On a bench ブログ

ようこそ、当ブログへ。ジローと申します。
 毎日毎日、たくさんのCDやLPを聴いて過ごしております。

聴いたCD ヴァルター・ギーゼキング:室内楽作品集第1巻(瀬尾和紀ほか)

2023年05月29日 | クラシック

 

 瀬尾和紀(フルート) フランソワ・サルク(チェロ) 朴鐘和(ピアノ) ローラン・ヴァグシャル(ピアノ) 

・ ヴォルガの舟歌による変奏曲 ~チェロとピアノのための
・ ソナチネ ~フルートとピアノのための
・ 子供の歌による遊戯 ~ピアノ連弾のための
・ 演奏会用ソナチネ ~チェロとピアノのための
・ グリーグの主題による変奏曲 ~フルートとピアノのための

 これは、たまに行く図書館で見つけたCD。

 でも、その時は、あと1枚どのCDを借りるか困っていただけで、期待みたいなものは全くなし。だって、クラシックの世界では著名な演奏家が実は作曲家でもあって、という話はけっこうよくあるパターンで、それがかのギーゼキングだったとしても、所詮は演奏の傍らでの余技なのだろう、とつい思ってしまったので。

 でも、そう思いながらも結局こうして借りてしまったのは、一方ではやはり「ギーゼキング」という長年の信用が作用したのだと思うけど、でも今回、いざCDを初めてプレーヤーに載せようとする時も、気持ちはちょっと重かったというのが正直なところ。

 だったのだが・・・、冒頭いきなり目の前に現れたのが、全くもって想定外の世界。 んっ・・・? この、すごく聴き覚えのある旋律は、あの『ヴォルガの舟歌』じゃないですか!

 ギーゼキングといえば、あの昔から馴染んできた本職のピアノ演奏でもロシア物なんて全然印象にないというのに、それがなぜ作曲となると突然ロシア民謡の世界が現れるのか。しかも、それがミスマッチな結果になるかと思いきや、チェロとピアノのアンサンブルの変奏曲が、時に重厚で力強く、時に繊細さや優雅さも兼ね備えていて、何と言うか、かなり魅力的。

 というか、個人的に10代の頃にギーゼキングのドビュッシー演奏に魅せられて以来、そのイメージからこれまで一歩も出ていなかったような自分の中で、これまでの固定観念が一瞬で音を立てて壊れていったというか、自分はギーゼキングの頭の中を何一つ分かっていなかったのだ、ということが赤裸々に明らかになってしまったのだった(要するに、彼の頭の中は、彼がこれまで弾いてきた作曲家やその曲だけで出来上がっていると勝手に思い込んでいた)。

 そして、続くラヴェルを少し思わせる端正なフルートのためのソナチネ、モーツァルトの「きらきら星変奏曲」を基にしたピアノ連弾曲、さらにもう1曲チェロ曲のソナチネが続いた後、最後はグリーグの『抒情小曲集』の「アリエッタ」に基づく変奏曲まで、どれも十分聴き応えのある曲ばかり。

 この、作曲家としてのギーゼキングに目を付け、CDを企画したのは瀬尾和紀さんというフルート奏者の方らしいのだが、ホントに慧眼というか、その企画を通したレコード会社もけっこうスゴイというか。

 基本的に、作曲家ギーゼキングの世界は、ラヴェルやフォーレを彷彿とさせる20世紀初めの頃のフランス音楽に近しい世界のように感じるのだが、やはり往年のピアノ演奏から受ける印象の通り、非常に繊細かつ品も良いところが感じられて、こうして聴いている限り、これまで全くといっていいほど埋もれてしまっているのが不思議に思えてくるような印象。

