On a bench ブログ

ようこそ、当ブログへ。ジローと申します。
 毎日毎日、たくさんのCDやLPを聴いて過ごしております。

聴いたCD フレッド・アンダーソン:ザ・ミッシング・リンク+1

2022年02月24日 | ジャズ(フリー系)

 

 Fred Anderson (ts) Larry Hayrod (b) Hamid Drake (ds)  Adam Rudolph (per)

 これは、ここ数日外出時に続けて聴いたアルバム。

 フレッド・アンダーソンについては、名前だけはずっと前から知っていたものの、昔はAACMとかがちょっと苦手だったせいもあって、なかなか近づけていけない人だった。それが最近は少しずつ聴けるようになって、例えば「Milwaukee Tapes vol.1」という盤なんかすごく良くて、当ブログに感想を書いたこともありました。

 ただ、そうやって興味がある一方で、やっぱりこの、かなりのオジサンっぽい外見がジャマをして、ディスクユニオンなんかでこの人の盤を見かけても(実際、かなりよく見かける)、なかなかパッと食指が動かなかったり、という状況(スミマセン)。

 というわけで、実は久しぶりのフレッド・アンダーソンだったんだけど、これ、録音年では「Milwaukee Tapes vol.1」('80)と1年違いの’79年で、ちょうど50歳での録音ということに。そして、他の面子も、ミルウォーキーでのトランペットが抜けて今回はパーカッションのアダム・ルドルフが入る、という4人のうち3人は同じという編成。

 (ていうか、これ、ぼくが買った盤は帯がなかったから気づかなかったのだが、解説を開いてみたら後半日本語になっていて、要するに国内盤(ボンバ・レコード)なのだった。いやあ、まさか日本盤が出ているとは!)

 で、内容はいずれも10分台半ばの長尺の演奏3つと、最後にハミッド・ドレイクがタブラを演奏している未発表音源というのが1つ。フレッド・アンダーソンその人の演奏について言えば、今回はスタジオ録音なのでよりクリアで落ち着いた雰囲気があるせいか、彼の「味」というか強い個性みたいなものが、ダイレクトに濃く感じられる演奏のような気がする。まあ、一言で言えば、この人はかなり強く我が道を行く、というタイプなのではないかと。

 正直、音自体もちょっと野暮っぽく響くようにも思うんですよ。エネルギーとして濃くはあるんだけど、でも特に熱くブロウするという感じでもないし、かといって枯れているわけでもないし。しかし何と言うか、この人にはとにかくこの人独自の世界がすでに確固としてあって、容易なことでは揺るがないというか。そんな個性が強いフレッド・アンダーソン・ワールドに一旦入ってしまうと、容易に抜け出せずにいつまでも聴いてしまうという感じなのかも。

 実際、ここでは本当にワールド全開で、この盤は正に彼が主役で、他の3人はひたすら脇役。最初気づかなかったんだけど、以前聴いたサム・リヴァースの盤での演奏が印象に残っていたパーカッションの Adam Rudolph が、ここではどうも活躍していないように思えたのが聴きながら不満に思えてきていたんだけど、しかしそもそもが、例えば彼がソロを取ったり、もう一方のドラムスのハミッド・ドレイクと掛け合いをしたりするという機会が一切なし。これでは彼が何か目立つことをやろうにも、活躍のしようがない。

 それは残りの2人にしても同じで(ベースの音なんかもかなり弱いし)、この盤は最初から最後まで、3人のバッキングを背後に、ひたすらフレッド・アンダーソンが自分のサックスをプレイする、という盤なのですよ、たぶん。それが最後の曲で、ドレイクのドラムスがタブラに変わろうが、料理の味付けがちょっと変わった程度のことで、本質的には全く変わらない。ある意味、因業な盤ではないか、などと思ったりもしたわけですが。

 でも、それはこれで魅力があって、先週あたりくらいから、ほぼ一週間外出時に聴いてしまった。

 とにかくまあ、これは良くも悪くも、フレッド・アンダーソンというやや地味で濃いオジサンを堪能するアルバムなのではないか、と思った次第です。

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聴いたCD Front Range : New Frontier

2022年02月19日 | 民族音楽・ワールドミュージック・カントリー・純邦楽等

 

