2017.5.28(日)
学校法人「加計学園」(岡山市)が系列大学の獣医学部を国家戦力特区に新設する計画を巡って、5月24日、民進党が新たな文書を示して文部科学省に質した。
加計学園は、政府の国家戦略特区制度を活用し、愛媛県今治市に岡山理科大学の獣医学部の新設を計画。今治市は学園に対し、所有地を建設予定地として無償譲渡し、施設整備費96億円を助成することを決めている。
その文書は、内閣府が文科省に獣医学部の新設について「『できない』という選択肢はない」「早くやらないと責任を取ることになる」などと早期開設を迫るやりとりを記録したものだという。
文書の日時は、「平成28年9月26日」となっており、内閣府と文科省の幹部らの名前も記されている。
内閣府の参加者が言った内容として「『できない』という選択肢はなく、事務的にやることを早くやらないと責任を取ることになる」と記載。「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」と記載されている。そして、この文書の日付から約1か月後の2016年11月9日、国家戦略特区の諮問会議で、獣医学部の新設を認める制度改正が決まった。
これに対して、菅官房長官は事実関係を否定し「誰が書いたか分からない。こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」とシャーシャーと言っている。
こうした事態の中、文科省の前川喜平・前事務次官が25日、記者会見を開き、前述の文書について「確実に存在していた。担当課から説明の際に見せられた」と証言した。
そして昨年9月から10月に専門教育課から報告を受けた際に(文書を)受け取った。同課で作成し、幹部の間で共有されたことに間違いない」と述べた。
さらに文書の中の「官邸の最高レベルが言っている」との記載について、「一番上なら総理、その次なら官房長官だと思う。もしそうなら気になることだと思った」と振り返った。
獣医師の人数は足りている、として50年以上も見送られてきたにもかかわらず、昨年11月の国家戦略特区の諮問会議で決まってしまったことについては「本来なら、農水省から獣医師の人材需要への明確な見通しが示されるべきなのに示されず、特例を認めることになってしまった。きわめて薄弱な根拠のもとで認められた」と証言した。
前川前次官は、昨年6月から今年1月まで事務次官を務め、この期間中に記録文書が作られた。前川氏は「あったことを無かったことにすることはできない」と率直に語っている。当時の事務方トップの実名証言は実に重い。勇気ある発言である。
菅官房長官らは、前川氏が職員の天下り問題で辞任した経緯や「出会い系バー」へ出入りしていたことを取り上げ、前川氏を信用できない人物に仕立て上げようと躍起にさえなっている。現職の職員らは官邸を忖度し、はっきりとした答弁をしないが、公務員の立場上、それはやむを得ないが、前川氏は、もうやめたから言える。
前川氏は証人喚問に応ずると言っている。しかし、官邸はそれまでも拒否して必死に逃げようとしている。こんな曖昧なままで終わってはならない。