どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

まほうつかいのおばば・・カナダ・イヌイット

2020年12月11日 | 昔話(北アメリカ)

     世界むかし話20 カナダの昔話/高村博正・篠田知和基:編訳/ほるぷ出版/1991年

 

 ある日、姉と妹が村のはずれで遊んでいると、地面に象牙のサイコロが落ちていました。ふたりがサイコロをひろおうとすると、すこしさきに、もっときれいなボールが落ちています。そこまでいくと、またそのさきには、かわいい木の人形がおちていました。

 つぎつぎとおもちゃを拾いながらを村を離れていくと、石でできた家の前までやってきました。こんどもおもちゃは家のなかにありました。ふたりがおもわず家の中に入ると、中には年とったおばあさんがいて、あっというまに大きな石の戸で、出口をふさいでしまいました。となりの小さな部屋には,人間の骨がたくさんころがっています。ここはまほうつかいのおばばの家で、おばばは、おもちゃで子どもをおびきよせては、食べていたのです。

 しっかり者の姉が「うまくわたしたちをつかまえたものね。おばあさん。でも、ちゃんと戸をしめておかないと、にげちゃうわよ。」といったので、おばばは、戸をしっかりしめかどうか心配し、念のため、もっとしっかりしめなおすことにしました。

 おばばが重い大きな石で戸をしめなおしているうちに、妹は壁に穴をあけ、ふたりとも逃げ出しました。

 ふたりの話をきいた村人は、みんなでまほうつかいの家にでかけ「おばあさん、足の爪が伸びているね。きれいに切ってあげようか」と、声をかけ、その気になったおばばが、窓から足をつきだすと、村人は、おばばの足にロープをしっかり結びつけました。おばばが大暴れすると、村人全員でロープをひっぱり、おばばを石の家からひっぱりだします。

 おばばが、「わしもこれでさいごのようじゃから、いいことをおしえてあげよう。わしの歯は、みんながほしがっている火打ち石でできているし、胃袋は鉄砲玉を作る鉛でできている。膝には宝石の蝶番がついているのさ」というので、村人はおばばをころし、ばらばらにしてみました。するとおばばのいうとおりのものがでてきて、みんなは大よろこびでこの宝物を山わけしました。

 通常の昔話はここで終わりですが、このあと、ほかの話にみられないオチがあります。

 次の朝、宝物は、ただの骨と皮になっていたのです。

 

 おもちゃで、子どもを誘惑するというのは、はじめて。宝物が鉄砲玉というのもカナダ・イヌイット(エスキモー)らしい話です。