横浜市病院内点滴殺人事件の既視感

2016-09-27 00:00:27 | 書評
大口病院での殺人事件は、まったく嫌な方向に向かっているのだが、有識者の間では「やまゆり苑事件」との類似が指摘されているのだが、自分的には、ある小説と近いなと感じている。

2015年10月に刊行された「デス・エンジェル(久間十義作・新潮社)」である。ちょうど1年前だ。

deathangel


新潮社のコピーは、

この病院は、伏魔殿なのか――医療に潜む底知れぬ闇に切り込んだ問題作。新人研修医として総合病院に赴任した森永慧介。だが、そこで遭遇したのは不可解な出来事の連鎖だった。あまりにも歪な診療体制、相次いで発生する老人の不審死、そして入院中の若い女性患者の自殺。真相を探るべく調査を開始した慧介の身にも、危機が迫っていた……医療における正義とは何かを問いかけるサスペンス長篇!

読者評を読むと、成功と失敗の両論があるが、どちらかというと失敗と断じる論が多いのだが、激しく否定している人たちの多くは医療職の人たちのようだ。たとえばAmazonには、こういうカスタマーレヴューが上がっている。

(略)・・・本書は病棟看護師複数による殺人が主題です.もちろん著者,久間さんの頭の中で生まれたフィクションですが,私の知る限りの看護師達は皆,真面目で使命感をもって働いていました.どんなに仕事が過酷であっても,準夜・深夜の勤務中に看護の厄介な患者を彼女たちが睡眠薬やら鎮静薬で殺めるようなことは考えられません.担当医がそれを見て見ぬ振りをするなんてことも考えられません.著者は本書執筆のために多々資料を集め,それを元にストーリーを構築したのでしょうが,如何に巧妙に仕上げようとも根本のところで現実離れしています.高齢者看護の難題を俎上に上げた点は評価しますが,病棟看護師がこの本を読めば,’’私たちを侮辱している’’ と不快に思うでしょう.良識の働く看護師が受け持ちの患者を殺めることはあり得ない.彼女たちの名誉のために私は断言します.

本書の中では新人研修医が病院の中の不思議なできごとに出くわして、それを隠蔽する病院側の対応に不審を感じているうちに、ついに不思議な死に方をする患者たちの秘密に近づこうとして、逆に注射を打たれて死にそうになるのだが、さすがに病院も当局におまかせすることになる。

ミステリーの犯人をここに書いてはいけないのだろうが、小説では、単独犯ではなく複数のナースの共謀ということになっている。

「なかなか良く書けているが、入院患者への差し入れには向かないだろう」という小洒落たレヴューもあるのだが、逆にこれから入院する患者には注意喚起のために入院前に読んでもらうべき本なのかもしれない。(どうもまじめな記事を書くのはうまくない)