どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おやどのこてんぐ

2022年10月27日 | 絵本(日本)

 

    おやどのこてんぐ/朽木 祥・文 ささめやゆき・絵/福音館書店/月刊予約絵本「こどものとも」10月号/2022年

 

 おやどの主人とカラスににた小天狗の軽快なやりとりと、ささめやさんの絵がマッチしていつのまにか物語の世界へ。

 

 さびしい、さびしい山のうえに、ちいさなお宿があり、お宿の主人が たったひとりで切り盛りしていた。

 お宿の座敷の襖には いつの頃からか 小天狗が 描いてあったが、この小天狗が襖を抜け出し、宿の主人が集めた蜂蜜を、いつもいつもからっぽにしていた。これを見ていた主人が お坊さんに相談すると「みえなければ ないのとおなじ」というので、蜂蜜の壺を、鍵のかかる箱に入れると、蜂蜜は無事だったが、小天狗は毎晩毎晩うろつくようになり、お客がいようがいまいがお宿のなかを バタバタ ウロウロ。とうとう「こわいこわい」「きみがわるい」とうわさになって、客が一人も来なくなった。

 こまった主人が、また坊さんに相談すると「ふむ。かえるには へび。ねずみには ねこ。てんぐには さばじゃ」という。お宿の主人が さばを 焼きはじめたとたん、小天狗は襖に戻り、それっきり 出てこなかった。

 だが、さばはいつも手に入るわけではない。さばのない日、小天狗は 襖から飛び出し、昼だろうが夜だろうが うろつきまわり、障子を穴だらけにしたり、壁にいたずら書きしたりと、やりたい放題。

 またまたお坊さんに相談すると「絵の天狗には 絵のさばじゃ!」。そこで、大きなさばと いい墨を買ってかきはじめた主人。これが いくらかいても ふなや めだかや 金魚になってしまう。小天狗はそれをみて くちばしをならして ケタケタ。面白がる小天狗に 主人は うんざり。うっかり 墨を ぶちまけて どっぷり さばに かけてしまった。そのとき、主人は ひらめいて・・・。

 おやおや、小天狗は 雲の階段をポンポン はねて にげていった。こののち 山のお宿は「立派な さばの 魚拓もあれば、小天狗の おとしものまで あるんだそうな」と、すっかり評判になって、お客もまたくるようになったとさ。

 

 なんとも憎めない小天狗。次はどこの襖に潜り込んだやら。