Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

古臭いことに拘るよりも

2012-11-19 | ワイン
2008年産のリースリングを飲み比べた。棚卸である。飲み直して満足して見直したのはザールシュタイン醸造所のアルテレーベンである。数ヶ月の差でコクが増しており、見間違えることのない2008年の独特の酸が旨い。

決して強いわけではないが荒い酸なので量感を感じ独特の味わいを楽しめるのである。オーナーなどはとんでもない酸と言うが、どうしてどうして楽しめる要素は強く、食事を巧くあわせれば、少なくとも初日だけでも楽しめる。時間が経つに従って急激に酸化が進んでいくのは、近代的なステンレスの設備を導入しながら、一向に学生時代に習ったような意識から抜きでられれていない、古臭い醸造法に拘っているからだろう。要するにそれを売りとするような還元法の手間をかけた醸造ならばそれでよいのだが、現代的な感覚を持ったリースリング醸造と同時に、古い考えを変えるほどの新しい技術に関心がないために、木樽でも天然酵母でもない、十分にゆっくりと酸化作業など出来ていない、培養酵母とステンレスでの典型的なリースリングとなっている。

地所や土壌がよいから、決して農協さんのワインと比較できるようなことにはなっていないが、高級なリースリングを目指すなら、今のような方針では駄目であろう。なるほどそれなりに綺麗なリースリングとなっているのであるが、同じ道を歩んだ他の醸造所が木樽を上手に使い出すようになっているなかで、20011年産のように亜硫酸量が多いと長持ちするなどと嘯いているようではVDP会員から外されるような方向へと突き進む可能性がある。ラウアー醸造所の方が地所は悪いが遥かに真面目である。

さて、2009年に目を移すと、なんと言ってもレープホルツ醸造所の雑食砂岩Sは秀逸であった。女性に試してもらうと決して酸が立ってしまっている事なくて青りんご風味で巧いというのだ。あれだけ糖を落としても2009年産の飲みやすさがあるとしても、最初は全く旨くないSが二年経過するごろになると完全に熟成を始めて大化けすることは、レープホルツの奥さんともども確認済みであり、如何にこのSはお買い得かである。なるほどグランクリュは最初からその片鱗が分かり、二年経過時には更に良くなっているが、逆に四年経ったときに更に登っているかどうかはなんとも断定できないからである。その点、半額のSは二年我慢すれば最高に楽しめるのである。

年内に更にもう一度訪問する予定になっているが、2012年の収穫は「遇数年の常」に反して、細身で酸に彩られたエレガントなミネラル風味よりも、奇数年の特徴であるフルボディーのフルーティーな柔らかい酸の芳醇のワインであるらしいのだ。それは今年の天候に寄っているのは説明の通りであろうが、冬からの流れも大きかったようだ。乾燥から十分にジューシーになるまで長く置いとかなければいけなかった腐りに関しては何度もの払いで問題なく収穫できたらしい。2009年に似ているのだろうか?すると益々2010年の在庫の価値が上がる。

昨晩、バッサーマンヨルダン醸造所2009年産カルクオーフェンを開けた。これならば天皇陛下もそれに呼ばれる名士方も満足するだろう。しかし、二年経って十分に熟成が進んだところで物足りないと思うのは、改めて飲み干してから述べよう。



参照:
幹の強さに頼るのみ 2012-06-24 | ワイン
酸分解における貴腐とは 2012-07-24 | ワイン
今も続く摘み取り作業 2012-10-24 | ワイン

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