 たまに、思い出したように聴きたくなってしまうブルーグラス。

 例によってディスクユニオンに安く落ちているものをジャケットの直感だけで拾ったアルバムだけど、これがかなりの当たり。

 この「フロント・レンジ」というグループは、90年代に活動を始めた4人組グループだそうで、以前はあまりブルーグラスの文化がなかったというコロラドの出身。調べたところ、このアルバムは恐らく2作目で、当然ながらまだまだ若手だった頃の作品ということのようです。

 で、4人の持ち楽器はギター、マンドリン、バンジョーにベースと至ってシンプルな編成なんだけど、彼ら4人のヴォーカルがまず何といっても気持ちいい。リーダーはギターの Bob Amos という人のようで、恐らくリード・ヴォーカルも担当していると思うのだが、特にこの人の声が非常に伸びやかで、思わず聴き入ってしまう。

 しかし彼以外の残りのメンバーもコーラスでは恐らく全員で歌っているし、中にはアカペラの部分もあったりするので、全体としてヴォーカルのレヴェルはかなり高めかと。

 例によって解説のどこにも歌詞などは見当たらないので、こちらとしては聞き取れるところだけ聞き取ろうという気楽な気持ちで、聴かせていただいております。

(YouTube に一応このグループの動画はアップされているんだけど、どうもこのアルバムの雰囲気とは感じが違うので、今回は見送りました)

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観たDVD カズオ・イシグロ 文学白熱教室

2022年02月14日 | 本・文学

 

 これは、ちょっと恥ずかしい目的で見てしまったDVD。

 先月の終わりだったか、たまたま行った図書館に偶然置いてあって見つけたDVDだったんだけど、しかし実はこれまで、ぼくはカズオ・イシグロの本は1冊も読んではいなかった。

 ただ、彼についてはノーベル文学賞受賞時をはじめとして都度都度大きく報道もされていたので、人並みにはずっと興味があるつもりではあったのです。でも、それがいつまでたっても、「うーん、一番有名な『日の名残り』って、イギリスの年老いた執事の回想みたいな話なのか。どうもちょっとねえ・・・」みたいな感じで、手つかずのまま。もしかしたら、本当にこのまま、全く彼の一端にも触れないで終わってしまうことだってあったかもしれない。

 ところが、手に取ったこのDVDの裏を見ると、そのカズオ・イシグロが「自作を紐解きながら学生たちに文学の神髄・創作秘話を語った」と書いてある。

 つまり、これを見れば作品を読まずともとりあえず彼の人柄や作品のことも多少は分かるのではないか、と思ったわけ。我ながら、ちょっとズルしているような気もしたが、しかしこのまま何もしないよりマシではないかと。

 で、実際に観てみた感想はというと、すごく面白かった。

 この講義は、ノーベル賞受賞の2,3年前に氏が来日した折りに行われたもので、2,30人の学生が入るくらいの小さい部屋でちょこんと椅子に座った氏を学生が囲むような感じで話すという形式のものだったのだが、まず手ぶらで何の資料も持たずに気負いもなく学生たちに向き合い、随時質問も受けつつそれに率直かつ真摯に答える氏の姿がすごく素晴らしい。

 この辺り、これが日本人だったらきっと照れや衒いが出てくることが多いんだろうし、オープンに質疑応答を自然かつスムーズにこなすということも、きっと議論を多く行う国民性が背後にあるんだろうなあ、なんてことを感じてしまった。何て言うか、そんなこの講義の様子だけでも、すでにちょっと俄かファンになりかけてしまったんだけど。

 で、肝心の講義についても、自分が小説を書き始めたきっかけ、それに関連して日本との関わりや日本への思い、小説とは何か、なぜ小説を読むのか、そしてテーマとして大きく浮かび上がる人間の「記憶」についてなど、一貫してすごく率直に語っていて、本当に素晴らしい。

 人は、受け入れがたい現実を目の前にして、自身の記憶をそれと知らずに改変してしまったりもするし、都合の良くないところだけ意識の底に隠してしまうこともある。また社会全体でも、その社会を保つために似たようなことを行うことがある、と・・・。

