グラのきこり/山の上の火/クーランダー、レスロー・文 渡辺茂男・訳/岩波書店/1963年初版
同じエチオピアの「山の上の火」「アッデイ・ニハァスの英雄」とくらべるとあまり聞いたことのないものです。
木こりが枝にまたがって枝をきっていると(またがっているので、枝を切ったらそこから落ちてしまうのは当然ですが・・)村の坊さんが通りかかります。
坊さんはなぜ根もとから切らないか聞くと、木こりは「たき木がほしけりゃ木イきるにきまってるでねえか」ととりあいません。坊さんは落っこちて死んでしまうと警告します。
案の定木こりは地面に落っこちてしまいます。
坊さんのいったとおりになったので、木こりは死んじまったにちげえねえと、起き上がろうともせずじっと横になったまま。
木こりの友達が通りかかって、のびている木こりのからだをゆすったり、話しかけたり、頭をこすったりしますが、木こりは死んだふり。
友達はグラの村までかついでいくことにしますが、分かれ道にくるとどちらの道をいったらいいかわからず、おのおの自分の考えを主張します。
すると木こりがあっちの道がいいといいます。
友達はやがて村につくと、坊さんが何事だときくので、わけを話します。
「木こりが死んでいたのをみつけた」「枝が落っこちて木こりをころしたんです」と、友だちがいうと、死んだはずの木こりは「おらが枝の上にすわってたら、枝がおれたんでがす」といってまた目を閉じます。
犬がやってきてきこりの顔をぺろぺろなめるので、木こりは「犬をどけろ」「死んだ者をうやまうことをしらんのけ」と大声で叫びます。
そこへおかみさんがやってきて「すっかりしんじまってはいないかもしれないよ」といいだします。
どことなくとぼけていて、すれ違いの滑稽さを楽しめる話です。
訳も味があり、聞いてみたい話です。