On a bench ブログ

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 毎日毎日、たくさんのCDやLPを聴いて過ごしております。

読んだ小説 石原慎太郎:『ファンキー・ジャンプ』

2022年11月12日 | 本・文学

 石原慎太郎の小説を、今回、まだたった一篇だけだが、人生で初めて読んでみた。

 石原慎太郎という存在については、かつて東京都知事だった時代があったし、メディアに出ることも多かったから、ぼくの中でもわりと意識にのぼることが多い政治家の一人だったが、しかしこれまでの印象を一言で言うと、ずっと「何だかよく分からない人」だったという印象が強い。

 というのも、彼はもともと流行作家として世に出たからで、ぼくの中の価値観では政治家になるよりも文学者になることのほうがよほど価値があると思っていたので、それをわざわざ作家として成功した後であんな政治家に転身するという理由が、ぼくには全く理解できないことだった。

 それに、その彼の出世作というのがまた、昭和30年頃の不良少年たちの生態を描いた作品ということで、そういう作品が一世を風靡したという当時の日本の世情という面でも、今一つ実感として理解するのが難しかった。

 (それともうひとつ、弟の石原裕次郎についても、ぼくがテレビでその姿を見始めた時はすでにでっぷりしたおじさんになっていたので、なんでこの人が異常なまでの人気があるのか、やはりなかなか分かりずらいことではあった。というか、それよりも以前たまたま目にした昔の週刊誌に載っていた若かりし頃の慎太郎氏の写真ほうがよほど凛々しくてびっくりした記憶もある)

 ただ、その『太陽の季節』が当時芥川賞も獲って、評論家たちも評価していたということは当然それなりにスゴい点があったはずで、それを分からないままずっと食わず嫌いでいるのはダメな気がしたので一度は読んでみたほうがいいのではないかと思わないこともなかったのだが、しかしついに最近まで食指が動くことは一度もなかったのだった。

 というわけで、石原氏についてはぼくの中で何もかもが謎だったのだが、それが今回変化が起きたのは、この『ファンキー・ジャンプ』という作品が日本で初のモダン・ジャズ小説だと知ったからであり、また石原氏が当時まだ日本に紹介されていなかったホレス・シルヴァーなどを海外で聴いて感銘を受けていたと言っていたり、以前テレビでファンキー・ジャズを日本に持ち込んだのは自分で、神彰の興行に誰を呼んだらいいか聞かれていろいろと紹介したりもしたと言ったりしていたのを覚えていたこともあって、そういう小説なら読んでみてもいいかと思ったわけ。

 で、この作品、今では文庫本などで手軽には読めないみたいで、結局図書館でページが茶色くなった古い日本文学全集の一巻を借りて読むことに。

 しかし、これがけっこう斬新で面白い。

 筋としては、当時アート・ブレイキーやディジー・ガレスピーにも認められたような一人の天才ピアニストが麻薬中毒で破滅するという、ある意味陳腐にも思える話なのだが、しかし内容が散文と詩が混じったような斬新な手法で、しかもかなりセンチメルタルというか、リリシズムもあってかなり惹きつけられる魅力がある。

 また、小説の中ですでにボロボロの満身創痍になりながらも、主人公が他のメンバーを率いて最後の演奏をしていくのだが、曲が始まるごとに主人公の頭の中で麻薬による幻覚のようなイメージが詩のように綴られていき、その一見支離滅裂なイメージと現実の主人公のこれまでの破たんした人生がまぜこぜになって肉体的にも精神的にも破滅しつつある様子を浮かび上がらせていくような構成になっていて、これがまた斬新。

 しかも、これがまだアート・ブレイキーが来日してジャズ・ブームが興る前の作品というのだから、当時石原氏は時代の先端を走っていた寵児的な存在だったことが窺えるように思う。

 今回、小説を読んだ後でけっこうネットで他の作品も含めての評なども読んでみて石原氏の大体の作風も分かってきたので、これから別の作品も読んでいくかはちょっと分からないのだが、しかしこの作品はけっこう予想を上回って面白かったし、何より長年の食わず嫌いを(多少とも)脱したことで、ちょっと宿題をひとつやったような、そんな読書体験になった次第です。

 

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(少年時代の思い出の曲)「イン・ザイール」/ジョニー・ウエイクリン

2022年11月02日 | (旧HP記事)他ジャンル

Johnny Wakelin - In Zaire (1976) • TopPop

誰しも、ふと耳に入ってきたフレーズが、なぜか心に残ってずっと離れないという経験はよくあると思いますが、ぼくの場合、それでいちばん印象に残っているのが、この「イン・ザイール」。

 これ、ネタから明かしてしまうと、昭和50年代にTBS系で朝にやっていた「おはよう700」という番組内の「キャラバンⅡ」というコーナーのテーマ曲だったそうで、きっと、ぼくのほかにも覚えている方がいるのではないでしょうか。で、この頃ぼくは小学生(おそらく、「イン・ザイール」がテーマだったアフリカ編は昭和52年)。

 しかし、当時ぼくがその番組を見たのは実は一回だけで(というより、その曲が流れた数分だけ)、番組名すら知らなかったし、もちろんコーナーのテーマ曲なんて知るはずもないから、次の日にテレビをチェックすることもありませんでした(というより、その日は休みだったという記憶があって、最近まで日曜の番組だと思っていた。学校が休みの時期に見たのかなあ)。