 また、学生たちも欧米系からアジア系、また英語を話せない日本人などすごく多様で、質問も臆せずにどんどんするし、そのレベルもいろいろだったのもすごく面白かった(それを、ひとつひとつイシグロ氏は丁寧に拾っていた)。

 いやあ、こういう授業、彼だけでなくもっといろんな作家について聴いてみたい。例えばノーベル文学賞にしたって、毎年誰かが選ばれているのだが、けっこう名前も聞いたことがない人が多いという印象だし。しかし、当然ながら彼らには選ばれる理由があったわけでこちらが知らないだけなわけだし、それをこういう形式で紹介してくれると、すごく面白いと思うんだけど。

 ひとりずつ的を絞れば、YouTube なんかにインタビューとか落ちているんだろうか。

カズオ・イシグロ 文学白熱教室 PR動画

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聴いたCD Beethoven:Piano Concerto No.3 in C minor, Op 37 /Chopin: Five Pieces Dubrvka Tomsic

2022年02月10日 | クラシック

 

〔演奏〕Dubravka Tomsic(デュブラフカ・トムシッチ)

〔曲目〕
・ベートーベン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op37(たぶん、Anton Nanut/指揮 & Symphony Orchestra Ljubljana/演奏)

・ショパン:夜想曲 Op. 27/1&2 夜想曲 Op. 37/1&2 幻想曲 Op. 49

 これは、少し前に買っていた、全てが謎だったCD。

  去年の秋ごろだったか、どこか郊外を歩いていてたまたま入ったリサイクルショップで見つけたCDなんだけど、ジャンク品というべきか、完品でなく表紙とCD本体のみがソフトケースに入れられていただけという代物(ちなみに100円)だった。

 で、ジャケットに写っている女性ピアニストは全く知らない人なのだが、しかしその下には「GOLDEN MASTER SERIES」と書いてあって、もしかしたらかなりの大物なのかもしれないし、一体どんなピアニストなんだろうと思って拾ってみた、というわけ。それで、やっと2,3日前に初めて聴いてみたのだが、これが確かにかなり活躍している人だと判明(ただし、日本ではかなりレアだと思う)。

 この Dubravka Tomsic(デュブラフカ・トムシッチ)はスロヴェニアのドゥブロヴニク生まれ。国内で英才教育を受けた後、12歳という年齢でアメリカに渡ってジュリアード音楽院を卒業し、アルトゥール・ルービンシュタインにも師事してその最も重要な弟子の1人とも言われていたことがあったらしい。その後、帰国してリュブリャナで活動しているみたいだが、ネットで見た記事によると、世界中で「3,500以上のパフォーマンスと20以上のレコードと70のCDリリースでクレジット」されていて、受賞歴も多数。また各種コンクールの審査員も務める、とある。

 実際、アマゾンでちょっと検索しただけでもスカルラッティ、モーツァルト、ベートーヴェンからショパン、リスト、ブラームスなどかなりの数の録音が出てきて、本当にかなりの活躍であることがうかがわれるのだが、しかし一方では、その彼女が演奏しているCDのジャケットに肝心の彼女の名前が見えなかったり、一見して廉価盤っぽい雰囲気のものも多いように見えるのも事実。

 それは、まさにこのCDにしてもそうで、ベートーヴェンのコンチェルトを演奏しているというのに共演している指揮者やオケの表示もなければ録音データもなく、彼女自身の名前の綴りも普通は「Dubravka」と書くようなのだが、それが「Dubrvka」と a がひとつ抜けていたり(間違いではないのかもしれないが)、どこか雑というかあいまいというか。もしかしたらこれって、元はボックス物の1枚だったんじゃないかと思ったりもしてしまうのだが、それもよく分からない。

 そして更には、このベートーヴェンの第3コンチェルトの共演が、アマゾンで「ベルリンフィル」となっていたのでそれを頼りに指揮者を割り出そうとするも、それがどこを探してみても見つからず、それどころか、彼女が実際にベルリンフィルと共演したという事実の痕跡すらも見つからない。