 これが、もっと名のある作曲家の作品だったとしたら、もっと頻繁に録音されてリスナーの耳に届いていたとしても、全然おかしくないレベルなのではないかと思ってしまった。

 そしてこの1枚は、構成的にもそんな作品の中から端正なフルート曲とけっこう迫力のあるチェロ曲を2曲ずつ配置する中で、ピアノ連弾曲を真ん中に挟んでいる点もすごく巧妙。

 と言うか、そんなことの前に、作曲家ギーゼキングの作品がとにかく予想をいくつも上回ってスゴイ。最初、聴く前にちょっと軽く見てしまって全く申し訳ありませんでした、というCDでした。

 いやあ、ギーゼキングって、これまで思っていたよりずっと世界も広くて才能も豊かな人だったんだなあ。

⇓(YouTubeで、このCDの演奏は見つからなかったけど、別の演奏家によるフルートとピアノのためのソナチネがありました。でも、本当は『ヴォルガの舟歌』が良かったんだけどなあ)

Amy Porter and Tim Carey play Gieseking Sonatine

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観たDVD 土曜日の虎【昭和の名作ライブラリー 第40】

2023年05月23日 | 映画・TV

 

 

 これは、以前ディスクユニオンで中古品を見かけてから、気になって仕方なかったDVD。

 で、その時は中古価格も高かったしでスルーしてしまったんだけど、今回また見つけて我慢できずに買ってしまいました。

 でもこれ、ホントにあまりにも予想外というか、だって、主演があの烏丸少将とか「探偵物語」の成田三樹夫ですからね(それと、「仁義なき戦い」みたいなヤクザ映画にもよく出ていたかなあ)。

 それが、白黒テレビ時代にはこんなサスペンスのドラマの主役を張っていて、しかも役どころが「企業コンサルタント」というのがまた渋い!

 これ、「昭和の名作ライブラリー」というかなり大きな昔のドラマを復刻しているシリーズ中の1巻で、ちょうどこれを見つけた時に、天知茂のやはり白黒時代のドラマなんかも隣りに並んでいたんだけど、でも個人的な性向として、そんな大スターよりこんな感じの渋めの俳優にどうしても目が行ってしまうので(音楽でも何でもそうだけど)、ぼくとしてはどうしてもこちらのほうに手が伸びてしまう。

 で、DVD5枚組(全20話)のうち、最初の2枚ほどを今見終わったところなんだけど、これがけっこう面白い。

 このドラマ、原作は梶山季之の小説ということで、元がちゃんとした小説であるだけに、まずシナリオがかなりしっかりしている感じ。しかも、毎回起こる事件が、ある企業が開発した新製品の情報を悪い企業が奪い取るみたいな産業スパイ事件で、それを成田三樹夫扮するコンサルタントが未然に防ぐ、みたいな展開で、こんな経済事件みたいなドラマを、こんな時代にもうやっていたというのが驚きというか渋いというか、レアというか。

 そして、当然ながら野外ロケでは、ぼくが生まれる少し前の東京(代々木や渋谷あたりの街が多い)が頻繫に映り込むのが、また泣ける。

 このドラマ、放送が1966年の前半で、「土曜日の虎」というだけに実際に土曜日、夜10時の時間帯の放送。そして局がTBSなので、その少ししばらく経ってから8時台にドリフが始まる、というような時代だったことになる。

 いやあ、でもこの頃の東京って、まだなにもかも素朴だったというか、ビルなんかも四角くて白いシンプルなビルが多いし、空き地や土の道路もあるし、走っている車もいちいちカワイイしで、見ていて飽きることがない。

 思うに、テレビドラマの再放送って、これからしばらく後の70年代のドラマになるとカラー作品になっているから、再放送するにしてもやりやすかったと思うんだけど、それがこういう白黒作品ってことになると、それほど時代は違わないのにやはりグッと再放送のハードルが高くなったんじゃないかと思うんですよね。

 まあ、昔の東京ということでは名作映画なんかもあるけど、でも例えば小津作品とかだともう少し時代が前になっちゃったりするし、そういう意味ではこの60年代白黒作品の時代の東京って、我々後世の視聴者にとって、ある意味谷間の時期だったと言えるのかも。

