コダーイの「山の夜」の稿でもちょっと触れましたが、この曲もかつて小学生の時に地元の少年少女合唱団の発表会で歌って、その時のプログラムをなくしてしまったために長らく題名が分からなくなっていた曲の一つ。
しっかし(!)、こっちのほうは探すのに苦労したのなんの。発表会の時の録音(カセット)を何度か聴くうちにこの曲のことがどうしても気になってきて、すでに高校生くらいの時にはなくなったプログラムを探して実家の押入れの中をゴソゴソ探していた記憶がありますから、それ以来、最低でも15年くらいは確実に探していたと思います。
しかし、どうしてもプログラムが見つからない。なので、仕方なく曲調からなんとか作曲家に目星をつけて、その作曲家の合唱曲のCDを当ってみようと思ったこともありましたが、しかしこの曲、一見すると聖歌や古楽などの古い曲にも思えるんだけど、それにしては垢抜けしてるような気がするし、かといって近代以降の自分の知っている作曲家の作品だとすると、思い当たる誰のイメージにもピッタリしない。とすれば、もしかして合唱曲ばかり書いているたぐいの作曲家の作品なのか、それともいまひとつ名の通ってない作曲家の作品で、あまりCDなども出ていないのか。
・・・と、大学に入って上京してからも、折に触れて図書館なんかで特に興味もない合唱曲のCDに手を伸ばして探りを入れたりしていましたが、しかしこれがホントに、ど~しても見つからない。
ついには自力で探すのをギブ・アップして、当時母がママさんコーラスなどの活動をしていたのでその知り合いの人に頼んで聴いてもらったり、ついには当の合唱団の事務局にまで問い合わせてもみたのですが、当時のプログラムはもう残っていないということで、一時は完全にお手上げの状態だったのです。
ところがある日・・・、その長年の謎が、全くの偶然からあっけなく解決してしまいました。
ある日の深夜、たまたまテレビをみていて、ウイーン少年合唱団がまた来日して公演をやるらしく、そのコマーシャルが流れてきたのですが、何とそこで歌われていたのが、忘れもしないあの曲だったのです!
その瞬間、思わず「うお~!」と叫び声を上げてしまいました。そして、翌日興奮さめやらぬまま公演の事務局に問わせてみると、・・・まさか、それが「ベンジャミン・ブリテン!」だったとは。
いやあ、ブリテンといえば、もちろん名前は知っていましたが、ふだんオケ曲を聴かないぼくにとってはほとんどなじみのない作曲家で、昔CDをちょこっと聴いた限りでもあまりとっつきやすいとはいえない現代的な曲を作っていたという印象しかなく、まったく捜索の範囲にさえ入っていなかったのです(というか、そもそも曲の歌詞が英語じゃないので、イギリス人という発想自体していなかった)。
いやあしかし、それがひそかにこんな美しい曲を作っていたとは。後から考えても、やはりこんな偶然でもなければ、ぼくの知識だけではどうやってもブリテンにはたどり着けなかっただろうなあと、うなだれるしかなかった次第。
と思いかけたのですが・・・、ええ~っ!!、その後調べてみると、この曲って必ずしも全部がブリテンのオリジナルというわけじゃなく、しかも冒頭の曲のタイトルが何だか聞き覚えがあると思ったら、昔たしかに聴いたことがあるグレゴリオ聖歌のCDの収録曲と一致していると判明!
なんてこった、そのCDを聴いていた時に、もしその曲調(もちろん、ブリテンによってアレンジされているので聴いた印象はけっこう違うんだけど)の一致に気づいていたら、それをきっかけにこの曲集にたどり着けたかもしれなかった。いやあ、自力で解決できる可能性はあったということか。
とまあ、こうして、自分で見つけられなかった点は無念とはいえ、ついに長年の謎が氷解したというわけですが(題名がわかってみると、「ああ、そういえばブリテンの名前もよく聞くなあ」という人まで現れる始末)、そのようなぼくの個人的事情はさておいても、この曲、非常に魅力的な作品だと思いますので、まだ未聴という方がいましたら、ぜひにと強くオススメしたいところです。キャロルということで、当然ながらクリスマス向きでもあります。
また、演奏としては、上にご紹介した盤は全曲盤でもあり、伴奏もオリジナルのハープ伴奏(ウィーン少年合唱団をはじめとして、抜粋盤やピアノ伴奏も多い)ということで、気に入ってます。