どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

かねつけどうこう・・佐賀

2023年10月28日 | 昔話(九州・沖縄)

      佐賀のむかし話/佐賀県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1977年

 

 むかし佐賀・武雄市のさびしい村に小さな寺があって、おしょうさんと「どうこう」という名前のこぞうさんがすんでいた。

 ある冬の寒い日、おしょうさんはいろりのそばでこっくりこっくりしはじめた。こぞうさんからとこについて休むようにいわれ、立とうとすると、玄関の戸の開く音ががした。はいってきたのは大男で、「あり金ばぜんぶだせ! 声を出したら、これだぞ!」とどなって、おしょうさんのむねんところに、刃物をつきつけた。どうこうさんはブルブル震えていたが、おしょうさんは、こんくらいのことでたまがるような人じゃなかった。

 おしょうさんは、にこにこわらって、「こんな山の中の寺に銭なんかあるもんかい。あんた、見たとこ若そうだから、親も兄弟もあるだろう。はよう心ばいれかえて、まじか人間にならんば。」と、やさしくいうてきかせたが、泥棒は、「やかましか、説教など聞きとうなか。ぐずぐずいうと、たたっ殺すぞ。」と、もっている刃物をふりあげた。

 それまでやさしい口調で話していたおしょうさんの顔が、みるみるうちにまっかになって、びっくりするような太い声で、「そがんわからいなら仏罰うけろ! どうこう、ぼやぼやすんな。はよう鐘つき堂の鐘ばついて、村じゅうの人ば、集めんなさい。泥棒ばひっつかまえて、ひどいめにあわしゅうで。」とさけぶと、鐘などつかわんでも、村じゅうに聞こえわたった。

 おしょうさんが、仁王さんのような目ん玉で、泥棒をにらみつけると、泥棒は、おかしなことにフクロウになってしまい、山のほうへにげていった。おしょうさんが、「あわれなやつたい。かわいそうに。」と、ぽかんと外をみていた。

 今では、静まりかえった山の中から、「かねつけどうこう。かねつけどうこう。」と鳴く、声がきこえるが、ありゃ、フクロウになった泥棒が、悲しんどっとたいね。

 

 フクロウを「かねつけどうこう」と呼ぶ地域が、ほかにあるのでしょうか。?