 (ただ、ぼくも地方出身者なので、70年代の東京なんてテレビでしか知らないんですが。でも一方で、ぼくら地方出身者は、当時肌身の感覚では知らなかったそんな東京都いう街を通してしか自身の過ごした時代の空気を量るすべがないという、ちょっと悲しい構造があるんですよね)

 で、とりあえずこれまで見た回の感想をとりとめなく並べていくと、まず成田三樹夫演じる津村という主人公が、それなりにカッコいい。

 頭がキレて一見クールに見えるわりに情にも厚いし、腕っぷしもそれなりに強い。ぼくとしてはかなり好きなのだが、でもこの後脇役ばかりになってしまうのは、やっぱりイマイチ人気が出なかったのだろうか。

 それと、見ていてどうしても目が行ってしまうのはやっぱり当時の東京の風俗。例えば、昔よくあった高いビルの上でゆっくり回転する展望レストランとか(そういえば最近見なくなったとハッと気づいてしまったのだが、つまりこの後少しずつ廃れて姿を消していったということなのだろうか)、おもちゃみたいな小さくて四角い車についている、すごくシンプルな数字のナンバープレート(ちなみに、主役の成田三樹夫の車は左ハンドルで、(たぶん)シボレーというのがおしゃれ)。

 それからまだ路面電車とかも写り込んだりしているし、当時の男は何かというとどこでも煙草を吸っていて、キャバレーとかでの夜の社交も盛ん。そして、重要な機密を無防備に一人で運ぶ会社の重役たちが、その夜の女なんかに簡単にひっかかって機密を奪われてしまったりする。

 そして、このドラマでは格闘シーンもけっこう多いのだが、その動きは今よりもまだずっと単純でギクシャクしていて、パンチ、キックが全然当たってないのが分かるし、初老の男性俳優陣はしばしばふつうに棒立ちだったりして、今からみるとかなり違和感あり。

 あと、個人情報にまだうるさくない時代につき、ホテルのボーイなんかも比較的簡単に宿泊客のことをしゃべってしまうし、当然まだケータイなんてないので基本的にコンサルタント事務所(江波杏子と男性ひとりの計3人という少人数)の仲間同士で連絡を取り合うにも、外にいる人間から事務所にかけるしかない(って、ぼく自身の人生でも以前はそうだったんだけど)。

 しかし、やっぱり何と言ってもドラマを見ていて一番熱中するのは、繰り返しっぽくなるけど、エッ、この道路ってどの道路? 今のここはどこ? あれは代々木の国立競技場? あの大きなビルは何? というようなロケ地推理。全然ドラマの筋とは関係ないけど、でもついつい熱中してしまいます。

 ぼくと同じような趣味を持つ方、都内のロケが多いこの作品は、かなりオススメかもしれませんよ。

 ・・・と、そんなこんなで今かなり楽しいこのドラマ、まだ残りが半分以上ある。早く見たい気もするし、見終わるのもちょっと惜しいかなと、今、そんな気分です。 

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聴いたCD HANS KENNELGROUP : Stella

2023年05月18日 | ジャズ(管:Sax,trumpet 等)

 

 Hans Kennel (tp,flh) Nat Su (as) Mark Soskin (p) Stephan Kurmann (b) Peter Schmidlin (ds)

 これは、例によって安かったから拾ったものの、ジャケットが今一つだからあまり期待もしていなかったんだけど、聴き始めると冒頭からカッコよくてシビれてしまった盤。

 リーダーはスイス出身の Hans Kennel というトランペット奏者で、といっても全然知らない人なのだが、ピアノの Mark Soskin のほうが、以前参加盤を何枚か聴いていて印象に残っていたのと、トランペット+アルト・サックス+マーク・ソスキンのピアノという編成にちょっと気を惹かれて聴いてみる気になったのだった。

