思っていますので、この文や、他の文章を読ませていただいて、より深く?探求できる旅をしてこれそうです。私も不純物を取り除くために灰の水曜日はで、お祭りに参加しなければいけないかな~。お祭り時期は、混みそうなので、危ないでしょうかね。まだ、未定の旅行ですが、不純物が取れるとよりよいたびになりそうなんですが・・・。
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灰色の深い小鉢か? (pfaelzerwein)
2005-02-09 18:42:06
ご紹介のn'Guinさんのサイトは、サーチ中に出てきましたので拝見しました。集中して研究されていて素晴らしいです。MIDIが特に楽しい。折角ですから、ご挨拶しなければいけませんね。



どの解説を見ても、町の名前と自身の名前との関連が示してあります。きっとそれが正しいのでしょうが、余り実感としてはピンとこないのが正直な感想です。綴りASCH自体は殆んど意味を持たないようですが、作曲家の生まれ故郷周辺では「深い小鉢」という意味も見付かりました。文字の音列に刺激されて、創作に入った事は分かるのですが、その後の過程が興味ありますね。手元に何も資料がないので詳細は分かりません。



よく挙げられる19歳の時の「ライン河に溺れた、夢を見た」/„Mir träumte, ich wäre im Rhein ertrunken.“ の記述はとてもロマンチックな逸話なので現代向きではありません。しかしそのような作曲家の詩的感興が全ての創作に表されている事も見逃せません。この文字ASCHの発音の響きも作曲家向きであって、そこからも刺激されたはずです。ハイネとの親交がありながらアイヘンドルフの比較的無批判な詩に較べて、その歌曲は余り良くないと書きましたが、響きと構造の問題と感じています。



これは作曲家が主張するところのロマン主義の真髄のような事になるのでしょう。可也の固定観念にとり付かれていた印象があります。

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TBありがとうございました (paco)
2005-02-10 12:49:16
バッハのB、A、C、HやショスタコービッチのD、Es(S)、C、Hなど、時々こういう言葉遊びがあるみたいですね。

灰の水曜日の話は知らなかったので興味深くブログ拝見しました。



シューマンの病気についてコメントの返信をしたのでよろしかったらそちらもご覧ください。

またのぞきにくることがあるかと思いますが、よろしくお願いしますm(_ _)m
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Es=S (pfaelzerwein)
2005-02-11 06:49:28
juliaさん、と云う事で「灰の水曜日」は終わって仕舞って、今や断食シーズンです。







pacoさん、そうですね。沢山ありますね。音名を使う場合、ドイツ音名のEsをSと読み替えることは可也こじつけと考えていました。しかしSを使う事でSCHのドイツ語独特の文字発音の単語が出来て、この響きも無視出来なくなります。特にAの母音とSCHの擦れた鋭い子音は、作曲家ならずとも憑かれます。こちらこそ宜しくお願いします。



PS. 病気の事ですがn'Guinさんのサイトご覧になりましたか。お医者さんのようで詳しい推測がされています。上の曲の恋人との破綻と、ご不審のクララとの結婚生活もこれで納得出来ると思います。

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Unknown (paco)
2005-02-12 14:05:39
n'Guinさんのサイト拝見しました。

梅毒の症状が非常に詳細に説明されてて分かりやすかったです。

ブラームスがクララを奪ったなどといったスキャンダルばかり

誇張されて耳に入っていたので、n'Guinさんの分析はなかなか興味深かいですね(^^;
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