どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おうさまのこどもたち

2019年11月11日 | 絵本(日本)

    おうさまのこどもたち/三浦太郎/偕成社/2019年

 

 この11月の出版です。

 おうさまのこども10人、とてもかわいらしい。

 切り絵の色があざやかでカラフル。

 おうさまから、町へ出て、人々の暮らしを見て、どのように国をおさめればよいかかんがえてみなさいといわれ、こどもたちは、はじめて町へ出ます。

 こどもたちは、おうさまの期待にこたえられたでしょうか。こどもたちがめざしたものは?

 一番目のこどもは、花屋

 二番目のこどもはメカニック

 三番目のこどもは、アイドル歌手

 四番目のこどもは、サッカー選手

 ・・・・

 回転ずし、保育士、大工、農家などの仕事がこまかく描かれ、こどもの将来の夢をはぐぐんでくれるようです。

 さて、だれもおうさまのあとをひきつごうとしなかったでしょうか。


「鶴の恩返し」、「夕鶴」、絵本

2019年11月11日 | 昔話(日本)

 木下順二の「夕鶴」を思い出し、戯曲を読んでみました。佐渡のものが素材になっていますが、このほかにもすこしづつニュアンスがちがうものが各地にあります。

 山本安英が37年間にわたって取り組んできた「夕鶴」を1回も見る機会はなかったのが残念です。木下順二の作品は一時期かなりの教科書にのっていたが、いまはほとんどないようです。

 「鶴の恩返し」がのっている本をみてみました。

    夕鶴/日本の文学10/木下順二/金の星社/1989年20刷

    ツル女房/ふるさとの民話/県別ふるさとの民話/山形県/偕成社/1989年初版
    鶴の恩返し/日本の民話7/栃木の民話/未来社/1999年初版
    鶴の恩返し/日本の民話19/尾張の民話/未来社/1999年初版
    鶴の恩返し/日本の民話20/伊勢・志摩の民話/未来社/1999年初版
 
 鶴との出会いでは
 ・子どもにいじめられている
 ・羽をむしりとられている
 ・片足を折った
 ・あしに矢
といった違いがみられます。

 「つる女房」型のほうが多いようですが、再話では、おじいさん、おばあさんのこどもになるというのもみられます。 

 また、機を織っているところを覗く場面が1回だけと2回、3回という違いもありますが、一回目に覗くのはちょっと早すぎます。

 

・鶴の恩返し(語りつぎたい日本の昔話7/監修:小澤俊夫 再話:小澤昔ばなし大学再話研究会/小峰書店/2011年初版)

 隠岐版では、鶴が自分から鶴であることを話し、羽なし鳥の姿で山へ帰っていきます。前半部、命を助けられた鶴が、反物を織るところと、織っているところはけっしてのぞいてはいけないというのは他の話と同じです。

 ただ後半部が ほかの話とちがっています。 

 鶴が山へ帰るとき、反物を売ったお金で、世のなかのいらないものを全部買い集めるように男にいいます。
 男は、海辺の町に行って、漁師から漁のじゃまになるという藻を買い漁ります。ところが、藻がなくなって魚が少なくなり、困った漁師たちは、男から高いお金で藻を買い取ることに。

 海で生きている人々と、山で生きている人の違いが、昔話に反映しているようです。           
             

・鶴の女房(定本日本の民話10 埼玉、甲斐の民話/根津富夫編/未来社/1999年初版)

 埼玉所沢版です。

「鶴の女房」とありますが、助けられた鶴が結婚するわけではありません。
 鶴を助けたのはおじいさん。おじいさん、おばあさんのところに美しい若い女がやってきて、泊まらせてくれるお礼にと、機をおることに。決してのぞきみないでと念をおして娘は隣の部屋へ。
 機を織る音が面白いので、ついのぞいてしまうおじいさんというパターンは、ほかのものにはありません。

 機を織る娘が歌う場面が楽しい。
    ギイチクバッタン、スットントン く-だ(管)はどこじゃ
    ギイチクバッタン、スットントン はさみはどこじゃ
    ギイチクバッタン、スットントン

 歌うリズムで人を引き込みそうな所沢の話です。

 

・もとの平六(宮城のむかし話/「宮城のむかし話」刊行委員会編/日本標準/1978年)

 タイトルだけではわかりにくいのですが、「鶴女房」の話。

 ツルが娘の姿であらわれるのは、ほかのものと同様ですが、次の日には、立派な家に、黒塗りのお膳。

 反物を織るのは、生活が一変し、平六が働くなったからで、機を織るところをのぞき見すると、ツルがいなくなり、家もぶっこわれた家にかわってしまいます。

 

・ツル女房(群馬のむかし話/群馬昔ばない研究会・編/日本標準/1977年)

 「ツル女房」というタイトルですが、おじいさん、おばあさんのところに、助けられたツルが娘になってやってきます。(タイトルがややまぎらわしい)

                

 「つるのおんがえし」は、絵本もおおくあります。

つるにょうぼう  

       つるにょうぼう/矢川澄子・再話 赤羽末吉・画/福音館書店/1998年第22刷

 ほかの方が話しているのを聞いて印象に残ったのが、矢川澄子再話の絵本。

 冬のはじめにつばさに矢をうけて苦しんでいる鶴を助けた「よ平」。「機を織るところをけっしてのぞかないで」で言われたにもかかわらず、待ち遠しさのために、のぞいてしまうよ平のもとを、春ちかくに鶴が去っていくところまでが情感あふれるように描かれています。
 
 これまで昔話を本で読んでいたときには感じられなかった季節感がにじみでていました。雪深い家の上を鶴が飛んでいく藤城清治の切り絵を思い出しました。

 よ平はとなりの男にそそのかされて、お金のために、再々度布を織るようにお願いするが、「なんでそんなにお金がいります。ふたりで暮らしさえすれば十分ですのに」と女房(鶴)がいうシーンは木下順二の「夕鶴」と重なります。

 ところで、よ平のなりわりは何だったんでしょうか。「冬のこととて、かせぎもなく、たくわえはみるみる底をつく」とありましたが、やはりお百姓だったんでしょうか?。

 

     てのひらむかしばなし つるのおんがえし/長谷川摂子・文 ながさわまさこ・絵/岩波書店/2004年  

 おじいさんがたすけた鶴が娘となって、おじいさんおばあさんのところへやってきます。

 娘がかいがいしく働く様子だったり、高く売れた布に目がくらみ、欲を出す人間ではなく、あくまでもひとのよさそうなおじいさん、おばあさんが印象的です。
 おばあさんが、鶴が機を織るところをみて、「そうかいや。みるな というのに、まあ わるいことをしたなあ」と、謝るところに、人柄がにじみ出ています。

 ねずみが二匹かわいく描かれているのも絵本ならではです。

 

        

     つるのおんがえし/宮川ひろ・文 太田大八・絵/にっけん教育出版/2003年

 鶴が娘となって、おじいさんおばあさんのところへやってきます。

 娘が、このうちの子どもになり、あるとき、じいさまが 薪売りにでかけるとき糸をかってくるように頼みます。

 「あやにしき」という織物は、殿様がたくさんの小判で買い取ってくれました。二度目も殿様が高く買い取ってくれます。ところが三度目に、おじいさんが、やくそくだからと とめましたが「ちょっとだけ のぞいてみたい」と、おばあさんが なかをのぞくと・・・。