これまでに、これだけのアップに耐えた人はいない
スター・締三郎(しめさぶろう)翁84歳、止まらない熱唱!多くの人は首を垂れて、聞き入るのみ。
締三郎翁は本当に偉い。感服、この一言。この時代遅れの山小屋に今冬もまた、男女11名の山の仲間と来てくれた。そして、ひたすら歌う。この譜面台にも注目物してほしいが、元よりこんな物がここにあるわけがない。翁が背負ってきたのだ。それも年代物の鉄製で、かなり重いシロモノだという。あの夜の、参会した人はもちろんだが、雪原を渡る翁の澄んだ「蘇州夜曲」の歌声に、クマもタヌキも穴熊も聞き惚れ、涙し、しばし厳寒の冬ごもりのつらさを、彼ら彼女らは忘れたという。
特筆しておかなければならなのは到着の翌日、登山口―入笠山頂―ヒルデエラ(大阿原)-テイ沢の雪の道を翁もしっかりと踏み、歩き、数百人を抱えるNPO法人「みろく山の会」会員としての古参の面目を、堂々と果たしたということだ。これは、立派な冬の記録と言いたい。今回は理事長も参加してくれたから、会の記録にしっかり残して欲しい。
一夜明けたら雪の入笠は遠く、あそこに2泊3日過ごした自分が、まるで他人のように思える。このごろ山はいつもそうだが、得たものよりも、正体のはっきりとしない失ったもののほうが気になる。それは山で過ごした時間かも知れないし、費やした労力かも知れない。また、ひたすら歩くその間の、擦過する煙のような想念も知れない。山を去る時には、少し軽くなった背中の荷のように自分の中からも、取り返せない何かが減じたり、消滅したような気がする。
明日から、山行記ふうにもう少し、この時季の入笠牧場とその周辺の様子をお伝えしたい。
光の明度が上がる、3月の入笠牧場が待っています。
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