 一方、彼女によるこのコンチェルトの録音として見つかるのは、アントン・ナヌートという指揮者と地元のリュブリャナのオケとの共演盤だけで、・・・というところで「もしや!?」と思いついて、幸い、YouTube にその地元オケとの録音が落ちていたのを見つけたので聞き比べてみると、これがまさかの同一音源。いやあ、もうちょっとちゃんと扱ってやってくれよと、ちょっと悲しくなってしまいました。

 で、実は、さっきネットでいろいろ調べている中で彼女の生年が書いてあるページに出くわしたので、ふと思いついて彼女ってちょうどアルゲリッチとかと同じくらいの歳なんじゃないかと思いついて調べて見ると、やはり2人はほぼ同一世代(アルゲリッチが1才だけ年下)。

 二人ともスロヴェニアとアルゼンチンというややマイナーな地域に生まれ、国際的に活躍しているのだが、片やショパンコンクールで陽の目を浴びて以来の誰でも知っている大スターなのに比べて、こちらもそれなりに世界で活躍しているのに、何か大きな話題とか活躍がなかったためにこうして知名度で圧倒的な差がついてしまったのかなあ、なんてちょっと悲しく思ってしまいました。

 でも・・・、そんなことを思ってしまうくらいに、ぼくはこのCDの演奏、ちょっと気に入ってしまったのですよ。まず、メインどころのベートーヴェンの第3コンチェルトですが、普通といえば普通なんだけど、まず非常にしっかりとしたテクニックがあり、堂々としたゆるぎない演奏でスケール感もあてという感じで、「必要にして十分」というか。

 実はこのところ、この第3番を他の盤でもけっこう聴く機会があって、ぼくの中ではこれまでそれほど好きな曲ではなかったのだが、それがにわかに5曲の中でのランクが上がって来た感じ。これまでは4→2→5→3…だったのが、今は3位に浮上したかもしれない(笑)。今回、この盤に手が伸びたのも、まさにこの曲を演奏しているのを覚えていたからだった。

 そして、後半のショパンの曲5曲もなかなか。まず、どういう経緯でこれらの録音がこの盤に採用されたのか知る由もないけど、わざわざショパンを選んでおきながら、ややマイナーと言ってもいいノクターンを4曲と幻想曲という取り合わせが、まずこだわりを感じてしまう。

 そして、これらのあまり華麗さがなく、苦みを含んだような曲を、彼女はルバートなどをあまり効かせず、正面から見据えて弾く。非常にショパンの内省的な世界が深く感じられるような演奏で、言うならば「一つ奥のショパン」、あるいは「ショパンの第二層」という感じ。ああ、ショパンって普段からこういう作品をしっかり聴いておけばよかったのかもと、日頃ショパンから遠ざかっている自分を反省してしまった。

 実際、演奏会でやるにしてもCDを作るにしても、ショパンのこの辺の作品に焦点を当てるのって、すごく難しいと思うのですよ。聴き手って、やっぱりショパンときいて期待するイメージというのがかなり強くあると思うので。それを、こういう形でしっかりやってくれるCDって、探してもなかなかないんじゃないだろうか。この後半のショパンだけでも、聴く価値があったと思うCDでした。

 (後記ーこのトムシッチ、2015年に来日して武蔵野市でリサイタルを開いたことがあったようなのですが、その時の様子を書いている方のブログによると、ここでもプログラムに作品27の夜想曲2曲と、作品49の幻想曲が載っていた様子。もしかすると、長きにわたって愛奏している曲だったのかも知れません)。

 ともあれ、「実力あり、録音もけっこうあり、しかしマイナー」とくれば、これは今後、絶対ディグするしかありません(笑)。

Piano Concerto No. 3 In C Minor, Op. 37: I. Allegro con brio

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セザール・フランク: 歴史的楽器によるピアノ作品集(ダニエル・イゾワール)

2022年02月05日 | クラシック

 

〔曲目〕セザール・フランク:
 ・前奏曲、コラールとフーガ ロ短調 CFF 24/FWV 21(1884)
 ・コラール第3番 イ短調 CFF 107/FWV 40『大オルガンのための三つのコラール』(1890)より(ブランシュ・セルヴァによるピアノ独奏版(1910))
 ・前奏曲、アリアと終曲 ホ長調 CFF 26/FWV 23(1887)
 ・前奏曲、フーガと変奏曲 ロ短調 Op.18 CFF 30b/FWV 30(1860-62)(ハロルド・バウアー編)
 ・ゆるやかな舞曲 ヘ短調 CFF 25/FWV 22(1885)

