これは先週、偶然DVDを見つけて、思わず「ウオオォ~!!」と叫んでしまった(無論、心の中でだけど)むかし異常に好きだった作品。
見た目、ちょっとB級映画っぽくも見えるんだけど、でもいいんですよ。元はこれ、テレビ映画だったわけだし(前後半90×2の180分)。そして、ものすごく面白いです。
ジャンルとしては、スティーヴン・キング原作なのでホラーといえばそうかもしれないんだけど、むしろSFの要素のほうが大きいかなあ。ぼくなりのイメージでいえば、むしろ「ミステリー・ゾーン」なんかの雰囲気に近いのかも。
ぼくは怖い映画が苦手なので、普段スティーヴン・キングなんてすごく怖かったらイヤだからあまり見ないんだけど(ガチなホラー映画なんてまず絶対見ない)、これはそんなぼくなんかにもあまり怖くなくてちょうど良かった。
で、これ、今調べたら1997年の深夜、HNKで放送されたことがあるようで、多分ぼくはそれを(完全にではないかもしれないけど)見て、それですごく気に入ってしまったのです。それで、当時VHSでレンタルして何度も見たのだと思う(けど、そこらへんの記憶はちょっとあいまい)。
大まかな筋を少しだけ書いておくと、ある夜ロスからボストン行の旅客機が満員で出発したのだが、不思議なことにそんな低緯度の上空にオーロラが出ていて、飛行機はその中を通ってしまった。そして、寝ていた乗客のひとりの盲目の少女が最初に目覚めて気づくと、満員だったはずの機内の乗客の大半が消えてしまっており、残ったのは全部で10人のみ。しかも、消えた人たちが身に着けていた時計や装飾品などが、床にバラバラと落ちている。幸い、乗客のひとりに非番のパイロットの人がいたので、その人が無人のコックピットに座って近場の空港に着陸するが、しかしそこも誰もいない空虚な空間が広がっている、という展開・・・。
10人の残った乗客の人たちは様々で、その中で自分たちに何が起こったのか推理する役どころの推理小説作家や、パイロットをサポートしたり問題児の乗客を黙らせたりと頼りになるイギリス情報部員の男など、いろんなキャラがいるのだが、そんな中で最も目立つのが偏執的な父親に幼少期から徹底的に息子にエリート教育を施され、メンタルが完全に壊れてしまっているビジネスマン、トゥーミーと、盲目の少女ダイナ。彼女は目が見えない代わりに聴覚が異常に優れていて、それどころか他人の心の中まで見えてしまうような能力がある。
で、エリート・ビジネスマンのトゥーミーさんは今まさに自分の人生が現実にも破たんしようとするところであり、最近独断で4000万ドルにも及ぶゴミ同然の債権を買い、会社に損害を与えたことを翌日ボストンで開かれる会議にて報告するという滅茶苦茶な目的のためにどうしても飛行機が遅れてしまうことが許せず、パイロットや他の乗客たちにモンスター・クレイマー的に当たり散らす。そして子どもの頃、お前のような怠け者はランゴリアーズがやってきて生きたまま食ってしまうと父親に脅されたことが悪夢のように蘇るのだが、そんな彼の心の中をダイナが感じ取ってしまう。そして、空港の彼方の山の向こうから、何かがカサカサとイヤな音を出しながら近づいてくるのをも、いち早く聴きとってしまう。
この映画を最初に見た時は、トゥーミーさんの存在がちょっと取って付けたような悪役に感じて(その他の人は基本的に協力し合うので、悪役は彼一人)、別にいなくてもいいのではないかとも思ったのだが、今こうして見直してみると、やっぱりすごく存在感があるし、久しぶりにみてみると彼も事情があって自分の破綻と引きかえに父親の支配から逃れようとしていた可哀そうなヤツだと思うこともできるしで、ちょっと親近感も感じてしまった。
そして、唯一の子どもであり、ある意味巫女的な少女ダイナと、一対のペアとしての配役として、すごくかみ合っているな、とも。そしてそのダイナの、映画のややくすんだ色調の多い画面の中で、鮮やかなピンクの服と真っ黒のサングラス、そのサングラスを外した時のきれいな瞳とのコントラストも印象的。一方で、全身黒のスーツに、病的に色白の顔のトゥーミーさんの、こちらは病んだ結果のまっ黒な目の隈。
全編、通して見ようとすると180分は長いと感じるかもしれないけど、しかし物語の展開も緩んだところがなくて、徐々に乗客の身に起こったことが分かってくる謎解きの要素もあるので、全然退屈しないと思う。そして、最後にしっかりと、ランゴリアーズがたくさんでやって来るのですよ。各所で言われているように、CGはいかにもチープといえばチープですが、しかしそれも、(ぼくのように)作品が気に入ってくればあまり気にならなくなるかも。
多分、知られている100倍も傑作であることを、ぼくは疑わない作品です。
↓ (英語版だけど、全編の動画がありました)
The Langoliers 1995 Full movie