 と、そんなわけで、さる日、通勤途中に何気に聴き始めたのだが、最初の3曲ほど終わったところでもすでに楽曲の雰囲気もヴァラエティーに富んでいるし、特にリーダーのペットと連れのアルトのコンビがすごく素晴らしい。

 で、さっそく「家聴き盤」に昇格させて、こうして深夜まったりと聴きながらネットでいろいろ調べてみたところ、この Hans Kennel は、スイスの地元の民俗楽器アルプホルン奏者でもあるという変わった経歴の持ち主で、しかもそちらの楽器を使ってもジャズをやったりもしているらしい。

 でも、このCDを聴く限り、そんなことやらなくてもトランペットだけで十分なんじゃないか・・・、なんて考えながら今度は楽曲を調べ始めてみて、今度は本当にびっくり。

 このCD、気づいてみれば冒頭マーク・ソスキンの作曲に始まってスタンダード数曲あり、トランペットのカッコよさを前面に出したような感じの Hans Kennel の自作曲数曲ありと、それだけでも多方面の曲が揃っているのだが、 なんと最初何となくECMっぽい印象もあった2曲めの耽美的な出だしの曲(「Moosruef」)が、元はアルプホルンの曲だと判明。

 で、さっそくYouTubeで原曲を探して見ると、本当に同じ曲を野外で演奏している動画を発見! 正直、アルプホルンって単なる昔の民俗楽器で、今ではもっぱら観光用でしかないんじゃないかと思っていたというか、こうしてちゃんと作曲家が作った曲が存在するなんて全く考えたこともなかったので、この予想とはあまりに違う展開に、正直ちょっと狼狽してしまった。

 そして、アルバム最後のドイツ語のタイトルのトラディショナル曲にいたっては、なんとヨーデルっぽい女声の合唱曲であることが判明。たしかに、そう思って聴くとフレーズもそれっぽいしヨーデルにしか聴こえなくなってくるのだけど、でも最初知らなかった時は、ラストに置くにしてはわりと地味な曲だなあ、なんてことしか頭に浮かんでいなかった。

 と、そんなことが分かってみると、このアルプホルンおよびスイスの伝統曲の世界も決して余技などではなく、この盤はそんな Hans Kennel の世界を全部つぎ込んだ勝負作みたいな感じにも思えてきた。 

 いや、でもその前に、この盤はそんな情報抜きにしても、普通にジャズとして聴いてみて、めちゃくちゃ良い演奏であると思うんだけど。特に、アルト・サックスの Nat Su という人の演奏(というかサポート)、トランペットとの絡みのところとかも、ついサックスのほうに耳が行ってしまいます。

Meltdown

Moosruef

Moos-Ruef

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聴いたCD ANDRE PREVIN:KING SIZE!

2023年05月12日 | ジャズ(キー:Piano,Organ 等)

 

 ANDRE PREVIN (p)  RED MITCHELL (b)  FRANKIE CAPP (ds)

 アンドレ・プレヴィンの「キング・サイズ」を、ついに聴く。

 いわゆる「未聴盤」という言葉を、単にまだ聴いたことがないという以上に、「存在を知っていて前々から聴きたいと思っているのに、まだ聴けていない」という意味にまで狭めると、この盤は我が歴史の中でもトップクラスの「未聴盤」だったかも。

 というのは、このアンドレ・プレヴィンの「LIKE PREVIN!」という盤が、もう何度か当ブログで書いているけど、昔苦手だったジャズを聴き始める中で、最も早く出会った思い出の1枚だったから。

 それで、当時プレヴィンの盤をあれこれ調べていくうちに、この目立つライオンのジャケットはイヤでも目に入ってきたのだが、プレヴィンの他の盤はちょこちょこ聴いているのに、なぜかこの盤だけはいつまでも縁がなかった。