 これは、さっき初めて聴いたばかりなんだけど、早くもすごく感動中のCD。

 元はといえば、ここ数年好きな作曲家として自分の中で定着しつつあるセザール・フランクのピアノ曲のCDということで目についたもので、弾いているのが全然知らないピアニストというもの新鮮だし、あと普段フランクのピアノ曲としてあまり目にしない曲が入っているみたいだということもあって聴いてみたCDなんだけど、でも何か、一目このジャケットの写真を見た瞬間から、何か「???」と、モヤモヤっとしたものが心の中にあったのですよ。

 で、今日初めて聴きながらジャケットや解説もじっくり見始めたところが、このピアニストの名字が「イゾワール」、そして両親ともにオルガニストだった・・・。と読んだところで、「あっ!」と気づいてしまいました。

 ↑(父、アンドレ・イゾワール)

 何とこの人、昨年11月に『サントリーホールのオルガン4』というCDを聴いて感想を当ブログに書いていた、フランスの大オルガニスト、アンドレ・イゾワールの息子だったのです。いやあ、ホントに何か既視感みたいなものがあったのですよ。しかしそれにしても、親子だとしてもよく似るものですね。

https://blog.goo.ne.jp/onabenchbloggoo/c/bb73d629d880ab313d268350ba08a7f8

 で、その『サントリーホールのオルガン4』で今も強く記憶に残っているのは、バッハと並んでフランクの曲が半分くらい入っていたことで、つまりはこれで親子揃ってのフランク好きだと。息子は、父親の仕事柄、当然幼い頃からオルガン音楽を浴びる程聴いて育った中で、10代の頃には録音のために父親が家でフランクの曲を練習するのも聴いていた時期があり、その頃からフランクの音楽に感銘を受けていたとのこと。それが今、オルガニストではなくピアニストとして、こういう形で結実したということですか。そしてこのアルバムは、父親に謹んで捧げたいと、しっかりと亡き父への思いが解説に書いてあります。

 そしてこのアルバムでもうひとつ嬉しいのが、曲目の中で、父アンドレが『サントリーホールのオルガン4』の中で弾いており、ぼくもすごくいい曲だと思ったものの、かつてピアノ編曲で聴いたことがないので残念に思っていたフランク最晩年の作品「コラール第3番 イ短調 CFF 107/FWV 40」を、何と演奏していること。もう、これだけでも感涙じゃないですか!(そしてこの曲も、少年時代に父親が弾くのを聴いて虜になっていたのだと書いてある)

 また、息子ダニエルは正確には正確にはピアノの中でもフォルテピアノや古い時代のピアノを専門に弾くタイプのピアニストなのだそうで、今回の演奏に際しても、フランクが生きていた当時に制作されたエラール社(1875年)のものを使っているとのこと(現代のグランドピアノのように内部で弦を交差させずに平行になっているらしい)。

 音色的な印象では、例えばたまにあるベートーヴェンの時代のフォルテピアノなんかの楽器と比べるとやはり全然本格的な楽器に近づいたような感じで、でもフォルテピアノ的な感触もそれなりに残っていて聴いていて違和感もないし、個人的にはフランクもやはりキラキラの現代楽器よりこういう楽器のほうが引き立つような面があったりするのかなあ、と思いました(まあ、現代楽器には現代楽器の良さがあると思うので、方向性が違うと思っておけばいいのかも)。

 また、ダニエル・イゾワールその人の演奏も、テクニックもありゆるぎないスケール感も感じる一方、非常に人間性みたいなものを備えているように感じる演奏。見た目、もう若いとも言えないような年齢みたいだけど、まだあまり録音は多くなく、さっき調べて目についたのはモーツァルトの協奏曲くらい。遅咲きということなのかどうか(しかしこんな人が埋もれていたとすればめちゃくちゃ勿体ない)。室内楽方面もやっているようだけど、この後、どんな録音が出てくるんだろう。

↓(このCDの紹介動画のようです)

César Franck Triptyques _ Daniel Isoir

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