どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

天からおりてきた河 インド・ガンジス神話

2022年10月19日 | 絵本(昔話・外国)

    天からおりてきた河/寮美千子・文 山田博之・画/長崎出版/2013年

 

 インド人が、骨を流し、同じ河で沐浴するというガンジス河の由来を伝える神話の絵本。

 地上にいたショゴルという王に、二人の妃がいましたが、子どもがありませんでした。王は妃たちとヒマラヤに登り神々に祈りました。望みはかなえられ、一人の妃は男の子(オンシューマン)を産み、もうひとりの妃が産みおとしたのはヒョウタンでした。

 王は驚き、ヒョウタンを捨てようとしますが、天の声が聞こえ、ヒョウタンの種を乳からつくった聖なる油をひたした壺に入れると、六万人の赤ん坊が生まれました。ヒョウタンからうまれた六万の王子は、みな兵士になりました。

 ある日、王は、「馬祭り」を行うことにしました。馬が丸一年歩いた土地が、すべて王の領土になり、最後に馬は、神々への生贄として捧げられるのです。馬は風のようにかけだし大地の果てまでくると、ふいに姿を消しました。目の前は、干上がってひびわれた海がひろがるばかり。馬を追いかけていた六万の王子は、打ちひしがれ、城へ戻りますが、王の怒りにあい、再び馬をさがすにでかけます。六万の王子は、鉄のような爪で、干上がった海の底を、六万ヨージャナの深さまで掘りましたが、馬はみつかりません。

 城にもどった王子たちは、王さまから「馬を見つけるまで、二度ともどってくるな」といわれ、地の果てまでいって また掘りはじめます。地獄までたどりつき、さらにそのさきまで掘りすすんだとき、うつくしい草原があらわれ、大きな木の下で、探していた馬を見つけました。木の下には瞑想にふけるクリシャナ神の化身、カビル牟尼がいました。

 六万の王子が口々に「この馬泥棒め!」「馬を返せ!」と、聖者に突進すると、瞑想をじゃまされたカビル牟尼が、壺に指をひたし、滴を、ぱっとまくと、雷鳴がとどろき稲妻がはしり、王子たちの体は、火をふいて燃え上がり、灰となって大地に崩れ落ちてしまいます。

 王の命令で、馬を取り戻し、六万の王子の供養をするため、カビル牟尼にあった もうひとりの王子オンシューマンは、ヒマラヤの娘である天を流れる河ガンガーの聖なる水でなくては供養できないといわれます。カビル牟尼はガンガーを招く方法にはには、答えませんでした。

 馬は王のところへもどり、盛大な祭りのあと生贄にされます。王は、それから三万年、王国をおさめますが、ガンガーを地上に呼ぶことはできませんでした。王となったオンシューマンは三万二千年の間修業を積みますが、やはりガンガーを地上に招けませんでした。

 オンシューマンの息子バギラットもヒマラヤで修業に打ち込み、食事は月一度、天の火に肌をやかせて一千年、とうとうブラフマー神があらわれ、「望みはかなえてやろう。しかし、ガンガーを受けとめることができるのは、ただ一人、青き喉を持つシヴァ神のみだ」といいます。

 バギラットが、さっそく、シヴァ神のいるカイラーサ山へいき、足の指一本で大地に立ち続けて祈ると、わずか一年の後、シヴァ神があらわれ、願いがかなえられることに。

 このあと、ガンガーが、天界より、地上、地下世界まで流れることになるのですが・・・・。

 

 ヒンドゥー教の神さまがあらわれる壮大な神話で、絵も神話の世界をたくみに表現しています。天地をささえる四頭の象、天界の神々や楽人、龍、夜叉たちに目を見張りました。