 それで結局、曲名と「♪イン・ザイール、イン・ザイール」というフレーズだけが、理由も分からず強固に頭に焼きついてしまった、というわけです。

 で、大人になってもその記憶は消えなかったので、ちょこちょこと探りを入れたりしていたのですが、しかし当時はインターネットもなかったし、なにしろ手がかりが「イン・ザイール」という曲名しかない以上、アフリカ音楽くらいしか探しようがない。

 唯一の希望は、この曲が始まる直前のナレーションで、「みんなが知っている曲」というニュアンスで紹介されていた記憶があるということで、もしかしたらこれはかなり有名な曲で、偶然またいつかテレビで流れたりするかもしれないということでしたが、しかしポップス方面にまったく弱い自分としては、自力で探すのはとても無理だと思っていたのです。

 それが数年前、ついに自分もインターネットを使うようになって(正直、かなり遅かったのですが)、ある日ふと思い出して検索してみると、あったあった、ありましたよ。

 これ、もとはジョニー・ウエイクリンという人の曲で、試聴できるレコード店のサイトを見つけて聴いてみると、まさにこれ! その瞬間、ちょっと涙が出そうになりました。それにこの曲、やはり元々かなりのインパクトがあったと見えて、日本の歌手もカヴァーしているし、ぼくの周りの人もけっこう知っておりました。いやあ、長年の謎が解けて、うれしかったですね、まずは。

 ただ、ちょっと寂しいのはいつもその後。

 ぼくの場合、気になったことはけっこういつまでも忘れずに調べ続けるタイプで、テレビなどで耳にしていいなあと思ったほかのメロディなども、ちょこちょこと飽きずに探してしまう。で、昔から気になっていたものは、もう大半探してしまった感がある。

 それですっきりしたのはいいんだけど、しかし大抵は曲名が分かっただけ。曲のほかの部分は大して面白くなかったり、その後の広がりもなかったりで、正直いって「何も残らないなあ」と思うことが多い気がする。というか、むしろ何だか楽しみがひとつ減ったような気になることさえある。

 この時の場合も、いざ曲名が分かったといって、ウェイクリンという歌手を特に好きになったという訳でもなく、しばらくしたらまた頭の中から消えてしまっていた。

 ・・・う~ん、でも結局はいつまでも探せないのもイヤなわけだし、こんなところでマイナスな気持ちになってもしょうがないか、なんていつも思うわけです(笑)。

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マーク・ゴールデンバーグ:「剣と女王」(サントリー・ローヤル(ランボー篇)のCM曲)

2022年11月01日 | (旧HP記事)他ジャンル

 

 かなり長く続いた番組なので憶えている方も多いと思いますが、かつて土曜日の夕方に、芳村真理と西川きよしの司会で、「料理天国」という番組があったのをご存知でしょうか?

 今で言う料理バラエティーみたいな番組で、ぼくもよく見ていたのですが(当時、いつもおいしそうな料理が食べられる元相撲取りのタレント、龍虎がうらやましくてしかたなかった)、あの番組は、番組自体のほかにも合間に流れるコマーシャルがかなり独特で面白くて、それが今でもすごく印象に残っています。

 どれもウィスキーみたいなお酒のコマーシャルで、まあ今から考えればサントリーの提供だったから当然なんだけど、中でも特に印象に残っているのが、砂漠みたいなところをサーカスの団員たちが芸をしながら歩いていて、詩人のランボーがどうのこうのって言ってたヤツ。
 特に、そこに使われていた音楽がすごくインパクトがあって、あれって何という曲なんだろうと思い出す度に気になっておりました。

 それが数日前、夜いつものように徒然なるままにネットでCDレビューのブログなどを渡り歩いていると、ふと画面に「サントリー・ローヤルCM曲」、「ランボー篇」という文字が目に入ってまいりまして、「もしや。でもまさか・・・」と、かなりドキドキしながら検索してみると、おお、けっこうたくさんコメントが出てきて、どうやらそれっぽい。そして、そこに現れた魔法の言葉、「youtube」。

 「頼む、出てこいよ」と、願いを込めてクリックしてみると・・・、やった、ビンゴ!

 いやあ、確かにこれです。 う~ん、今から見ると、かなり時代を感じたりもしますが、でも懐かしい。
 ついつい、5回くらい続けて見てしまいました。ほかにも、ガウディの建築でバレエっぽい踊りをするヴァージョンや、マーラーの「大地の歌」のバージョンもありました(違う商品だけど、野坂昭如の「ソクラテスかプラトンか」や、有名な雨の子犬のCMも出てきた)。
 でも、このCMって60秒もあって、かなりの大作。単なるCM以上の「作品」といってもいいような雰囲気すら漂っております。

 で、この「ランボー篇」の音楽の正体なんですが、実はマーク・ゴールデンバーグという人の、『剣と女王』という曲で、もともとレコードやCDなどにはなっていなかったようです。それが、このCMの反響がすごくて、後から『鞄を持った男』というアルバムが発売されたらしいんだけど(このCMのシリーズのランボー篇以外の音楽も入っているらしい)、CMとは大分アレンジが違うみたいで、アマゾンほかでも「ガッカリした」という評価も見られます。

 ともあれ、何といっても画像もあることだし、「もしかしてあれかな?」と心当たりがある方は、とりあえずは手近なyoutubeで 確認なさって下さいませ。(2007/07/19)

サントリーローヤルCM

サントリー ローヤル ガウディ編

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