エロイカ変奏曲~ベートーヴェン | |
ブレンデル(アルフレッド),ベートーヴェン | |
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント |
〔曲目〕
・15の変奏曲とフーガ変ホ長調op.35 (エロイカ変奏曲)
・バガテル「エリーゼのために」イ短調 WoO.59
・6つのバガテル op.126
・6つのエコセーズ WoO.83
このところ2,3週間は、あれでもないこれでもないとフリー系のジャズを聴き散らす日々だったのだが(全然ブログにアップできていませんが)、それが何日か前から、なぜか頭の中に「エロイカ変奏曲」のバス旋律がしきりに浮かんできて、気づくと自然に口ずさんだりするまでになってしまった。理由は分からないけど、もしかすると、また自分の中でベートーヴェン聴きの日々が来つつあるのかもしれません(笑)。
で、頭の中だけじゃナンなんで、実際の演奏を聴いてみようと思って引っ張り出したのがこのブレンデル盤。実はこれ、けっこう懐かしい盤で、昔近くの図書館にあったのを借りたのが最初なんだけど、でもすごく解説もボロボロ、盤面もキズだらけだった(から、よく覚えているんだけど)。よく働いている(借りられている)というべきか限界寸前と言うべきか、内心ちゃんと音飛びせずに聴けるのかどうか、借りて帰りながらちょっとヒヤヒヤしたものでした。
そして、その後何回か聴いてきたと思うけど、今回はけっこう間があいたというか、多分何年かぶりのはず。そうなると、やはり印象も変わってくるもので、当時はまだ「エロイカ変奏曲」自体あまり馴染みがなかったはずで、演奏もカチッとしたカタい印象があったんだけど、でも今こうして聴き直してみると、ここでのブレンデルは旋律の歌い方にけっこうタメもあるし、ペダルもわりと使うし、表情も豊か。こんなエモーショナルな演奏だったかなあと、ちょっとビックリしてしまいました。
(ところで、未だに自分の中でしっかり納得できていないのが、なぜ冒頭のあの「英雄」交響曲でも使われたバス旋律が「主題」ではないのか、ということ。そもそも、このバス旋律のほうがよっぽど目立っているし最後のフーガの主題もこっちだし、「主題」のほうはあまりはっきり演奏されることが多くもないし。その後のいろんな変奏にしても、聴き手としては実際にはバス旋律のほうをアテにして聴いているんじゃないかとも思うので、自分としてはどうしてもこっちのほうの肩を持ちたくなってしまう。まあ、その辺の事情よく知らないので、ただの浅い印象でしかないんだけど)。
ベートーヴェンの変奏曲はほかにも、ここ数年ちょこちょこ聴くようになったけど、やっぱりこの「エロイカ変奏曲」が一番好きかなあ。
で、このCDの面白いところは、冒頭の「エロイカ変奏曲」の後に、突然単独の「エリーゼのために」が来て、「6つのバガテル op.126」から最後「6つのエコセーズ WoO.83」と続く、かなり独特な曲順。
「6つのバガテル op.126」といえば、よく耳にする「ベートーヴェン最後のピアノ曲」ということで特別視されることも多いと思うんだけど、それをどちらも可愛い「エリーゼのために」と「エコセーズ」の間に組み込むって、もしかしてブレンデルのなかでは「単にたまたま最後になった小品」くらいの感じなのだろうか。
で、その終曲を聴きながらそんなことを考えていると、最後にあの「エコセーズ」が始まるので、思わず微笑ましい気分になってしまう。この曲、「ピアノ名曲集」みたいなCDには出てくるのだろうとは思うけど、普段ピアニストが勝負をかける本格的なCDでは、逆にまずお目にかからない気がする(で、聴き始めるとあっという間に終わるのでちょっとずっこける)。
ともあれ、このCD。改めてこうして聴いてみると、一見寄せ集めのようでいて、でも統一感があるといえばあるような、ブレンデルの中ではちょっと独特な盤といえるのではないか、という印象。ソナタ集とかよりも、ちょっとリラックスして聴けるという面もあるかも。