アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

在来種の野菜・折り菜

2011-04-03 14:27:51 | 稲武のモノ・コト・ヒト・バ
  こめこなクラブのメンバーの一人、Sさんは、在来種の野菜の種に興味を持ち、種を集めたり話を聞きに行ったりしています。彼女から、「稲武で昔からの地の野菜の種を採っては育てている方はいないだろうか」と聞かれ、思い出したのが筒井重之さん。彼の米を食べて田んぼ作業もちょっとだけ応援する、というのがクラブの趣旨。当の筒井さんが、まさに在来種の野菜を育てていることを思い出したのです!

  育てている野菜は、折り菜。一般にはカキ菜と呼ばれるもので、菜の花系の野菜だそう。つぼみ菜とか菜花とかいうのも同じ仲間のようです。

  さっそく、Sさんと一緒に筒井さんのハウスに伺いました。彼が住んでいる集落は、長野県との県境の高地にあり、他の集落とはかなりはなれています。たぶんここも限界集落のひとつでしょう。

  広いハウスの中で彼が今の時期に育てているのは、春菊と折り菜。彼の右側が折り菜、左側が春菊です。話を聞きに行ったときは、春菊の出荷で忙しい最中でした。

筒井さんが折り菜を育て始めたのは20年以上前のこと。隣の方がずっと自家採取してきた種をもらったのがきっかけです。おいしくて寒さに強いので、自家採取を繰り返して作り続けてきました。

  昨年、筒井さんは、長野県飯田市で折り菜そっくりの野菜の種を見つけたので、いままでの折り菜のそばに蒔いてみました。すると、その菜っ葉(名前は何とかいてあったか忘れたそうです)は、今までの折り菜より数ヶ月も早い初冬のうちに伸び、食べられるようになりました。茎もやけにひょろひょろ伸びます。在来の折り菜が食べられるようになるのは2月の半ばころから。茎が太く、ずんぐりむっくりしています。葉の色は在来種のほうが濃いようです。写真上が折り菜そっくりの菜っ葉。下はずっと育てている折り菜。食べ比べると、在来種のほうがあくが少なく味が濃い気がします。どちらももとが一緒の折り菜だとしたら、伸びの違いやアクの強弱、色の違いはすべて、在来種が長い時間をかけてこの土地で生き延びられるよう変化してきた賜物なのでしょう。

  筒井さんは、一般の農薬はかけませんが、EM菌の入った液など、植物にダメージを与えない液の葉面散布はしています。昨年、どちらの菜っ葉にもカビ菌が発生し病気になりかけていたので、こころみにノニジュースの希釈液をかけてみました。ノニジュースは、ちかごろ脚光を浴び始めている天然果実の健康飲料。人に勧められてのみはじめたそうですが、野菜にもいいと聞き、半信半疑かけてみたところ、みごとにカビは消えました。今も、根元にわずかにカビの痕跡が見えています。

  筒井さんが米や野菜に農薬をかけるのをやめたのは、ある人に、「あんた、うちの野菜には農薬をかけているのか?」と聞かれたのがきっかけだそうです。筒井さんは彼の問いに、「いや、自分たちで食べるものにはできるだけかけないで育てている」と答えると、その人は即座に、「そんな考え方はだめだ! 同じように口に入れるものなのに、お客さんと自分たちとを分けて考えてはだめだ!」といいました。反省した筒井さんは、それから農薬をやめ、肥料も変えたということです。

  筒井さんの家の、冬場のメインの作物は春菊。折り菜は出荷時期が春菊と重なり、しかも短いので、なかなか手が回らないのだとか。それでも折り菜を育て続ける理由は、自家用の青菜が春菊だけでは物足りないから。

  筒井さんご夫婦と話していて気がついたのですが、彼らの生活に対する考え方の基本は「できるだけ自分たちで作る」こと。彼らは米はもちろん、野菜も漬物も自家製のものを食べています。。年中、なにがしかの野菜が育つようにいろんな工夫をしているのです。「白菜は全部は取らないでいくつか畑に残しておくの。そうすると、端境期のときにちょうど花が咲いて、菜の花のような花が咲く。伸びた白菜の葉っぱと茎と花は、それは甘くておいしい」と奥さん。

  筒井さんのお宅には大きな保冷室があって、自家製漬物もたくさんしまってあります。その中から時期に応じて、どんぐり横丁やイベントに「おせきちゃんの漬物」の名前で出品しています。せきさんは、奥さんの名前です。米も野菜も漬物も、自分たちが食べているものを多めに作って出しているという感覚なのです。日々の生活とお金を得る仕事が直接つながっている暮らし方なのだなあと、改めて感心しました。昔の農家の人たちにとっては、あたりまえのことだったのでしょうが。

  ところで、Sさんのような活動は、いま世界中で広がっています。在来の植物の種類が年々減ってきているのに危機感を覚えた人たちが、「シードセーバー」となって在来の種の保存に尽力しているのです(関連記事はコチラ→)。私もこの春、筒井さんが採取した折り菜の種をわけてもらって、ぜひ蒔いてみたいと思っています。

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