 まあ、ぼくはどちらかというと、一度聴いてしまったプレーヤーよりは、知らないプレーヤーを見つけて聴くのが好きなので、この盤を意識的に探していたわけでもなかったんだけど・・・。

 で、この盤。

 一聴、やっぱり予想通りにすごくいい。このプレヴィンの嫌味のない軽さとセンスの良さ。これまで何回か聴いてみた限りでは、今のところはまだ「初恋」盤ともいうべき「LIKE PREVIN!」のほうがどうしても好みに思えてしまうのだが、しかしその点を差し引くと、こちらもかなり肉迫しているんじゃないだろうか。

 気づくと、これも「LIKE PREVIN!」と同じピアノ・トリオで、何と面子も全く同じ。というか、解説を読むと、こちらの「キング・サイズ」が好評だったので、その続編的に「LIKE PREVIN!」を作ったのだとか。そういうことだったのか。

 しかし、このプレヴィン、今回もCDを聴きながらいろいろ検索していると、どうしても否定的意見もけっこう目に入ってしまう。それは、彼のピアノに味がないみたいな、要するに「黒さ」がない、一見黒っぽい演奏をしてもそれは本物ではない、みたいな意見が多いような気がするのだが、しかしそれは彼にはどうしようもないことに違いないし、そもそもウェストコーストという意識で当時もやっていたのだろうし、その上でこのトリオもベースもドラムスも白人で揃えたということなのじゃないか、なんて思ってしまった。

 ただ、彼はその後、ジャズよりはクラシックに軸足を置くようになってしまったのだが、もしかするとこのような側面が影響したりしていたんじゃないか、なんてことも同時に思ってしまったんだけど。

 そしてもうひとつ、プレヴィンはメチャクチャ多才な人で、クラシックの指揮などもやるし映画音楽みたいなものもやるしで、ディスコグラフィーもすごく多く残っているのだが、ぼくがいまだにしっくり来ていないのは、この人は指揮者として他のピアニストが演奏するピアノ協奏曲の伴奏も、数多くこなしているという点。

 そこは、指揮者として割り切っていたのかとも思うけど、でもぼくなら絶対わだかまりなく出来ないと思うし、それなら自分が弾き振りしたらよかったんじゃないかとか、何だかすごく淡白な性格にも感じてしまう。

 そこらへんが、クラシックの録音でも、今一つ影が薄い印象につながっていたようにも思えてしまいます。

I'll Remember April

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聴いたCD ARCHIE SHEPP : Fire Music 

2023年05月08日 | ジャズ(フリー系)

 

 Archie Shepp (ts) Ted Curson (tp) Joseph Orange (tb) Marion Brown (as) Reggie Johnson (b) Joe Chambers (ds)

 超久しぶりにアーチー・シェップの『Fire Music』を聴く。

 実はこれ、個人的にかなり思い入れの強い盤で、それはなぜかというと、今は昔ずっとサックスという楽器がどうしても苦手で、そのせいでジャズという音楽そのものにもうまく入っていけなかった自分が、初めてこの盤で「ああ、サックスのブロウって、もしかしてこういうことだったのか!」と分かると同時に、「これってもしかしてカッコいいかも」と思わせてもらったからで、それでこの後、一気にジャズの開拓が捗るようになった、という思い出があるから。

 最初に見つけたのは中古屋のLP盤で、「ファイアー・ミュージック」というタイトルと、この赤いジャケがとにかくカッコよかった。まあ、要するに、これも「ジャケ買い」だったわけです(今売っている左のCDは、実はぼくが買ったLPとはビミョウにデザインが違うんですが・・・)。

 で、今こうして聴いてもすごくカッコいいのだけど、特に冒頭の曲なんかのベースの短いリフの、ちょっと上ずったような音が不穏なパワーを秘めているように感じて、今でもこの音を聴いただけでコーフンしてしまう。
 
