Peter Kenagy (tp), Jason Hunter (ts), Jeremy Udden (as), Adam Larrabee (g), Rick McLaughlin (b), Jorge Perez-Albela (d)
これは、半月くらい前からちょこちょこ聴いていたアルバム。
もとは「FRESH SOUND NEW TALENT」のレーベル拾いだったんだけど、こんな感じのジャケットだし3管だしで、たぶんエレクトロニクスが入っていたり騒がし目の音だったりするんだろうなと思っていたら、全然予想を裏切られてしまった。
リーダーは、シアトル出身でボストンで活躍するという若手トランペット奏者、Peter Kenagy。とりあえず、どんな顔なんだろうとネットで写真を探してみたら、髪型も服装も何だか50年くらい前の田舎の純朴な青年みたいで、まずそこで驚いてしまった。
そして始まった1曲目も、「ナイル」という本当に大きな川がゆったり流れているようなのんびりした曲で、2曲目はミドル・テンポの普通程度にノリのいい曲で、後半はそういう曲も多いのだが、しかしそれも3管が迫力ある掛け合いをするというほどでもないし、3曲めの「AYG...」になるとまたのんびりムードに戻って、どうやら「After You've Gone」という昔の曲に、たまたま聴いていたというラヴェルの「ボレロ」のリズムを組み合わせた曲であるらしい。
どうも、この人は熱気とか鋭さを帯びたインタープレイを追及するというタイプというよりは、どちらかというと皆で楽しくスインギーなノリの合奏をするという人であるような感じ。なので、せっかく3管いるフロントよりも、実はギターのスペーシーな音のほうが全体に効いているのがおかしかったりする。
といって、そんな雰囲気の演奏が、全面的に古臭く感じるかというとそんなことはなくて、やっぱり現代的ではあると思うし、Peter Kenagy その人についても、若くしてこうして音楽の世界で頭角を現して来るというだけに、見かけの純朴さだけではなく、かなり個性も強めな人物という印象。
例えばそれぞれの曲についても、「Dog Story」は姉妹の飼っている犬の見たかもしれない夢(そもそも分かるわけがないし)についての曲だというし、「Little Machine」曲はAIと組み立てラインについての曲で、それをダニーロ・ペレスのために書いたとか、そして「disappearing man」という曲は、ラン・ブレイクとアルフレッド・ヒッチコックについての曲なのだとか。最初、そうなのかとつい思ってしまったが、よく考えると何のことだかよく分からない。
それに、そもそもジャケットの変なロボットからして、あまり全体の曲調とは関係なくてちょっと人を食っているような感じもするし。
ということで、この盤は古臭いようでそうでもないようで、真面目なようでちょっとトボけているようで、何だか掴みどころがないところが面白い、みたいに感じて、けっこう気にってしまった盤でした。
AYG...
Dog Story