 そして、当時は名前すら知らなかったマリオン・ブラウンが参加しているし(あまり目立ってないけど)、『イパネマの娘』なんて名曲もロクに聴いたことがなかったから、その後本家のボサノヴァで聴いても、「あれ、この曲何だか聴き覚えがあるなあ」みたいな感じで、自分のなかでしばらく結びつきもしなかったという思い出も。
  
 それでもって、その後ジャズの入り口として自分がモダンジャズよりもフリージャズ方面から聴き始めたのも、この盤の影響があったのかもしれません。
 
Hambone  
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聴いたCD シューベルト:弦楽五重奏曲ハ長調作品163(カガン、グートマンほか)

2023年05月03日 | クラシック

 


 オレグ・カガン(ヴァイオリン) ジェラール・コルステン(ヴァイオリン) ディームート・ポッペン(ヴィオラ) リチャード・レスター(チェロ)  ナターリャ・グートマン(チェロ)
 
 またまた室内楽の有名曲に開眼する。今度は、シューベルトの「弦楽五重奏曲ハ長調」。
 
 演奏は、オレグ・カガンを中心としたグループで、レーベルはかの「ライブ・クラシックス」。このレーベルは、個人的にはリヒテルの演奏で記憶に残っているんだけど、もともと早逝したカガンの演奏を後世に残そうと始まったレーベルなので、いわばこっちのほうが本家と言えるのかも。
 
 で、この「弦楽五重奏曲」は、シューベルトの最晩年の作品であり、その室内楽でも最高傑作とされているということで、自分もこれまで何度か聴いていたんだけど、今回までは開眼に至らず。
 
 たしか、シューベルトの死の数か月前に作曲されたということで、ピアノで言うと最後の3つのソナタと同時期(むしろそれよりも後)の作品なので、最初に聴いた時かなり気合を入れて聴いた記憶があるのだが、何だかピアノ・ソナタとは大分雰囲気が違うような気がして入っていけず、がっかりした記憶がある。
 
 それを、今回はレーベルへの信頼度(というような高級なものでなく、ゲンの良さといったほうがいいかも)でこの盤を聴いてみたんだけど、これが見事に耳に刺さってきた。
 
 そもそもこのレーベル、今でこそ慣れてきたけど、最初に見知った頃は何だかジャケットも暗い感じがしたし、カガン(昔はコーガンやオイストラフと区別がついていなかった)も厳つそうなおじさんで、ちょっと近寄りがたさを感じていたのだった。
 
 実際、今回の盤の演奏も、これまで聴いた他の盤に比べるとかなり重量級で力強い演奏だと思うのだが、しかしこの感じこそ、このレーベルのリヒテル盤で何枚も聴いてきたものでもあって、このリヒテルを中心としたグループの人たちは、何でこんなにパワーがあるのかと不思議になるほど、どの盤でもパワフルで説得力に満ちた演奏を繰り広げてくれる。
 
 (実はさっき、ちょっと比較してみようと思って過去に聴いた某カルテットの演奏も聴いてみたのだが、なんだかもう車でいうと排気量がまったく違うと言うか、すごく軽くてふわふわしたように感じて、もしも今回その盤を聴いていたら、まだ開眼していなかったのではないか、なんて思ってしまった。
 ただ、雰囲気的にいうと、これがシューベルトのこの曲にふさわしい演奏家と言うと、また別問題になると思うんだけど)。
 
 あと、余談だけど、チェロのナタリー・グートマンは、カガンの奥さんだったからこのシリーズにもよく登場しているのだが、昔名前を知ったのがピアニストのテオドール・グートマンを知ったのと同じ頃だったので、その時何となく夫婦なんじゃないかと思い込んでしまい、いまだにその呪縛が解けずに、彼女の名前を見ると一瞬ピアニストのほうの顔も思い出してしまいます。
 
Schubert String Quintet in C major, Op 163 - 1 Allegro ma no troppo
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